ひょんなことから、クラスメイトと対戦することになって……
クラスメイトと一緒に訓練場へ移動した。
訓練場は闘技場と似ていた。
中央に直径50メートルくらいの円形のリング。
リングの端に、槍のような柱が四本立っていた。
リングの周囲は小さな広場になっていて……
さらにその周囲には、ぐるりと観客席が並んでいた。
観客席は段々になっていて、どの席からでもリングが見えるようになっていた。
ちなみに、学院の生徒全員と、さらにその他百名ほどを収容できるらしい。
いざという時は、避難所として活用されるとか。
「ふふんっ、逃げずにここまで来たことは褒めてあげますわ! ですが、ここで終わり。あなたは、みっともない姿をみんなの前で晒すことになりますのよ!」
リングで向かい合うシャルロッテは、胸を張りながら……ちょっと残念な胸だ……自信たっぷりに言った。
いったい、どこからその自信が出てくるのだろう?
疑問に思い、考えて……俺は、警戒することにした。
エレニウム魔法学院は、魔法使いのエリートが集まるところだ。
この時代の魔法が衰退しているとはいえ……
それでも侮ることはできない。
今まで俺が見てきた世界は、井の中だったかもしれないのだ。
世界は広い。
シャルロッテが常識を覆すような力を持っていてもおかしくない。
「それでは、今日の実技は対戦形式で魔法を学ぶことにしましょう。いきなりの対戦は想定していませんでしたが……まあ、みなさんなら問題ないでしょう」
ローラ先生は、みんなに聞こえるように大きな声で言う。
ちなみに、他のみんなは観客席に移動していた。
まずは俺達の試合を見て学ぶ、という感じだ。
「ここの訓練場は結界が張られていて、魔法が直撃しても怪我をすることはありません。ですが、代わりに魔力を失うことになります。勝負の方法は単純、相手の魔力を枯渇させた方が勝ちになります。いかにして、相手の魔力をゼロにするか? それが勝敗のポイントにです」
ローラ先生の説明を聞いて、ちょっとわくわくした。
魔力にダメージを与える結界なんて、そんなものは知らない。
俺の知らない魔法だ。
魔法が衰退しているとはいえ、新しい魔法が開発されなかったわけじゃないらしい。
この結界は、どのような理論で組み立てられているのか?
他に俺の知らない魔法はあるのだろうか?
考えるとわくわくしてきた。
「ちょっと、あなた!」
「ん?」
思わず別のことを考えていると、むっとした様子で、シャルロッテがこちらを睨んできた。
「なにぼーっとしてるかしら。あなたは、これから、わたくしににギッタギタのボッコボコにされるのですわ。ふふ、その覚悟はできてるのかしら?」
「えっと……そうそう、そうだったな。これから対戦するんだっけ。悪い、ちょっとぼーっとしていた」
「ぼーっと?」
「色々と考えていたんだ。うーん……早く休み時間になってくれないかな? この結界を調べたい」
「な、な……なんですか、そのセリフは! もしかしてもしかしなくても、わたくしなんて眼中にない、と言いたいのですか!? ふ、ふふふ……あなた、なかなかいい度胸をしていますわね!」
シャルロッテはお嬢様らしからぬ笑みを浮かべて、鋭く睨んできた。
うーん。
そういうつもりじゃなかったけど、誤解させてしまったみたいだ。
女王様だとしても、クラスメイトなのだから仲良くしていきたい。
ちゃんと誤解を解くことにしよう。
「ごめん。怒らせるつもりはなかったんだ」
「あら、ちゃんと謝罪ができますのね。なら……」
「単純に、キミに興味がないだけだ」
「……」
「それと、あまり怒らない方がいいと思う。背が伸びないぞ?」
「コロス!!!」
背は禁句だったみたいだ。
たぶん、胸の話も禁句だろう。
まいった。
俺としては、仲良くやっていきたいのだけど……
前世では、魔法に全て注ぎ込んだせいか、コミュニケーション能力が壊滅的だ。
「はいはい、まだ合図を出していないのに戦おうとしないの。ダメですよ」
「う……で、ですがあの男が……」
「言い訳無用です」
「……」
ローラ先生が、怒るシャルロッテを落ち着かせてくれた。
「まったく……やる気があるのはいいことだけど、ちょっと血の気が多いですね。今年のガナスに問題児が多いっていう話、本当みたいですね」
俺も問題児に含まれているのだろうか?
