「はい?」
アラムの言っていることが理解できなくて、ついつい間の抜けた声をこぼしてしまう。
そんな俺の態度が気に入らなかったらしく、アラムは眉を吊り上げる。
「学院を辞めなさい、そう言ったの」
どうやら聞き間違いじゃないらしい。
とはいえ、なんでいきなりそんな無茶を……
「理由を聞いてもいいですか?」
「あら、そんなこともわからないの? いいわ、教えてあげる。それは……」
アラムはドヤ顔で言い放つ。
「あなたが男だからよ!」
「……はい???」
再び、ぽかんとしてしまう。
いったい、アラムはなにを言っているんだ?
我が姉のことながら、彼女の考えていることがまったく理解できない。
そうやって呆けていると、アラムは、得意げに話を続ける。
「どういうわけか、あなたは男なのに魔法が使える……いいわ、それは認めましょう。でも、所詮は男。ロクでもない存在であることは間違いないわ。男なんて学院にふさわしくない。それ以前に、由緒あるストライン家の名前に傷をつけてしまうかもしれない。そんなことになる前に、一刻でも早く学院を辞めなさい」
「……はあ……」
としか言うことができない。
なんていうか、まあ……
なんてメチャクチャな性格をしているんだ、アラムは。
以前から女尊男卑の傾向が強かったけれど、ここ最近は、思い切り加速している。
確かに、今の世の中は女性の方が強い。
女性だけが魔法を使える、という点がとても強く、立場も発言力も高い。
ただ、それを盾に男性を貶めるような人は少ない。
強い力を持っていたとしても、それは、一分野で秀でているだけにすぎない。
単なる腕力勝負なら男性が勝つ。
結局のところ、一長一短なので……
それに、相手を貶めることに意味はなくて、協力することが大事なので……
誰も彼もそれを理解しているから、手を取り合っている。
それなのにアラムは……
「アラム姉さん、本気で言っているんですか?」
「当たり前でしょう」
「はあ……」
妹のエリゼはとてもまっすぐに育ったのに、どうして、アラムはこんな残念な方向に……?
「あ、あのあの……!」
対応を考えていると、エリゼが口を開いた。
「お姉ちゃん、お兄ちゃんと仲良くしてほしいです……」
「エリゼ……でも、私は……」
「どうして、そんなに意地悪ばかり言うんですか?」
「……私は、ストライン家のために話をしているのよ。男であるレンは、不要な存在なの」
「そんなことないです、お兄ちゃんが不要なんてこと、絶対にないです」
「……ぅ……」
静かだけど、とても強い意思を感じられる言葉。
それに押されるように、アラムが言葉をなくす。
「そもそも……」
エリゼが、とても不思議そうに言う。
「お姉ちゃん、お兄ちゃんのことが好きだったはずじゃないですか」
「え?」
まったく予想外のことをエリゼが口にした。
アラムが俺のことを好き?
いやいや、ありえないだろう。
ほら。
現に、アラムも訝しげにしている。
「なんの話? 私は、レンのことなんて……」
「お父さんとお母さんから聞きました。お兄ちゃんが生まれることがわかったから、お姉ちゃんは、ものすごく喜んでいた……って」
「え?」
「弟ができる、お姉ちゃんになる! ……って、すごく嬉しそうにしていた、ってお父さんとお母さんが言っていたのに」
「なによ、それ。私は、そんなことは……そんなことは……?」
みるみるうちにアラムの顔色が悪くなる。
頭痛を覚えているらしく、片手を頭に。
ふらふらとして……
今にも倒れてしまいそうだ。
「アラム姉さん? 大丈夫ですか?」
「私は……どうして……こんな……」
様子がおかしい。
なんだ?
どういうことだ?
