「……そういえば」
ふと、思い出して口を開く。
「なにかしら? まだ、なにか話が?」
「シャルロッテは、レーナルトさんと仲がいいのか?」
「ええ、もちろん」
シャルロッテは誇らしげに言う。
「彼女は、代々、ブリューナク家に仕えてくれているの。シャルロッテは私専属の侍女で……でも、それだけではないわ」
「と、言うと?」
「フィアとは、生まれた時から一緒なの。ずっとずっと一緒で……だから、姉妹のようなものなのですわ。そうですわね……妹、という言葉が一番しっくりくるかしら?」
彼女の言葉から嘘を感じることはない。
心の底からフィアのことを想っているのだろう。
「でも……そうだとしたら、おかしいな」
「どういう意味ですの?」
「この前、レーナルトさんがパシられていたんだよ」
「……なんですって?」
「気になって話を聞いてみたら、シャルロッテに頼まれた、って言っていたんだけど」
「はぁ!?」
ものすごい大きな声。
耳が痛い。
「ちょっと! どういうことですの、それ!?」
「待て待て。落ち着いて、俺に掴みかかるな」
「どういうことですの!!!?」
「あーもう……」
ここまで慌てている、っていうことは初耳なのだろう。
そして、それだけフィアのことを大事に思っているのだろう。
こんな時だけど、なんとなく嬉しく思う。
「詳細はわからないからな? 確定、っていうわけじゃないからな?」
そう前置きをしつつ、学食の一件を説明した。
話をするにつれて、シャルロッテの表情が冷たいものに変化していく。
しかし、その内に秘めた熱はこれ以上ないほどに上昇。
まるで、噴火直前の火山みたいだ。
「そう……最近、あの子の様子がちょっと暗いと思っていたのだけど、まさかそんなことになっているなんて……」
「シャルロッテはどう思う?」
「フィアは、間違いなく面倒な連中に目をつけられたわね。ただ……それはそれで、わたくしの責任なのかもしれません」
「どういう意味だ?」
「そのままの意味ですわ。おそらく犯人は、わたくしの家柄を利用しようというもの。父さまにすり寄っていた連中と同じように、わたくしを利用して、フィアをいじめているのでしょうね」
自分に責任があると、シャルロッテは落ち込んでしまう。
でも、そこまで責任を感じなくてもいいはずだ。
勝手に暴走するバカの出現を予想するなんて、なかなか難しい。
それなのに気にしてしまうなんて……うん。
シャルロッテは、思っていた以上に良いヤツなのかもしれない。
「っ……!」
シャルロッテは怒りの形相でどこかへ行こうとする。
その肩を掴んで止めた。
「どうするつもりだ?」
「決まっていますわ。わたくしの大事な妹に手を出したこと、一生後悔させてやるの」
「それについては賛成だけど」
「……賛成なのですか?」
「いじめとか、気分の良いものじゃない」
俺の目的は魔王を倒すこと。
そうして、強さを証明すること。
だから、他人がどうなろうとどうでもいいのだけど……
フィアとはそれなりに話をした仲だ。
それなのに、目の前でいじめられたりしたら寝覚めが悪い。
「二度とこんなことが起きないように、徹底的にやらないとな。それくらいしないと、いじめてるヤツは反省しないものだ」
「……あなた、変わっていますわね」
シャルロッテは、くすりと小さく笑うのだった。
――――――――――
いじめている連中を突き止めて、制裁を加えることは簡単だ。
ただ、逆恨みして、さらにフィアに危害を加えるような事態は避けたい。
やるなら徹底的に……だ。
「と、いうわけで……ちょっと協力してもらいたい」
寮の部屋。
エリゼとアリーシャと……そして、アラム姉さんに協力を要請した。
なぜ、ここにアラム姉さんがいるのか?
答えは簡単。
アラム姉さんもこの部屋を使うことになったからだ。
俺とエリゼと一緒にいたいらしく、ちょっと強引に部屋を変えたらしい。
それから毎日、俺とエリゼを甘やかす日々。
マーテリアの呪縛から逃れたとはいえ、人間、変われば変わるものだ。
「いじめなんてダメです、許せません!」
「そうね。二度とそんなことができないように、後悔させてやらないとダメね」
俺とアラム姉さんって、なんだかんだ姉弟なんだな。
思考がものすごくよく似ている。
「でも、どうするつもり? 聞いた話によると、相手も貴族らしいじゃない。下手に手を出したらまずいわよ?」
「アリーシャの言う通りだ。だから、協力してほしい」
フィアをいじめている連中は貴族だった。
だから、やるならしっかりとした準備が必要だ。
適当な準備で手を出したら痛い目に遭う。
「まずは、犯人の特定。これは簡単にできると思う。証言を集めればいい。エリゼ、頼めるか?」
「はい!」
「それから、いじめをしているという確かな証拠を集めること。それを固めることで、その後に行う制裁に正当性を示す。アラム姉さん、お願いできますか?」
「もちろんよ。可愛いレンの友達に手を出すなんて……ふ、ふふふ。怒りで笑ってしまいそうになるわ」
怖いから、その表情やめてください。
マジで。
アラム姉さんと仲良くなれたことは嬉しいのだけど……
今までの反動なのか、ものすごく甘やかしてくれるようになったんだよな。
「で……アリーシャは、念のため、レーナルトさんと一緒にいて彼女をさりげなく守ってくれないか? 準備をするまでの間、犯人達がエスカレートして、今まで以上に酷いことをしないとも限らないから」
「了解」
これで準備の準備は完了した。
なるべく早く動いて……
そして、俺とシャルロッテで問題を解決すればいい。
やってやろうじゃないか。