……含まれているんだろうな。
なにしろ、唯一魔法を使える『男』だからな。
「それじゃあ、二人とも、準備はいいですか?」
「いつでも」
「問題ないですわ」
俺とシャルロッテは杖を構えて、いつでも魔法を唱えられるように集中した。
「では……始め!」
「先手必勝ですわ! わたくしの必殺の一撃を喰らいなさいっ!」
先手はシャルロッテだ。
驚くほどの集中力で、高速で魔法を詠唱する。
「閃光爆炎陣<スプライトクラッシュ>!」
シャルロッテが使用したのは、光属性の中級魔法だ。
前方扇状範囲に光のシャワーが降り注ぎ、相手にダメージを与える。
この時代では、中級魔法を扱う者は天才という認識だ。
それを考えると、シャルロッテは相当な実力者ということになる。
ガナスにいるのが不思議だ。
この時代において、シャルロッテは紛れもない天才なのだろう。
ただ、驚くべきは中級魔法を使えることじゃない。
その詠唱速度だ。
負けるつもりはないので、俺も、開幕と同時に魔法を叩き込もうとしたけど……
それよりも先に、シャルロッテが詠唱を終えていた。
詠唱勝負で負けてしまうなんて……
「ふふ」
おもしろい。
やっぱり、世界は広い。
魔法が衰退している中でも、これだけの実力者がいるなんて。
これなら色々なことを学ぶことができそうだ。
……って、呑気に考え事をしている場合じゃなかった。
シャルロッテの魔法を防ぐか回避をしないと!
「光壁<ライトウォール>!」
光の壁を生成して、シャルロッテの魔法を受け止めた。
光のシャワーは、光の壁に全て飲み込まれて俺に届くことはない。
よし、ここから反撃を……
「甘い!」
「なっ」
シャルロッテは、すでに次の魔法の詠唱を終えていた。
「氷烈牙<フリーズストライク>!」
シャルロッテの魔法の詠唱速度は予想以上だった。
無防備な俺に向けて氷の牙が襲う。
クラスメイトと一緒に訓練場へ移動した。
訓練場は闘技場と似ていた。
中央に直径50メートルくらいの円形のリング。
リングの端に、槍のような柱が四本立っていた。
リングの周囲は小さな広場になっていて……
さらにその周囲には、ぐるりと観客席が並んでいた。
観客席は段々になっていて、どの席からでもリングが見えるようになっていた。
ちなみに、学院の生徒全員と、さらにその他百名ほどを収容できるらしい。
いざという時は、避難所として活用されるとか。
「ふふんっ、逃げずにここまで来たことは褒めてあげますわ! ですが、ここで終わり。あなたは、みっともない姿をみんなの前で晒すことになりますのよ!」
リングで向かい合うシャルロッテは、胸を張りながら……ちょっと残念な胸だ……自信たっぷりに言った。
いったい、どこからその自信が出てくるのだろう?
疑問に思い、考えて……俺は、警戒することにした。
エレニウム魔法学院は、魔法使いのエリートが集まるところだ。
この時代の魔法が衰退しているとはいえ……
それでも侮ることはできない。
今まで俺が見てきた世界は、井の中だったかもしれないのだ。
世界は広い。
シャルロッテが常識を覆すような力を持っていてもおかしくない。
「それでは、今日の実技は対戦形式で魔法を学ぶことにしましょう。いきなりの対戦は想定していませんでしたが……まあ、みなさんなら問題ないでしょう」
ローラ先生は、みんなに聞こえるように大きな声で言う。
ちなみに、他のみんなは観客席に移動していた。
まずは俺達の試合を見て学ぶ、という感じだ。
「ここの訓練場は結界が張られていて、魔法が直撃しても怪我をすることはありません。ですが、代わりに魔力を失うことになります。勝負の方法は単純、相手の魔力を枯渇させた方が勝ちになります。いかにして、相手の魔力をゼロにするか? それが勝敗のポイントにです」
ローラ先生の説明を聞いて、ちょっとわくわくした。
魔力にダメージを与える結界なんて、そんなものは知らない。
俺の知らない魔法だ。
魔法が衰退しているとはいえ、新しい魔法が開発されなかったわけじゃないらしい。
この結界は、どのような理論で組み立てられているのか?
