放課後。
今日は図書室で魔法書を読み漁ろうか?
それとも、自主的に使える訓練場で魔法の練習をしようか?
「あ、あの……」
あれこれ考えていると、フィアがやってきた。
「えっと……」
「……」
「その……」
「……」
「あ、あの……」
「……」
「……はぅ」
なんだろう? と思っていたら、勝手に涙目になってしまう。
いや、待ってくれ。
俺はなにもしていないぞ?
本当だ。
というか……
前々から感じていたけど、この子、男が苦手なのかな?
あるいは、コミュニケーションが苦手とか。
だから、こうして言葉に詰まってしまうのかもしれない。
「どうしたんだ?」
こちらから話しかけてみることにした。
「あっ……えっと、はい。お嬢様がストライン君のことを呼んでいて、な、中庭に来るように……と」
「お嬢様?」
「えと、えと……シャルロッテ様のことです」
あの小さな女王様は、クラスメイトに様付けを強制しているのか?
「あ、えとっ……シャルロッテ様はシャルロッテ様で、その、変な感じではなくて……!」
あたふたとフィアが言う。
強制されているわけじゃないよ、と言いたいのだろう。
「レーナルトさんは、ブリューナクさんと仲が良いの? 友達?」
「そ、そんな! シャルロッテ様と友達なんて、お、恐れ多いです! はうあう」
「そうなのか?」
「はい!」
ものすごい勢いで肯定されてしまった。
うーん……思っていた以上に複雑な関係なのかな?
そんな俺の疑問を察したらしく、たどたどしいながらも、フィアが説明をする。
「えっと、その……わ、わたしの家は、シャルロッテ様の家に仕えていて、で……代々、専属の侍女となっていまして……」
「へえ、そういう関係なのか。でも、主があれだと苦労するだろ?」
「い、いえいえ! そんなことは決して!」
ぶんぶんぶんぶんぶん! と手を振り、フィアは俺の言葉を否定した。
それだけ強く否定したら、逆に、苦労しています、って言いたいように見えてしまう。
まあ、仲は悪くないのだろう。
むしろ良い方なのだろう。
フィアのような子がここまで主張しているんだから、その言葉に嘘はないと思う。
「あんな風に見えてもシャルロッテ様は、その……とても優しいです。わたし、何度も助けてもらったことが……あっ!? あ、あんな風にという言葉は不適切でした。えと、えと……あうあう!?」
自爆してしまい、フィアはぐるぐると目を回して混乱した。
見た目通り、ドジっ子なのだろうか?
シャルロッテがフィアに慕われているというのは、ちょっと意外だった。
あんな風に見えて、意外と面倒見がいいのだろうか?
それとも、時折見せる優しさが心に染みているのだろうか?
俺は知らないだけで、シャルロッテにも優しい一面があるのかもしれない。
今後、彼女と接する時は、一方的な偏見を持たないように気をつけよう。
そして、俺には見せていない一面を見つけることができるよう努力しよう。
「でも、いいのか?」
「なにが……ですか?」
「そういうことを俺にしゃべっても、っていうこと。ブリューナクさんが今の会話を聞いたら、たぶん、怒りそうだけど」
「あうっ!? そ、それは……」
そこまで考えていなかったらしく、フィアが慌てた。
あちこちに視線を泳がせて、あわあわとうろたえて……
少しして、じっとこちらを見る。
「そう、かもしれないけど……でも、その……ストライン君にウソはつきたくない、というか。ちゃんと話をしたいなあ……って」
妙に俺の評価が高い。
力がある、ということを見せつけたからなのだろうか?
そんなことを思うが、フィアが口にしたのはまったく別の答えだった。
「あの、ね……? 最初、教室で自己紹介をする時、わたしのこと助けてくれたでしょう?」
「えっと……ああ、そういえばそんなことも」
「すごく、嬉しかったから……」
フィアがにっこりと笑う。
もしかして、そのお礼として……?
だから、ちゃんと俺と話をした、っていうことなのか?
「それが理由?」
「そう、だよ……?」
むしろそれ以外になにがあるの? と言うように、フィアはきょとんとした。
正直なところちょっと驚いた。
俺の力じゃなくて、行動を評価してくれるなんて初めてのことだから……
でも……うん、そうか。
フィアは、そういうことができる子なんだな。
なかなかできることじゃないと思う。
フィア・レーナルト。
これはただの勘でしかないのだけど……
きっと、彼女とは仲良くなれるような気がする。
「あのさ、友達になってくれないかな?」
気がついたらそんな言葉が飛び出していた。
「ふぇ!? わ、わわわ、わたしなんかが!?」
「うん。君と友達になりたいんだ」
「あわわわ……え、えっと……よ、よろしくお願いします!」
思い切り頭を下げられてしまう。
そこまでしなくても、と苦笑するものの、でも、いつも一生懸命な彼女のことを好ましく思う。
「じゃあ、これからよろしく。あ、そうだ。名前でも呼んでもいいかな? それとも、レーナルトさんの方がいい?」
「えっと、その……名前で」
「そっか。じゃあ、フィアって呼ばせてもらうよ。俺のことも、レンって呼んで」
「わ、わかりました……レン君」
俺達はにっこりと笑い、これからよろしく、と握手を交わすのだった。
今日は図書室で魔法書を読み漁ろうか?
