魔法についての情報を集めるため、父さんと母さんと別れた後、書庫へ移動した。
大切な本もあるということで、今まで書庫に入れなかったのだけど、先の一件がきっかけとなって鍵を与えられた。
「……なるほどな、そういうことか」
まずは、魔法書。
そして、哲学書に歴史書に色々な教本。
さらに絵本まで含めた色々な本を読むことで、現代の魔法についてある程度を知ることができた。
父さんが言っていたように、魔法は女性しか扱うことができないらしい。
俺が転生して500年。
その間に、なにかしらの魔法の技術革新……いや、衰退と呼ぶべきか?
なにかしらの変化が起きて、男は魔法を使うことができなくなり、女性だけの特権になった。
なぜ、そんなことになっているのか?
それはわからない。
いくら書物を読み解いても、『そういうものだから』と、当たり前のこととして書かれているだめ、原因がまったくわからないのだ。
もっと古い書物を読めば原因を知ることができるかもしれないが……
残念ながら、そういう書物は我が家にはない。
「ただ、おもしろいことを知ることができたな」
今は女尊男卑の時代らしい。
魔法を使うことができる女性は優れていて、使えない男性は劣る……というような感じで。
多くの面で女性が優遇されているとか。
それも仕方ない。
魔法はとても強い力だ。
それを女性しか使えないとなると、差は出てくるだろう。
我が家でも、その影響が垣間見える。
父さんは男であるにも関わらず、婿入りという形で母さんの家にやってきた。
最初は父さんが冒険者で貴族ではないから、と思っていたのだけど……
違った。
父さんが男だから、婿入りという方法しかなかったのだ。
それほどまでに男の地位は低い。
とはいえ、男が虐げられているというわけではない。
優れた力を持つ女性が大きな権力を持っているものの、それに伴う責任をきっちりと果たしている。
ノブレスオブリージュ、というやつだ。
男性は、そんな女性をうまく支える立場がメインで……
なんだかんだで、この時代の男女はうまくやっているようだ。
「でも、わからないな。どうして俺は魔法を使えるんだ?」
俺はまごうことなき男だ。
ちゃんとついている。
それなのに魔法を使うことができる。
男は魔法を使えないと言われているのに……どういうことだ?
「……ダメだ。今はわからないことが多すぎる」
500年の間になにが起きたのか?
どうして、男が魔法を使えなくなっているのか?
情報が足りなさすぎるため、推論を立てることもできない。
「こまめに情報を集めるとして、後回しにするしかないか」
ひとまず、魔法の勉強を優先しよう。
魔法の形態が変わっていることに興味はあるものの……
しかし、俺の一番の目的は、前世以上に強くなること。
形態が変わっていることに関しては、気が向いた時に詳しく調査すればいい。
「まずは、この時代の魔法理論について調べてみるか」
この500年で、どういった進化を遂げているのか?
進化をしていないとしても、俺が思いつかなかったような独自の理論が完成している可能性がある。
それらのことを考えるとワクワクした。
俺は、魔法書が並ぶ本棚に手を伸ばして……
「お兄ちゃん?」
コンコン、と扉がノックされた。
「あの……私です。エリゼです。入っても……いいですか?」
どこか遠慮がちな声が聞こえた。
エリゼだ。
「どうぞ」
「失礼します」
扉が開いて、エリゼが姿を見せた。
「お兄ちゃん♪」
エリゼは俺の姿を認めると、ぱあっと顔を輝かせて、胸に飛び込んできた。
驚きつつも、しっかりと受け止める。
「どうしたんだ、突然?」
「部屋に行ってもお兄ちゃんがいなくて、それで、ちょっと寂しくなってしまって……家中、探してしまいました」
「そっか。悪かったな。ちょっと、ここで調べ物をしていたんだ」
エリゼが相手だと、父さん母さんとは違い、気軽な口調になる。
肩肘を張る必要がないというか……
どこにでもいるような兄妹の関係になるんだよな。
「あ……私、邪魔をしてしまいましたか?」
「いや。ちょうど終わったところだから、気にするな。というか、エリゼが邪魔になるわけないだろう」
エリゼの頭を撫でる。
「えへへ……お兄ちゃん♪」
頭を撫でられて、エリゼはうれしそうに目を細めた。
今年で四歳になるのだけど、エリゼは俺に甘えてばかりだ。
「……」
「どうしたんですか、お兄ちゃん?」
「いや、なんでもない」
エリゼに甘えられると、なんていうか、こう……
うまく言葉にできない、不思議な感情が胸に広がる。
ふわふわとしているような。
少し温かいような。
なんともいえない不思議な感じだ。
なんだろうな、これは?
