訓練用の広場を離れて、学院の裏手へ移動した。
山の麓に作られた小さな洞窟。
入り口は小さいものの、中は広いのだろう。
奥が見えなくて、光が届かず、暗闇に包まれている。
深淵に繋がっているかのようで、妙な迫力がある場所だ。
「ここが二次試験の会場だ」
試験官が説明を始めた。
「ここは、我々が作った訓練用のダンジョンだ。入学後はここを利用して色々な技術を学ぶことになる」
「へえ、あれがダンジョンなんですね」
エリゼが目をキラキラと輝かせていた。
ダンジョンという部分に心惹かれているらしい。
幼い頃は病弱で体を動かすことができなくて、代わりに色々な物語、冒険譚に触れてきた。
だから憧れるものがあるんだろう。
「二次試験は、このダンジョンを踏破することだ。訓練用とはいえ、中には我々が捕まえた魔物が解き放たれている。罠も用意してある。いざという時は我々が救助にあたるため死ぬようなことはないが、最悪、大怪我は覚悟してもらいたい」
「……」
物騒な言葉に、入学志願者達の顔がこわばる。
「それでも学院に入学したいというものは試験を受けろ。その覚悟がないものは、ここから立ち去るがいい」
試験官の言葉に動揺した人はいたものの……
諦めて立ち去ろうとする人はいない。
もちろん、俺もその一人だ。
そんな俺達を見て、試験官は満足そうに頷く。
「では、説明を続ける。二次試験では在校生の力を貸してもらうことになる。一緒に行動することで、彼女達の技術をその身で感じて、学んでもらいたい」
なかなかおもしろいシステムだ。
誰に協力してもらうか?
それで試験の難易度も変わるだろう。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん」
ここまでついてきたエリゼが声をかけてきた。
にっこりと笑う。
最初は、なんでエリゼがここに? と思っていたのだけど……
なるほど、そういうことか。
「エリゼに協力をお願いしてもいいか?」
「はい、がんばりますね!」
思い通りに事が進み、エリゼはにっこりと笑う。
遠くでアラムが悔しそうな顔をしているのが見えたけど、知らん。
「合否の判定だが、こちらはシンプルなものだ。地下三階に置かれている証を取ってくることで合格となる」
「質問、いいですか?」
俺は手を上げた。
「なんだね?」
「証とやらを取ってくればいいんですね? それだけで合格に?」
「そうだ、証を取ってこれたのなら合格となる。ただ、甘く見るなよ? さっきも言ったように魔物を解き放っている。それだけじゃなくて罠も設置している。慎重に行動しなければ、すぐ行動不能に陥るだろう」
「なるほど……わかりました」
「他に質問のある者は?」
「えっと、じゃあ……」
試験官の言葉に反応する者がいくつか現れた。
皆、あたりさわりのない質問をして、試験官がそれに答える。
「他には?」
ある程度、質問と回答が繰り返されたところで、手を上げる者はいなくなった。
「よし。ならば、これより二次試験を開始するが……その前に、三人パーティーを組んでもらう」
「三人?」
在校生とのコンビじゃないのか?