それとも、自主的に使える訓練場で魔法の練習をしようか?
「あ、あの……」
あれこれ考えていると、フィアがやってきた。
「えっと……」
「……」
「その……」
「……」
「あ、あの……」
「……」
「……はぅ」
なんだろう? と思っていたら、勝手に涙目になってしまう。
いや、待ってくれ。
俺はなにもしていないぞ?
本当だ。
というか……
前々から感じていたけど、この子、男が苦手なのかな?
あるいは、コミュニケーションが苦手とか。
だから、こうして言葉に詰まってしまうのかもしれない。
「どうしたんだ?」
こちらから話しかけてみることにした。
「あっ……えっと、はい。お嬢様がストライン君のことを呼んでいて、な、中庭に来るように……と」
「お嬢様?」
「えと、えと……シャルロッテ様のことです」
あの小さな女王様は、クラスメイトに様付けを強制しているのか?
「あ、えとっ……シャルロッテ様はシャルロッテ様で、その、変な感じではなくて……!」
あたふたとフィアが言う。
強制されているわけじゃないよ、と言いたいのだろう。
「レーナルトさんは、ブリューナクさんと仲が良いの? 友達?」
「そ、そんな! シャルロッテ様と友達なんて、お、恐れ多いです! はうあう」
「そうなのか?」
「はい!」
ものすごい勢いで肯定されてしまった。
うーん……思っていた以上に複雑な関係なのかな?
そんな俺の疑問を察したらしく、たどたどしいながらも、フィアが説明をする。
「えっと、その……わ、わたしの家は、シャルロッテ様の家に仕えていて、で……代々、専属の侍女となっていまして……」
「へえ、そういう関係なのか。でも、主があれだと苦労するだろ?」
「い、いえいえ! そんなことは決して!」
ぶんぶんぶんぶんぶん! と手を振り、フィアは俺の言葉を否定した。
それだけ強く否定したら、逆に、苦労しています、って言いたいように見えてしまう。
まあ、仲は悪くないのだろう。
むしろ良い方なのだろう。
フィアのような子がここまで主張しているんだから、その言葉に嘘はないと思う。
「あんな風に見えてもシャルロッテ様は、その……とても優しいです。わたし、何度も助けてもらったことが……あっ!? あ、あんな風にという言葉は不適切でした。えと、えと……あうあう!?」
自爆してしまい、フィアはぐるぐると目を回して混乱した。
見た目通り、ドジっ子なのだろうか?
シャルロッテがフィアに慕われているというのは、ちょっと意外だった。
あんな風に見えて、意外と面倒見がいいのだろうか?
それとも、時折見せる優しさが心に染みているのだろうか?
俺は知らないだけで、シャルロッテにも優しい一面があるのかもしれない。
今後、彼女と接する時は、一方的な偏見を持たないように気をつけよう。
そして、俺には見せていない一面を見つけることができるよう努力しよう。
「でも、いいのか?」
「なにが……ですか?」
「そういうことを俺にしゃべっても、っていうこと。ブリューナクさんが今の会話を聞いたら、たぶん、怒りそうだけど」
「あうっ!? そ、それは……」
そこまで考えていなかったらしく、フィアが慌てた。
あちこちに視線を泳がせて、あわあわとうろたえて……
少しして、じっとこちらを見る。
「そう、かもしれないけど……でも、その……ストライン君にウソはつきたくない、というか。ちゃんと話をしたいなあ……って」
妙に俺の評価が高い。
力がある、ということを見せつけたからなのだろうか?
そんなことを思うが、フィアが口にしたのはまったく別の答えだった。
「あの、ね……? 最初、教室で自己紹介をする時、わたしのこと助けてくれたでしょう?」
「えっと……ああ、そういえばそんなことも」
「すごく、嬉しかったから……」
フィアがにっこりと笑う。
もしかして、そのお礼として……?
だから、ちゃんと俺と話をした、っていうことなのか?
「それが理由?」
「そう、だよ……?」
むしろそれ以外になにがあるの? と言うように、フィアはきょとんとした。
正直なところちょっと驚いた。
俺の力じゃなくて、行動を評価してくれるなんて初めてのことだから……
でも……うん、そうか。
フィアは、そういうことができる子なんだな。
なかなかできることじゃないと思う。
フィア・レーナルト。
これはただの勘でしかないのだけど……
きっと、彼女とは仲良くなれるような気がする。
「あのさ、友達になってくれないかな?」
気がついたらそんな言葉が飛び出していた。
「ふぇ!? わ、わわわ、わたしなんかが!?」
「うん。君と友達になりたいんだ」
「あわわわ……え、えっと……よ、よろしくお願いします!」
思い切り頭を下げられてしまう。
そこまでしなくても、と苦笑するものの、でも、いつも一生懸命な彼女のことを好ましく思う。
「じゃあ、これからよろしく。あ、そうだ。名前でも呼んでもいいかな? それとも、レーナルトさんの方がいい?」
「えっと、その……名前で」
「そっか。じゃあ、フィアって呼ばせてもらうよ。俺のことも、レンって呼んで」
「わ、わかりました……レン君」
俺達はにっこりと笑い、これからよろしく、と握手を交わすのだった。