「ふぅ……これでもう、バカな真似はしないでしょう」
シャルロッテのお仕置きが終わり、男爵令嬢達は脱兎のごとく逃げ出した。
どうも、フィアをいじめていたのは、シャルロッテに対する嫌がらせも兼ねていたらしい。
二つの家は仲が悪く、その子供も相手にいい感情を持っていない。
ちょうどいい機会だから従者をいじめてやろう……と、そんな子供じみたことを考えたことが、お仕置きの間の懺悔で判明した。
学院内で勝手に決闘をしてしまったものの……
まあ、ケンカの範囲で収まるだろう。
それほど大きな問題にはならないはず。
なにはともあれ、これで問題解決だ。
調査などでもエリゼやアリーシャに色々と助けてもらったから、後でお礼をしないとな。
「……お嬢様……」
フィアが涙目になりつつ、シャルロッテのところへ向かう。
そんな彼女を、シャルロッテは苦笑で迎える。
「まったく……あなた、自分がどのような状況に陥っていたのか、わかります?」
「えっと……」
「性悪のクラスメイト達に、いいように利用されていたのですわ。ダメダメですわね」
「……申しわけありません。お嬢様のメイド、失格ですね……」
「今後は、ちゃんとわたくしの傍にいること! 変な話を真に受けて、わたくしから離れたりしないこと!」
「そ、それは……わたし、お嬢様と一緒にいても……?」
「当たり前でしょう! あなたはわたくしの従者で、そして、妹のようなものなのだから!」
「っ……!!!」
いつものようにシャルロッテはドヤ顔で言う。
ただ、この場合は正解だ。
「うぅ、お嬢様!!!」
「ひゃ!?」
いきなり抱きつかれて、シャルロッテが変な声をあげる。
それに構うことなく、フィアは、親愛を示すように抱きしめる。
「う、嬉しいです……わたし、そこまで思われていたなんて……」
「……バカね。何度も言ってきたでしょう? わたくしは、あなたのことを一番大事に思っているわ。そして、従者としても、妹分としても、友達としても信頼していますの」
「うぅ……あううう、お嬢様ぁ……!」
「あ、こら!? 泣きながら抱きつかないの! 服が……あーもうっ」
苦笑するシャルロッテ。
感動して泣くフィア。
なんだか場が混沌としてきたものの……
「まあ、これはこれでいいのかもな」
俺は小さく笑い、この場を後にする。
しばらく、二人だけにした方がいいだろう。
――――――――――
「昼はありがとう。お礼を言いますわ」
「あ、ありがとうございます!」
放課後。
シャルロッテとフィアに呼び出されて、それぞれお礼を言われた。
俺だけじゃなくて、協力者でもあるエリゼとアリーシャもいる。
「お二人も色々と手伝ってくれたとか。感謝いたしますわ」
「いえ、私は大したことしていませんから」
「違うクラスだけど、こういうことは見過ごせないもの」
「ありがとうございます」
シャルロッテは、もう一度お礼を口にした。
それだけ大事なことなのだろう。
フィアは満足そうな顔でシャルロッテの斜め後ろに立つ。
彼女の近くにいることで安心できるらしく、とてもいい顔だ。
この二人の顔を見ていると、本当に仲が良いのだな、と感じる。
「お兄ちゃん、悪いクラスメイトさんはどうなったんですか?」
「水を差すようなことは言いたくないのだけど、仕返しを企む可能性もあると思うわ」
エリゼとアリーシャは、問題が完全に解決したか疑問を抱いている様子だ。
ただ、それについては大丈夫。
「問題ないですわ。今回の件、正式に抗議をする予定なので、もうバカなことはできないはずですわ」
名門貴族のブリューナク家が動けば、男爵家なんて簡単に潰されてしまう。
そのことを考えれば、あの男爵令嬢達は二度とバカな真似はしないだろう。
「何度も繰り返しになるけど……改めて、ありがとう」
シャルロッテは柔らかく、優しく笑う。
こんな顔もできるんだな。
彼女と接する度に印象が変わっていく。
それはフィアも同じで……
「わたしも、ありがとうございました。その……わたしのために色々としてくれて、本当に嬉しかったです」
花のような笑顔。
それを見ていると、心が温かくなるようだ。
こんな笑顔ができる子だったんだな。
気弱でおどおどしているイメージだったから、それがガラリと変わる。
「お兄ちゃん、よかったですね。お友達をちゃんと助けることができて」
「友達? それは……」
「まあ、そうですわね。あなたは、どうも他の男と違うみたいですし……特別にわたくしの友達にしてさしあげますわ!」
「あ、あの……わたしなんて役に立つことはないですけど、それでも、その、友達になってくれると嬉しいです……」
主従で性格が違いすぎる。
ただ、それはそれで仲よくやっていくためのコツなのだろうか?
「もちろん。これからよろしく、シャルロッテ。レーナルトさん」
「えっと……わたしのことは、どうか名前で」
「いいの?」
「はい」
「じゃあ……フィア」
「はい!」
「俺のことも、レンでいいよ」
「わ、わかりました……レン君」
「あ、わたくしもレンと呼ばせてもらいますわ」
こうして、俺はシャルロッテとフィアと仲良くなることができたのだけど……
「「むぅ」」
なぜか、エリゼとアリーシャが少し不機嫌になってしまう。
なぜだ……?