「学院では集団行動が求められるからな。なので、試験もパーティーを組んで行動してもらい、問題がないかどうか確かめさせてもらう。誰か一人でも脱落者が出た場合、全員、不合格となるから気をつけるように。これは協力してもらう在校生にも適用されるから、気を抜かないように」
新たにもたらされた情報に、受験生達に動揺が走る。
下手な相手とパーティーを組んだらデメリットしかない。
足を引っ張られるだけではなく、最悪、一緒に脱落してしまう。
実力のある相手と組めるかどうか。
力のある在校生に手を貸してもらえるかどうか。
ある意味で、そこが今回の試験の一番のポイントになるのかもしれない。
「三人パーティーなんですよね?」
「ああ、そうだな。三人目はどうする? できれば、確かな相手と組みたいんだけど」
「うーん、そうですね……」
「三人目……」
「三人目……」
俺とエリゼが唸るような声をこぼして、考えて……
それから、兄妹揃ってとある方を向いた。
「な、なによ……?」
俺とエリゼの視線の先……
そこにはアリーシャがいた。
山の麓に作られた小さな洞窟。
入り口は小さいものの、中は広いのだろう。
奥が見えなくて、光が届かず、暗闇に包まれている。
深淵に繋がっているかのようで、妙な迫力がある場所だ。
「ここが二次試験の会場だ」
試験官が説明を始めた。
「ここは、我々が作った訓練用のダンジョンだ。入学後はここを利用して色々な技術を学ぶことになる」
「へえ、あれがダンジョンなんですね」
エリゼが目をキラキラと輝かせていた。
ダンジョンという部分に心惹かれているらしい。
幼い頃は病弱で体を動かすことができなくて、代わりに色々な物語、冒険譚に触れてきた。
だから憧れるものがあるんだろう。
「二次試験は、このダンジョンを踏破することだ。訓練用とはいえ、中には我々が捕まえた魔物が解き放たれている。罠も用意してある。いざという時は我々が救助にあたるため死ぬようなことはないが、最悪、大怪我は覚悟してもらいたい」
「……」
物騒な言葉に、入学志願者達の顔がこわばる。
「それでも学院に入学したいというものは試験を受けろ。その覚悟がないものは、ここから立ち去るがいい」
試験官の言葉に動揺した人はいたものの……
諦めて立ち去ろうとする人はいない。
もちろん、俺もその一人だ。
そんな俺達を見て、試験官は満足そうに頷く。
「では、説明を続ける。二次試験では在校生の力を貸してもらうことになる。一緒に行動することで、彼女達の技術をその身で感じて、学んでもらいたい」
なかなかおもしろいシステムだ。
誰に協力してもらうか?
それで試験の難易度も変わるだろう。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん」
ここまでついてきたエリゼが声をかけてきた。
にっこりと笑う。
最初は、なんでエリゼがここに? と思っていたのだけど……
なるほど、そういうことか。
「エリゼに協力をお願いしてもいいか?」
「はい、がんばりますね!」
思い通りに事が進み、エリゼはにっこりと笑う。
遠くでアラムが悔しそうな顔をしているのが見えたけど、知らん。
「合否の判定だが、こちらはシンプルなものだ。地下三階に置かれている証を取ってくることで合格となる」
「質問、いいですか?」
俺は手を上げた。
「なんだね?」
「証とやらを取ってくればいいんですね? それだけで合格に?」
「そうだ、証を取ってこれたのなら合格となる。ただ、甘く見るなよ? さっきも言ったように魔物を解き放っている。それだけじゃなくて罠も設置している。慎重に行動しなければ、すぐ行動不能に陥るだろう」
「なるほど……わかりました」
「他に質問のある者は?」
「えっと、じゃあ……」
試験官の言葉に反応する者がいくつか現れた。
皆、あたりさわりのない質問をして、試験官がそれに答える。
「他には?」
ある程度、質問と回答が繰り返されたところで、手を上げる者はいなくなった。
「よし。ならば、これより二次試験を開始するが……その前に、三人パーティーを組んでもらう」
「三人?」
在校生とのコンビじゃないのか?
「学院では集団行動が求められるからな。なので、試験もパーティーを組んで行動してもらい、問題がないかどうか確かめさせてもらう。誰か一人でも脱落者が出た場合、全員、不合格となるから気をつけるように。これは協力してもらう在校生にも適用されるから、気を抜かないように」
新たにもたらされた情報に、受験生達に動揺が走る。
下手な相手とパーティーを組んだらデメリットしかない。
足を引っ張られるだけではなく、最悪、一緒に脱落してしまう。
実力のある相手と組めるかどうか。
力のある在校生に手を貸してもらえるかどうか。
ある意味で、そこが今回の試験の一番のポイントになるのかもしれない。
「三人パーティーなんですよね?」
「ああ、そうだな。三人目はどうする? できれば、確かな相手と組みたいんだけど」
「うーん、そうですね……」
「三人目……」
「三人目……」
俺とエリゼが唸るような声をこぼして、考えて……
それから、兄妹揃ってとある方を向いた。
「な、なによ……?」
俺とエリゼの視線の先……
そこにはアリーシャがいた。