翌日は休日だった。
初日で疲れてしまう生徒が続出するだろうと、学院側が予想していたのかもしれない。
いつもなら、平日だろうと休日だろうと関係なく、朝は訓練をすることにしていた。
早めに起きてランニングをして、追加で魔力を増やすトレーニング。
それが俺の日課だ。
ただ、ちょっとした事情から今日はなし。
普通の時間に起きて、食堂でごはんを食べて、私服に着替えて外に出る。
そして……
「……」
「……」
俺とアラムは苦い顔を作り、
「わー、こんなところで出会うなんて偶然ですね。これはもう、一緒にお休みを過ごすしかないですね」
エリゼは白々しい演技をする。
エリゼに連れられて街に出ると、待っていたのはアラムだった。
どうやら、アラムもエリゼも呼び出されたらしい。
偶然を装い、一緒に遊ぶことで仲直りをする。
たぶん、そんなことを考えたのだろう。
「……」
「……」
「え、えっと……一緒に遊びますよね?」
俺達が無言を貫いていると、エリゼは不安そうな顔に。
突然の展開には困ったものの……
ただ、せっかくセッティングしてくれたのだから、そのエリゼの好意を無駄にしたくない。
それに、アラムとの関係改善をした方がいいことは確かだ。
「アラム姉さん、一緒に遊びましょうか?」
「……そうね。今日は特別よ」
断るとエリゼが泣く。
そう思ったのか、アラムは渋々という様子で頷いた。
エリゼは、不安そうな顔が一転して、ぱあっと明るい笑顔になる。
「よかったです! じゃあ、行きましょう。おいしいパンケーキ屋さんがあるんですよ」
「あら、そんなところがあるの?」
「中央通りの東側にある、レヌールっていうお店なんですけど、お姉ちゃんは知らないですか?」
「あ、聞いたことはあるわ。でも、まだ行ったことはないの」
「私、何度か行ってますけど、すごくおいしいですよ。パンケーキが驚くほどふわふわで、あと、生クリームとアイスが載っているんです」
「おいしそうだけど……後々が心配ね」
「大丈夫です。お姉ちゃんはとても綺麗ですから」
「ふふ、ありがとう」
エリゼとアラムは楽しそうに話をしていた。
仲の良い姉妹そのもので、笑顔があふれている。
そんな二人を……
というか、正確に言うとアラムを見て、俺は驚いていた。
(アラムって、こんな風に笑うんだな)
毒舌をこぼすところしか見ていないので、かなり意外だ。
(……いや)
意外でもなんでもないのかもしれない。
アラムは普通の女性らしい一面があった。
でも、俺がそれを見ようとしなかった。
意地悪な人と決めつけて、触れようとしなかった。
もちろん、アラムの態度にも問題はあるのだけど……
でも、それだけじゃなくて、俺にも問題があるような気がしてきた。
「……俺もしっかりしないとな」
「お兄ちゃん?」
「いや、なんでもないよ」
――――――――――
エリゼが間に立つ形で、俺達三人は街を見て回る。
パンケーキを食べて、公園を散歩して、買い物をして……
友達と過ごすような感じで、意外と楽しい時間を過ごしていた。
エリゼがいるからなのか、アラムは俺に対して必要以上に攻撃的にならない。
ほんの少しだけで、他愛のない会話をすることもできた。
ただ……
「……」
時間の経過と共に、アラムの視線が鋭くなっていく。
俺を見て、時折、舌打ちもこぼしていた。
仲良くなれたわけじゃなくて、ただ単に、アラムが我慢しているだけのようだ。
エリゼが緩衝材になっているのは確かだけど、そこが限界で、俺達を仲良くさせるのはとても難しそうだった。
「……そうだな」
エリゼがここまでしてくれたんだ。
それに、俺も今のままでいいか、迷っている。
なら、面倒だからって避けることはしないで……
アラムとの問題に、きちんと真正面から向き合うことにしよう。
「えっと……つ、次はどうしましょうか?」
俺達の雰囲気が険悪になっていくのを感じているらしく、エリゼは気まずそうだ。
それでも、なんとか仲直りさせようとがんばっている。
本当、良い妹だ。
「エリゼ」
「あ、はい。なんですか、お兄ちゃん?」
「少し疲れたから、そこの店で休んでいかないか?」
「わかりました!」
喫茶店に入り、それぞれ注文をして……
「っと……ごめん。俺、ちょっと忘れ物をしたから、さっきの広場に戻る」
「……なら、私も手伝うわ」
「え? え?」
「すぐに戻るから、エリゼはここで待っててくれないか?」
「あ……はい、わかりました」
こちらの意図を察した様子で、エリゼは心配そうにしつつ、頷いてくれた。
喫茶店の外に出て、少し離れたところへ移動する。
アラムはなにも言わず、俺の後をついてきた。
「ここら辺でいいか」
ここならエリゼに話を聞かれる心配はない。
アラムと二人だけで話をすることができる。
どんな展開になるか予想ができないから、二人きりになろうとした……というわけだ。
さて……アラムはどう出る?