シャルロッテのお仕置きが終わり、男爵令嬢達は脱兎のごとく逃げ出した。
どうも、フィアをいじめていたのは、シャルロッテに対する嫌がらせも兼ねていたらしい。
二つの家は仲が悪く、その子供も相手にいい感情を持っていない。
ちょうどいい機会だから従者をいじめてやろう……と、そんな子供じみたことを考えたことが、お仕置きの間の懺悔で判明した。
学院内で勝手に決闘をしてしまったものの……
まあ、ケンカの範囲で収まるだろう。
それほど大きな問題にはならないはず。
なにはともあれ、これで問題解決だ。
調査などでもエリゼやアリーシャに色々と助けてもらったから、後でお礼をしないとな。
「……お嬢様……」
フィアが涙目になりつつ、シャルロッテのところへ向かう。
そんな彼女を、シャルロッテは苦笑で迎える。
「まったく……あなた、自分がどのような状況に陥っていたのか、わかります?」
「えっと……」
「性悪のクラスメイト達に、いいように利用されていたのですわ。ダメダメですわね」
「……申しわけありません。お嬢様のメイド、失格ですね……」
「今後は、ちゃんとわたくしの傍にいること! 変な話を真に受けて、わたくしから離れたりしないこと!」
「そ、それは……わたし、お嬢様と一緒にいても……?」
「当たり前でしょう! あなたはわたくしの従者で、そして、妹のようなものなのだから!」
「っ……!!!」
いつものようにシャルロッテはドヤ顔で言う。
ただ、この場合は正解だ。
「うぅ、お嬢様!!!」
「ひゃ!?」
いきなり抱きつかれて、シャルロッテが変な声をあげる。
それに構うことなく、フィアは、親愛を示すように抱きしめる。
「う、嬉しいです……わたし、そこまで思われていたなんて……」
「……バカね。何度も言ってきたでしょう? わたくしは、あなたのことを一番大事に思っているわ。そして、従者としても、妹分としても、友達としても信頼していますの」
「うぅ……あううう、お嬢様ぁ……!」
「あ、こら!? 泣きながら抱きつかないの! 服が……あーもうっ」
苦笑するシャルロッテ。
感動して泣くフィア。
なんだか場が混沌としてきたものの……
「まあ、これはこれでいいのかもな」
俺は小さく笑い、この場を後にする。
しばらく、二人だけにした方がいいだろう。
――――――――――
「昼はありがとう。お礼を言いますわ」
「あ、ありがとうございます!」
放課後。
シャルロッテとフィアに呼び出されて、それぞれお礼を言われた。
俺だけじゃなくて、協力者でもあるエリゼとアリーシャもいる。
「お二人も色々と手伝ってくれたとか。感謝いたしますわ」
「いえ、私は大したことしていませんから」
「違うクラスだけど、こういうことは見過ごせないもの」
「ありがとうございます」
シャルロッテは、もう一度お礼を口にした。
それだけ大事なことなのだろう。
フィアは満足そうな顔でシャルロッテの斜め後ろに立つ。
彼女の近くにいることで安心できるらしく、とてもいい顔だ。
この二人の顔を見ていると、本当に仲が良いのだな、と感じる。
「お兄ちゃん、悪いクラスメイトさんはどうなったんですか?」
「水を差すようなことは言いたくないのだけど、仕返しを企む可能性もあると思うわ」
エリゼとアリーシャは、問題が完全に解決したか疑問を抱いている様子だ。
ただ、それについては大丈夫。
「問題ないですわ。今回の件、正式に抗議をする予定なので、もうバカなことはできないはずですわ」
名門貴族のブリューナク家が動けば、男爵家なんて簡単に潰されてしまう。
そのことを考えれば、あの男爵令嬢達は二度とバカな真似はしないだろう。
「何度も繰り返しになるけど……改めて、ありがとう」
シャルロッテは柔らかく、優しく笑う。
こんな顔もできるんだな。
彼女と接する度に印象が変わっていく。
それはフィアも同じで……
「わたしも、ありがとうございました。その……わたしのために色々としてくれて、本当に嬉しかったです」
花のような笑顔。
それを見ていると、心が温かくなるようだ。
こんな笑顔ができる子だったんだな。
気弱でおどおどしているイメージだったから、それがガラリと変わる。
「お兄ちゃん、よかったですね。お友達をちゃんと助けることができて」
「友達? それは……」
「まあ、そうですわね。あなたは、どうも他の男と違うみたいですし……特別にわたくしの友達にしてさしあげますわ!」
「あ、あの……わたしなんて役に立つことはないですけど、それでも、その、友達になってくれると嬉しいです……」
主従で性格が違いすぎる。
ただ、それはそれで仲よくやっていくためのコツなのだろうか?
「もちろん。これからよろしく、シャルロッテ。レーナルトさん」
「えっと……わたしのことは、どうか名前で」
「いいの?」
「はい」
「じゃあ……フィア」
「はい!」
「俺のことも、レンでいいよ」
「わ、わかりました……レン君」
「あ、わたくしもレンと呼ばせてもらいますわ」
こうして、俺はシャルロッテとフィアと仲良くなることができたのだけど……
「「むぅ」」
なぜか、エリゼとアリーシャが少し不機嫌になってしまう。
なぜだ……?