他に俺の知らない魔法はあるのだろうか?
考えるとわくわくしてきた。
「ちょっと、あなた!」
「ん?」
思わず別のことを考えていると、むっとした様子で、シャルロッテがこちらを睨んできた。
「なにぼーっとしてるかしら。あなたは、これから、わたくしににギッタギタのボッコボコにされるのですわ。ふふ、その覚悟はできてるのかしら?」
「えっと……そうそう、そうだったな。これから対戦するんだっけ。悪い、ちょっとぼーっとしていた」
「ぼーっと?」
「色々と考えていたんだ。うーん……早く休み時間になってくれないかな? この結界を調べたい」
「な、な……なんですか、そのセリフは! もしかしてもしかしなくても、わたくしなんて眼中にない、と言いたいのですか!? ふ、ふふふ……あなた、なかなかいい度胸をしていますわね!」
シャルロッテはお嬢様らしからぬ笑みを浮かべて、鋭く睨んできた。
うーん。
そういうつもりじゃなかったけど、誤解させてしまったみたいだ。
女王様だとしても、クラスメイトなのだから仲良くしていきたい。
ちゃんと誤解を解くことにしよう。
「ごめん。怒らせるつもりはなかったんだ」
「あら、ちゃんと謝罪ができますのね。なら……」
「単純に、キミに興味がないだけだ」
「……」
「それと、あまり怒らない方がいいと思う。背が伸びないぞ?」
「コロス!!!」
背は禁句だったみたいだ。
たぶん、胸の話も禁句だろう。
まいった。
俺としては、仲良くやっていきたいのだけど……
前世では、魔法に全て注ぎ込んだせいか、コミュニケーション能力が壊滅的だ。
「はいはい、まだ合図を出していないのに戦おうとしないの。ダメですよ」
「う……で、ですがあの男が……」
「言い訳無用です」
「……」
ローラ先生が、怒るシャルロッテを落ち着かせてくれた。
「まったく……やる気があるのはいいことだけど、ちょっと血の気が多いですね。今年のガナスに問題児が多いっていう話、本当みたいですね」
俺も問題児に含まれているのだろうか?
……含まれているんだろうな。
なにしろ、唯一魔法を使える『男』だからな。
「それじゃあ、二人とも、準備はいいですか?」
「いつでも」
「問題ないですわ」
俺とシャルロッテは杖を構えて、いつでも魔法を唱えられるように集中した。
「では……始め!」
「先手必勝ですわ! わたくしの必殺の一撃を喰らいなさいっ!」
先手はシャルロッテだ。
驚くほどの集中力で、高速で魔法を詠唱する。
「閃光爆炎陣<スプライトクラッシュ>!」
シャルロッテが使用したのは、光属性の中級魔法だ。
前方扇状範囲に光のシャワーが降り注ぎ、相手にダメージを与える。
この時代では、中級魔法を扱う者は天才という認識だ。
それを考えると、シャルロッテは相当な実力者ということになる。
ガナスにいるのが不思議だ。
この時代において、シャルロッテは紛れもない天才なのだろう。
ただ、驚くべきは中級魔法を使えることじゃない。
その詠唱速度だ。
負けるつもりはないので、俺も、開幕と同時に魔法を叩き込もうとしたけど……
それよりも先に、シャルロッテが詠唱を終えていた。
詠唱勝負で負けてしまうなんて……
「ふふ」
おもしろい。
やっぱり、世界は広い。
魔法が衰退している中でも、これだけの実力者がいるなんて。
これなら色々なことを学ぶことができそうだ。
……って、呑気に考え事をしている場合じゃなかった。
シャルロッテの魔法を防ぐか回避をしないと!
「光壁<ライトウォール>!」
光の壁を生成して、シャルロッテの魔法を受け止めた。
光のシャワーは、光の壁に全て飲み込まれて俺に届くことはない。
よし、ここから反撃を……
「甘い!」
「なっ」
シャルロッテは、すでに次の魔法の詠唱を終えていた。
「氷烈牙<フリーズストライク>!」
シャルロッテの魔法の詠唱速度は予想以上だった。
無防備な俺に向けて氷の牙が襲う。