初日で疲れてしまう生徒が続出するだろうと、学院側が予想していたのかもしれない。
いつもなら、平日だろうと休日だろうと関係なく、朝は訓練をすることにしていた。
早めに起きてランニングをして、追加で魔力を増やすトレーニング。
それが俺の日課だ。
ただ、ちょっとした事情から今日はなし。
普通の時間に起きて、食堂でごはんを食べて、私服に着替えて外に出る。
そして……
「……」
「……」
俺とアラムは苦い顔を作り、
「わー、こんなところで出会うなんて偶然ですね。これはもう、一緒にお休みを過ごすしかないですね」
エリゼは白々しい演技をする。
エリゼに連れられて街に出ると、待っていたのはアラムだった。
どうやら、アラムもエリゼも呼び出されたらしい。
偶然を装い、一緒に遊ぶことで仲直りをする。
たぶん、そんなことを考えたのだろう。
「……」
「……」
「え、えっと……一緒に遊びますよね?」
俺達が無言を貫いていると、エリゼは不安そうな顔に。
突然の展開には困ったものの……
ただ、せっかくセッティングしてくれたのだから、そのエリゼの好意を無駄にしたくない。
それに、アラムとの関係改善をした方がいいことは確かだ。
「アラム姉さん、一緒に遊びましょうか?」
「……そうね。今日は特別よ」
断るとエリゼが泣く。
そう思ったのか、アラムは渋々という様子で頷いた。
エリゼは、不安そうな顔が一転して、ぱあっと明るい笑顔になる。
「よかったです! じゃあ、行きましょう。おいしいパンケーキ屋さんがあるんですよ」
「あら、そんなところがあるの?」
「中央通りの東側にある、レヌールっていうお店なんですけど、お姉ちゃんは知らないですか?」
「あ、聞いたことはあるわ。でも、まだ行ったことはないの」
「私、何度か行ってますけど、すごくおいしいですよ。パンケーキが驚くほどふわふわで、あと、生クリームとアイスが載っているんです」
「おいしそうだけど……後々が心配ね」
「大丈夫です。お姉ちゃんはとても綺麗ですから」
「ふふ、ありがとう」
エリゼとアラムは楽しそうに話をしていた。
仲の良い姉妹そのもので、笑顔があふれている。
そんな二人を……
というか、正確に言うとアラムを見て、俺は驚いていた。
(アラムって、こんな風に笑うんだな)
毒舌をこぼすところしか見ていないので、かなり意外だ。
(……いや)
意外でもなんでもないのかもしれない。
アラムは普通の女性らしい一面があった。
でも、俺がそれを見ようとしなかった。
意地悪な人と決めつけて、触れようとしなかった。
もちろん、アラムの態度にも問題はあるのだけど……
でも、それだけじゃなくて、俺にも問題があるような気がしてきた。
「……俺もしっかりしないとな」
「お兄ちゃん?」
「いや、なんでもないよ」
――――――――――
エリゼが間に立つ形で、俺達三人は街を見て回る。
パンケーキを食べて、公園を散歩して、買い物をして……
友達と過ごすような感じで、意外と楽しい時間を過ごしていた。
エリゼがいるからなのか、アラムは俺に対して必要以上に攻撃的にならない。
ほんの少しだけで、他愛のない会話をすることもできた。
ただ……
「……」
時間の経過と共に、アラムの視線が鋭くなっていく。
俺を見て、時折、舌打ちもこぼしていた。
仲良くなれたわけじゃなくて、ただ単に、アラムが我慢しているだけのようだ。
エリゼが緩衝材になっているのは確かだけど、そこが限界で、俺達を仲良くさせるのはとても難しそうだった。
「……そうだな」
エリゼがここまでしてくれたんだ。
それに、俺も今のままでいいか、迷っている。
なら、面倒だからって避けることはしないで……
アラムとの問題に、きちんと真正面から向き合うことにしよう。
「えっと……つ、次はどうしましょうか?」
俺達の雰囲気が険悪になっていくのを感じているらしく、エリゼは気まずそうだ。
それでも、なんとか仲直りさせようとがんばっている。
本当、良い妹だ。
「エリゼ」
「あ、はい。なんですか、お兄ちゃん?」
「少し疲れたから、そこの店で休んでいかないか?」
「わかりました!」
喫茶店に入り、それぞれ注文をして……
「っと……ごめん。俺、ちょっと忘れ物をしたから、さっきの広場に戻る」
「……なら、私も手伝うわ」
「え? え?」
「すぐに戻るから、エリゼはここで待っててくれないか?」
「あ……はい、わかりました」
こちらの意図を察した様子で、エリゼは心配そうにしつつ、頷いてくれた。
喫茶店の外に出て、少し離れたところへ移動する。
アラムはなにも言わず、俺の後をついてきた。
「ここら辺でいいか」
ここならエリゼに話を聞かれる心配はない。
アラムと二人だけで話をすることができる。
どんな展開になるか予想ができないから、二人きりになろうとした……というわけだ。
さて……アラムはどう出る?