「くっ……!!!」
アラムは頭を押さえつつ、逃げるようにこの場を立ち去ってしまう。
あまりに突然のことに、追いかけることができない。
「……お姉ちゃん……」
エリゼは、とても心配そうにしていた。
「……ちょっといい?」
今まで様子を見ていたアリーシャが口を開いた。
「他所の家のことだから、あたしが口を挟むのは違うと思っていたんだけど……それでも、気になることがあるの」
「気になること?」
「お姉さんは、本当にレンのことが嫌いなのかしら?」
アラムの言っていることが理解できなくて、ついつい間の抜けた声をこぼしてしまう。
そんな俺の態度が気に入らなかったらしく、アラムは眉を吊り上げる。
「学院を辞めなさい、そう言ったの」
どうやら聞き間違いじゃないらしい。
とはいえ、なんでいきなりそんな無茶を……
「理由を聞いてもいいですか?」
「あら、そんなこともわからないの? いいわ、教えてあげる。それは……」
アラムはドヤ顔で言い放つ。
「あなたが男だからよ!」
「……はい???」
再び、ぽかんとしてしまう。
いったい、アラムはなにを言っているんだ?
我が姉のことながら、彼女の考えていることがまったく理解できない。
そうやって呆けていると、アラムは、得意げに話を続ける。
「どういうわけか、あなたは男なのに魔法が使える……いいわ、それは認めましょう。でも、所詮は男。ロクでもない存在であることは間違いないわ。男なんて学院にふさわしくない。それ以前に、由緒あるストライン家の名前に傷をつけてしまうかもしれない。そんなことになる前に、一刻でも早く学院を辞めなさい」
「……はあ……」
としか言うことができない。
なんていうか、まあ……
なんてメチャクチャな性格をしているんだ、アラムは。
以前から女尊男卑の傾向が強かったけれど、ここ最近は、思い切り加速している。
確かに、今の世の中は女性の方が強い。
女性だけが魔法を使える、という点がとても強く、立場も発言力も高い。
ただ、それを盾に男性を貶めるような人は少ない。
強い力を持っていたとしても、それは、一分野で秀でているだけにすぎない。
単なる腕力勝負なら男性が勝つ。
結局のところ、一長一短なので……
それに、相手を貶めることに意味はなくて、協力することが大事なので……
誰も彼もそれを理解しているから、手を取り合っている。
それなのにアラムは……
「アラム姉さん、本気で言っているんですか?」
「当たり前でしょう」
「はあ……」
妹のエリゼはとてもまっすぐに育ったのに、どうして、アラムはこんな残念な方向に……?
「あ、あのあの……!」
対応を考えていると、エリゼが口を開いた。
「お姉ちゃん、お兄ちゃんと仲良くしてほしいです……」
「エリゼ……でも、私は……」
「どうして、そんなに意地悪ばかり言うんですか?」
「……私は、ストライン家のために話をしているのよ。男であるレンは、不要な存在なの」
「そんなことないです、お兄ちゃんが不要なんてこと、絶対にないです」
「……ぅ……」
静かだけど、とても強い意思を感じられる言葉。
それに押されるように、アラムが言葉をなくす。
「そもそも……」
エリゼが、とても不思議そうに言う。
「お姉ちゃん、お兄ちゃんのことが好きだったはずじゃないですか」
「え?」
まったく予想外のことをエリゼが口にした。
アラムが俺のことを好き?
いやいや、ありえないだろう。
ほら。
現に、アラムも訝しげにしている。
「なんの話? 私は、レンのことなんて……」
「お父さんとお母さんから聞きました。お兄ちゃんが生まれることがわかったから、お姉ちゃんは、ものすごく喜んでいた……って」
「え?」
「弟ができる、お姉ちゃんになる! ……って、すごく嬉しそうにしていた、ってお父さんとお母さんが言っていたのに」
「なによ、それ。私は、そんなことは……そんなことは……?」
みるみるうちにアラムの顔色が悪くなる。
頭痛を覚えているらしく、片手を頭に。
ふらふらとして……
今にも倒れてしまいそうだ。
「アラム姉さん? 大丈夫ですか?」
「私は……どうして……こんな……」
様子がおかしい。
なんだ?
どういうことだ?
「くっ……!!!」
アラムは頭を押さえつつ、逃げるようにこの場を立ち去ってしまう。
あまりに突然のことに、追いかけることができない。
「……お姉ちゃん……」
エリゼは、とても心配そうにしていた。
「……ちょっといい?」
今まで様子を見ていたアリーシャが口を開いた。
「他所の家のことだから、あたしが口を挟むのは違うと思っていたんだけど……それでも、気になることがあるの」
「気になること?」
「お姉さんは、本当にレンのことが嫌いなのかしら?」