「ところで、どうかしたのか? 俺を探していたんだよな。なにか用が?」
「えっと、その……お兄ちゃんと遊びたいなあ、って思いまして」
「あー……」
「もしかして、お邪魔でした……?」
「……いや、大丈夫だ。遊ぼうか」
俺の目的は強くなること。
……なのだけど、なぜかエリゼの誘いを断ることができない。
まあ、いいか。
根を詰めても倒れてしまうかもしれないし、ほどほどの息抜きは必要だろう。
そう、自分を納得させる。
「い、いいんですか?」
なぜか、言い出した本人が驚いていた。
「なんで驚いているんだ?」
「いえ、だって、その……体によくないから寝ているように、と言われることが多いので……」
「それは仕方ないだろう? エリゼは体が強くないからな。ああ、それと、遊ぶといっても運動なんかは禁止だ」
「う……そうなりますよね」
エリゼがしょぼんとしてしまう。
よくわからないけど、そういう顔は見たくない。
それに、あれこれと強制して自由を奪うのはどうかと思う。
籠の中の鳥じゃないんだから、ある程度は好きにしてやるべきだ。
「じゃあ……散歩なんてどうだ?」
考えた末、そんな妥協案を口にした。
大切な本もあるということで、今まで書庫に入れなかったのだけど、先の一件がきっかけとなって鍵を与えられた。
「……なるほどな、そういうことか」
まずは、魔法書。
そして、哲学書に歴史書に色々な教本。
さらに絵本まで含めた色々な本を読むことで、現代の魔法についてある程度を知ることができた。
父さんが言っていたように、魔法は女性しか扱うことができないらしい。
俺が転生して500年。
その間に、なにかしらの魔法の技術革新……いや、衰退と呼ぶべきか?
なにかしらの変化が起きて、男は魔法を使うことができなくなり、女性だけの特権になった。
なぜ、そんなことになっているのか?
それはわからない。
いくら書物を読み解いても、『そういうものだから』と、当たり前のこととして書かれているだめ、原因がまったくわからないのだ。
もっと古い書物を読めば原因を知ることができるかもしれないが……
残念ながら、そういう書物は我が家にはない。
「ただ、おもしろいことを知ることができたな」
今は女尊男卑の時代らしい。
魔法を使うことができる女性は優れていて、使えない男性は劣る……というような感じで。
多くの面で女性が優遇されているとか。
それも仕方ない。
魔法はとても強い力だ。
それを女性しか使えないとなると、差は出てくるだろう。
我が家でも、その影響が垣間見える。
父さんは男であるにも関わらず、婿入りという形で母さんの家にやってきた。
最初は父さんが冒険者で貴族ではないから、と思っていたのだけど……
違った。
父さんが男だから、婿入りという方法しかなかったのだ。
それほどまでに男の地位は低い。
とはいえ、男が虐げられているというわけではない。
優れた力を持つ女性が大きな権力を持っているものの、それに伴う責任をきっちりと果たしている。
ノブレスオブリージュ、というやつだ。
男性は、そんな女性をうまく支える立場がメインで……
なんだかんだで、この時代の男女はうまくやっているようだ。
「でも、わからないな。どうして俺は魔法を使えるんだ?」
俺はまごうことなき男だ。
ちゃんとついている。
それなのに魔法を使うことができる。
男は魔法を使えないと言われているのに……どういうことだ?
