「……えっと、それはどういう意味でしょうか?」
予想外の言葉に、ついつい問い返してしまう。
すると、マーテリアは一気に不機嫌そうになる。
「なんだい。どういう、とかじゃなくて、わかりました、だろう。出来損ないのお前は、私達、女性の言う通りにしないといけないんだよ。はい、か、イエスしかないんだよ」
「えっと……」
「それとも、出来損ないだから理解できないのかね……やれやれ。これだから男は。困ったものだよ」
うん、理解した。
祖母はアラムと同じで、男性軽視が酷い。
いや、アラム以上だな、これは。
アラムも女尊男卑の傾向があるものの、ここまでじゃない。
「お前のような出来損ないが、エレニウム魔法学院に通えるわけがない。通えたとしても、情けない姿を晒すに違いない。ストライン家の恥になる前に辞めなさい」
「……俺、ちゃんと合格しましたよ。それと、問題なく過ごしています」
「ふんっ。それは、周囲が情けをかけてくれているだけさ。そのことも気づかないなんて、やっぱり男は……」
あー……うん。
これはもう、とんでもないレベルで女尊男卑が根付いているな。
老害って言われるレベルだ。
「……むう」
あ、やばい。
エリゼがとても不満そうに頬を膨らませている。
このままだと、祖母を相手に爆発してしまうかも……
「お、お祖母様!」
慌てた様子でアラムが声をあげた。
「移動でお疲れではありませんか? まずは、宿でゆっくり休んだ方がいいのではないかと。その間に、私がレンにしっかりと話をしておきますので」
「ふむ……そうだね。そうさせてもらおうか。アラムは気が効く、いい子だね」
「ありがとうございます」
アラムのおかげで助かったけど……
今のは、エリゼが暴発しないように、なのだろうか?
それとも、もしかして……俺を助けるために?
――――――――――
アラムはマーテリアを送るため、一緒に宿へ向かった。
俺とエリゼは二人になって……
「むう、むうううううーーー!!!」
ついに我慢できなくなったらしく、エリゼが怒る。
「なんなんですか、あれは!? いくらおばあちゃんでも、言って良いことと悪いことがあります!」
「えっと……」
「しばらく会っていなかったけど、見損ないました! あんな人だったなんて、思いませんでした! 許さないです! ダメダメです!!!」
「落ち着こうな?」
「フシャー!」
怒りのあまり猫化してしまうエリゼだった。
俺のために怒ってくれることは嬉しい。
ただ、人目もあるから、一度落ち着いてもらいたい。
「俺、お祖母様と会ったことはほとんどないんだけど、あんな感じの人なのか?」
「いえ……もっと優しい人です」
「ふむ」
「私がまだ体が弱かった頃、お見舞いに来てくれたこともあって……それに、手紙とかおいしい果物を送ってくれました」
それは俺も覚えている。
マーテリアは、すでに政務から離れている。
今は本邸ではなくて、過ごしやすい気候の場所に家を建てて、引退生活を送っている。
簡単に来れる距離ではないけど、エリゼのお見舞いのためにちょくちょくウチへやってきていた。
「おばあちゃん、どうして……」
「たぶん、男が嫌いなんだろうな」
典型的な女尊男卑の人だ。
女性しか魔法が使えないことで、一昔前はそういった人が多かったらしいが……
マーテリアが典型的な見本なんだろうな。
「ふむ」
そんなマーテリアに、アラムは三年ほど預けられていた。
しかも多感な時期に。
アラムが俺を下に見るのは、もしかしてマーテリアの影響を受けているのだろうか……?