ふと、思い出して口を開く。
「なにかしら? まだ、なにか話が?」
「シャルロッテは、レーナルトさんと仲がいいのか?」
「ええ、もちろん」
シャルロッテは誇らしげに言う。
「彼女は、代々、ブリューナク家に仕えてくれているの。シャルロッテは私専属の侍女で……でも、それだけではないわ」
「と、言うと?」
「フィアとは、生まれた時から一緒なの。ずっとずっと一緒で……だから、姉妹のようなものなのですわ。そうですわね……妹、という言葉が一番しっくりくるかしら?」
彼女の言葉から嘘を感じることはない。
心の底からフィアのことを想っているのだろう。
「でも……そうだとしたら、おかしいな」
「どういう意味ですの?」
「この前、レーナルトさんがパシられていたんだよ」
「……なんですって?」
「気になって話を聞いてみたら、シャルロッテに頼まれた、って言っていたんだけど」
「はぁ!?」
ものすごい大きな声。
耳が痛い。
「ちょっと! どういうことですの、それ!?」
「待て待て。落ち着いて、俺に掴みかかるな」
「どういうことですの!!!?」
「あーもう……」
ここまで慌てている、っていうことは初耳なのだろう。
そして、それだけフィアのことを大事に思っているのだろう。
こんな時だけど、なんとなく嬉しく思う。
「詳細はわからないからな? 確定、っていうわけじゃないからな?」
そう前置きをしつつ、学食の一件を説明した。
話をするにつれて、シャルロッテの表情が冷たいものに変化していく。
しかし、その内に秘めた熱はこれ以上ないほどに上昇。
まるで、噴火直前の火山みたいだ。
「そう……最近、あの子の様子がちょっと暗いと思っていたのだけど、まさかそんなことになっているなんて……」
「シャルロッテはどう思う?」
「フィアは、間違いなく面倒な連中に目をつけられたわね。ただ……それはそれで、わたくしの責任なのかもしれません」
「どういう意味だ?」
「そのままの意味ですわ。おそらく犯人は、わたくしの家柄を利用しようというもの。父さまにすり寄っていた連中と同じように、わたくしを利用して、フィアをいじめているのでしょうね」
自分に責任があると、シャルロッテは落ち込んでしまう。
でも、そこまで責任を感じなくてもいいはずだ。
勝手に暴走するバカの出現を予想するなんて、なかなか難しい。
それなのに気にしてしまうなんて……うん。
シャルロッテは、思っていた以上に良いヤツなのかもしれない。
「っ……!」
シャルロッテは怒りの形相でどこかへ行こうとする。
その肩を掴んで止めた。
「どうするつもりだ?」
「決まっていますわ。わたくしの大事な妹に手を出したこと、一生後悔させてやるの」
「それについては賛成だけど」
「……賛成なのですか?」
「いじめとか、気分の良いものじゃない」
俺の目的は魔王を倒すこと。
そうして、強さを証明すること。
だから、他人がどうなろうとどうでもいいのだけど……
フィアとはそれなりに話をした仲だ。
それなのに、目の前でいじめられたりしたら寝覚めが悪い。
「二度とこんなことが起きないように、徹底的にやらないとな。それくらいしないと、いじめてるヤツは反省しないものだ」
「……あなた、変わっていますわね」
シャルロッテは、くすりと小さく笑うのだった。
――――――――――
いじめている連中を突き止めて、制裁を加えることは簡単だ。
ただ、逆恨みして、さらにフィアに危害を加えるような事態は避けたい。
やるなら徹底的に……だ。
「と、いうわけで……ちょっと協力してもらいたい」
寮の部屋。
エリゼとアリーシャと……そして、アラム姉さんに協力を要請した。
なぜ、ここにアラム姉さんがいるのか?
答えは簡単。
アラム姉さんもこの部屋を使うことになったからだ。
俺とエリゼと一緒にいたいらしく、ちょっと強引に部屋を変えたらしい。
それから毎日、俺とエリゼを甘やかす日々。
マーテリアの呪縛から逃れたとはいえ、人間、変われば変わるものだ。
「いじめなんてダメです、許せません!」
「そうね。二度とそんなことができないように、後悔させてやらないとダメね」
俺とアラム姉さんって、なんだかんだ姉弟なんだな。
思考がものすごくよく似ている。
「でも、どうするつもり? 聞いた話によると、相手も貴族らしいじゃない。下手に手を出したらまずいわよ?」
「アリーシャの言う通りだ。だから、協力してほしい」
フィアをいじめている連中は貴族だった。
だから、やるならしっかりとした準備が必要だ。
適当な準備で手を出したら痛い目に遭う。
「まずは、犯人の特定。これは簡単にできると思う。証言を集めればいい。エリゼ、頼めるか?」
「はい!」
「それから、いじめをしているという確かな証拠を集めること。それを固めることで、その後に行う制裁に正当性を示す。アラム姉さん、お願いできますか?」
「もちろんよ。可愛いレンの友達に手を出すなんて……ふ、ふふふ。怒りで笑ってしまいそうになるわ」
怖いから、その表情やめてください。
マジで。
アラム姉さんと仲良くなれたことは嬉しいのだけど……
今までの反動なのか、ものすごく甘やかしてくれるようになったんだよな。
「で……アリーシャは、念のため、レーナルトさんと一緒にいて彼女をさりげなく守ってくれないか? 準備をするまでの間、犯人達がエスカレートして、今まで以上に酷いことをしないとも限らないから」
「了解」
これで準備の準備は完了した。
なるべく早く動いて……
そして、俺とシャルロッテで問題を解決すればいい。
やってやろうじゃないか。