「……ダメだ。今はわからないことが多すぎる」
500年の間になにが起きたのか?
どうして、男が魔法を使えなくなっているのか?
情報が足りなさすぎるため、推論を立てることもできない。
「こまめに情報を集めるとして、後回しにするしかないか」
ひとまず、魔法の勉強を優先しよう。
魔法の形態が変わっていることに興味はあるものの……
しかし、俺の一番の目的は、前世以上に強くなること。
形態が変わっていることに関しては、気が向いた時に詳しく調査すればいい。
「まずは、この時代の魔法理論について調べてみるか」
この500年で、どういった進化を遂げているのか?
進化をしていないとしても、俺が思いつかなかったような独自の理論が完成している可能性がある。
それらのことを考えるとワクワクした。
俺は、魔法書が並ぶ本棚に手を伸ばして……
「お兄ちゃん?」
コンコン、と扉がノックされた。
「あの……私です。エリゼです。入っても……いいですか?」
どこか遠慮がちな声が聞こえた。
エリゼだ。
「どうぞ」
「失礼します」
扉が開いて、エリゼが姿を見せた。
「お兄ちゃん♪」
エリゼは俺の姿を認めると、ぱあっと顔を輝かせて、胸に飛び込んできた。
驚きつつも、しっかりと受け止める。
「どうしたんだ、突然?」
「部屋に行ってもお兄ちゃんがいなくて、それで、ちょっと寂しくなってしまって……家中、探してしまいました」
「そっか。悪かったな。ちょっと、ここで調べ物をしていたんだ」
エリゼが相手だと、父さん母さんとは違い、気軽な口調になる。
肩肘を張る必要がないというか……
どこにでもいるような兄妹の関係になるんだよな。
「あ……私、邪魔をしてしまいましたか?」
「いや。ちょうど終わったところだから、気にするな。というか、エリゼが邪魔になるわけないだろう」
エリゼの頭を撫でる。
「えへへ……お兄ちゃん♪」
頭を撫でられて、エリゼはうれしそうに目を細めた。
今年で四歳になるのだけど、エリゼは俺に甘えてばかりだ。
「……」
「どうしたんですか、お兄ちゃん?」
「いや、なんでもない」
エリゼに甘えられると、なんていうか、こう……
うまく言葉にできない、不思議な感情が胸に広がる。
ふわふわとしているような。
少し温かいような。
なんともいえない不思議な感じだ。
なんだろうな、これは?
「ところで、どうかしたのか? 俺を探していたんだよな。なにか用が?」
「えっと、その……お兄ちゃんと遊びたいなあ、って思いまして」
「あー……」
「もしかして、お邪魔でした……?」
「……いや、大丈夫だ。遊ぼうか」
俺の目的は強くなること。
……なのだけど、なぜかエリゼの誘いを断ることができない。
まあ、いいか。
根を詰めても倒れてしまうかもしれないし、ほどほどの息抜きは必要だろう。
そう、自分を納得させる。
「い、いいんですか?」
なぜか、言い出した本人が驚いていた。
「なんで驚いているんだ?」
「いえ、だって、その……体によくないから寝ているように、と言われることが多いので……」
「それは仕方ないだろう? エリゼは体が強くないからな。ああ、それと、遊ぶといっても運動なんかは禁止だ」
「う……そうなりますよね」
エリゼがしょぼんとしてしまう。
よくわからないけど、そういう顔は見たくない。
それに、あれこれと強制して自由を奪うのはどうかと思う。
籠の中の鳥じゃないんだから、ある程度は好きにしてやるべきだ。
「じゃあ……散歩なんてどうだ?」
考えた末、そんな妥協案を口にした。