――――――――――
「お祖母様。では、また明日」
マーテリアを宿に送り届けたアラムは、優雅に一礼をした。
そのまま立ち去ろうとして、
「待ちなさい」
マーテリアに呼び止められる。
「なぜ、あのような出来損ないが学院にいるの?」
「それは……私も驚いていますが、なぜかレンは魔法を使うことができて……」
その力はアラムよりも上。
そんな事実を前に、アラムは拳をぎゅうっと握り締めた。
「言い訳なんて聞きたくないわ」
「い、言い訳ではなくて、レンは確かに魔法を……」
「男が魔法を? ふんっ、ありえないわね。男はありとあらゆる面で我々女性に劣る生き物なのよ? そんな男が魔法を使えるわけがないわ。どうせ、イカサマをしているに違いないわ」
「ですが……」
「私が間違っていると?」
「い、いえっ……そのようなことは……」
マーテリアに睨まれて、アラムは顔を青くして萎縮してしまう。
それは、祖母と孫の関係ではない。
上司と部下のような、逆らうことができない徹底的な上下関係が示されていた。
「まあいいわ」
マーテリアの表情が落ち着いて、アラムはほっと小さな吐息をこぼす。
「今日、私がやってきたのは、アラムにやってほしいことがあるからよ」
「私に……ですか?」
頼み事の心当たりのないアラムは、キョトンとした。
祖母がこんな話をするなんて珍しい。
というか初めてだ。
「なんでしょうか?」
「……あの出来損ないを殺しなさい」
予想外の言葉に、ついつい問い返してしまう。
すると、マーテリアは一気に不機嫌そうになる。
「なんだい。どういう、とかじゃなくて、わかりました、だろう。出来損ないのお前は、私達、女性の言う通りにしないといけないんだよ。はい、か、イエスしかないんだよ」
「えっと……」
「それとも、出来損ないだから理解できないのかね……やれやれ。これだから男は。困ったものだよ」
うん、理解した。
祖母はアラムと同じで、男性軽視が酷い。
いや、アラム以上だな、これは。
アラムも女尊男卑の傾向があるものの、ここまでじゃない。
「お前のような出来損ないが、エレニウム魔法学院に通えるわけがない。通えたとしても、情けない姿を晒すに違いない。ストライン家の恥になる前に辞めなさい」
「……俺、ちゃんと合格しましたよ。それと、問題なく過ごしています」
「ふんっ。それは、周囲が情けをかけてくれているだけさ。そのことも気づかないなんて、やっぱり男は……」
あー……うん。
これはもう、とんでもないレベルで女尊男卑が根付いているな。
老害って言われるレベルだ。
「……むう」
あ、やばい。
エリゼがとても不満そうに頬を膨らませている。
このままだと、祖母を相手に爆発してしまうかも……
「お、お祖母様!」
慌てた様子でアラムが声をあげた。
「移動でお疲れではありませんか? まずは、宿でゆっくり休んだ方がいいのではないかと。その間に、私がレンにしっかりと話をしておきますので」
「ふむ……そうだね。そうさせてもらおうか。アラムは気が効く、いい子だね」
「ありがとうございます」
アラムのおかげで助かったけど……
今のは、エリゼが暴発しないように、なのだろうか?
それとも、もしかして……俺を助けるために?
――――――――――
アラムはマーテリアを送るため、一緒に宿へ向かった。
俺とエリゼは二人になって……
「むう、むうううううーーー!!!」
ついに我慢できなくなったらしく、エリゼが怒る。
「なんなんですか、あれは!? いくらおばあちゃんでも、言って良いことと悪いことがあります!」
「えっと……」
「しばらく会っていなかったけど、見損ないました! あんな人だったなんて、思いませんでした! 許さないです! ダメダメです!!!」
「落ち着こうな?」
「フシャー!」
怒りのあまり猫化してしまうエリゼだった。
俺のために怒ってくれることは嬉しい。
ただ、人目もあるから、一度落ち着いてもらいたい。
「俺、お祖母様と会ったことはほとんどないんだけど、あんな感じの人なのか?」
「いえ……もっと優しい人です」
「ふむ」
「私がまだ体が弱かった頃、お見舞いに来てくれたこともあって……それに、手紙とかおいしい果物を送ってくれました」
それは俺も覚えている。
マーテリアは、すでに政務から離れている。
今は本邸ではなくて、過ごしやすい気候の場所に家を建てて、引退生活を送っている。
簡単に来れる距離ではないけど、エリゼのお見舞いのためにちょくちょくウチへやってきていた。
「おばあちゃん、どうして……」
「たぶん、男が嫌いなんだろうな」
典型的な女尊男卑の人だ。
女性しか魔法が使えないことで、一昔前はそういった人が多かったらしいが……
マーテリアが典型的な見本なんだろうな。
「ふむ」
そんなマーテリアに、アラムは三年ほど預けられていた。
しかも多感な時期に。
アラムが俺を下に見るのは、もしかしてマーテリアの影響を受けているのだろうか……?
――――――――――
「お祖母様。では、また明日」
マーテリアを宿に送り届けたアラムは、優雅に一礼をした。
そのまま立ち去ろうとして、
「待ちなさい」
マーテリアに呼び止められる。
「なぜ、あのような出来損ないが学院にいるの?」
「それは……私も驚いていますが、なぜかレンは魔法を使うことができて……」
その力はアラムよりも上。
そんな事実を前に、アラムは拳をぎゅうっと握り締めた。
「言い訳なんて聞きたくないわ」
「い、言い訳ではなくて、レンは確かに魔法を……」
「男が魔法を? ふんっ、ありえないわね。男はありとあらゆる面で我々女性に劣る生き物なのよ? そんな男が魔法を使えるわけがないわ。どうせ、イカサマをしているに違いないわ」
「ですが……」
「私が間違っていると?」
「い、いえっ……そのようなことは……」
マーテリアに睨まれて、アラムは顔を青くして萎縮してしまう。
それは、祖母と孫の関係ではない。
上司と部下のような、逆らうことができない徹底的な上下関係が示されていた。
「まあいいわ」
マーテリアの表情が落ち着いて、アラムはほっと小さな吐息をこぼす。
「今日、私がやってきたのは、アラムにやってほしいことがあるからよ」
「私に……ですか?」
頼み事の心当たりのないアラムは、キョトンとした。
祖母がこんな話をするなんて珍しい。
というか初めてだ。
「なんでしょうか?」
「……あの出来損ないを殺しなさい」