無事、一時試験を突破することができた。
次は二次試験だ。
詳細は聞いていないけど、なんでも他の受験者と協力したり、在校生の力を借りる内容らしい。
どんな内容なのか?
少し楽しみにしている自分がいた。
「次の試験、どういうものなんでしょうね?」
最後まで観戦するつもりらしく、エリゼが小首を傾げつつ、そう言う。
「エリゼも知らないのか? なんでも、在校生が協力することがあるらしいけど」
「んー……ごめんなさい。なにも聞いていません」
「謝ることじゃないさ」
「んっ」
エリゼが暗い顔をしたので、頭を撫でておいた。
「お兄ちゃん……その、絶対合格できますか?」
「絶対とは言えないな」
試験が想像以上に難しいかもしれない。
予想外のトラブルが起きるかもしれない。
『かもしれない』を考えると、絶対なんて言えない。
「そうですか……」
「どうしたんだ、暗い顔をして」
「もしもお兄ちゃんが落ちたりしたら、一緒に学校に行けません……その時のことを想像したら、とても寂しくなりました」
なんだ、この生き物は?
かわいすぎやしないか?
「大丈夫だ」
ぽんぽんとエリゼの頭を撫でた。
「俺は絶対に合格するよ」
「絶対はないんじゃ?」
「今、絶対になった」
妹が一緒にいたいと言ってくれている。
なら、兄としてその願いを叶えないとな。
「えへへ、がんばってくださいね。学校でもお兄ちゃんと一緒にいたいです」
「家では一緒じゃないか」
「ずっとずっと一緒がいいんです」
「そうか? そこまで気にしなくても……」
「私にとってはすごく大切なことなんです! お兄ちゃんと離れ離れになってしまうなんて、考えられませんから!」
「別に一生離れるわけじゃないだろ。もしもダメだったとしても、数年だ」
「数年『も』ですよ! お兄ちゃんがいない生活なんて、絶対に無理です。私、お兄ちゃん欠乏症になって、どうにかなっちゃいますよ」
なんだ、その怪しい病気は?
懐かれている、ということは自覚しているのだけど……
まさか、ここまでなんて。
うれしいにはうれしいのだけど、エリゼのブラコンっぷりがちょっと心配でもある。
「……あれ?」
ふと、エリゼが明後日の方向を見た。
「どうしたんだ?」
「あの子、どうしたんでしょうか?」
エリゼの視線を追いかけると、小さな女の子が見えた。
歳は俺と同じくらいだろう。
彼女は強く印象に残るような、特徴的な外見をしていた。
まず目に入るのは、その髪だ。
燃えるように赤く、それでいて人の目を引きつける綺麗さがある。
真紅の髪は長く、リボンで束ねていた。
瞳は同じ赤。
意思が強そうな感じで、凛とした雰囲気をまとっている。
服も赤い。
赤いブラウスにスカート、それとマント。
剣士なのか、剣を腰に下げている。
全身を赤で統一した女の子は、人の輪から外れていて、一人、ぽつんと佇んでいた。
ここにいるということは、一次試験を突破した受験者だと思うんだけど……
「確かに変だな」
ここは、エレニウム魔法学院の入学試験の場だ。
剣士が門を叩くようなところではない。
いや。
男の俺が言うのもなんだけど。
「もしかして、魔法剣士なのかな? だとしたら納得いくけど……」
魔法剣士というのは、名前の通り魔法と剣を使う者を指す。
魔法も剣も得意……近接も遠距離も両方こなせるという、オールラウンダーだ。
どちらも得意、なんていう人はなかなかいないので、けっこう貴重だったりする。
「それも気になりますが……」
「エリゼは他に気になることが?」
「えっと……うまく言えないんですが、なんとなく、でしょうか? 目が離せないというか放っておけないというか……とにかく気になってしまって」
エリゼはわりと勘が鋭い。
そんな妹が言うのだから、あの女の子にはなにかあるのかもしれない。
とはいえ、いきなり話しかけても相手にされない可能性がある
最悪、警戒されてしまうだろう。
どうする?
なとど迷っていたら、
「あの……」
エリゼが女の子のところへ移動して、声をかけていた。
うちの妹、おとなしいように見えて、たまにとんでもない行動力を発揮する。
放っておくわけにはいかず、俺も女の子のところへ。
次は二次試験だ。
詳細は聞いていないけど、なんでも他の受験者と協力したり、在校生の力を借りる内容らしい。
どんな内容なのか?
少し楽しみにしている自分がいた。
「次の試験、どういうものなんでしょうね?」
最後まで観戦するつもりらしく、エリゼが小首を傾げつつ、そう言う。
「エリゼも知らないのか? なんでも、在校生が協力することがあるらしいけど」
「んー……ごめんなさい。なにも聞いていません」
「謝ることじゃないさ」
「んっ」
エリゼが暗い顔をしたので、頭を撫でておいた。
「お兄ちゃん……その、絶対合格できますか?」
「絶対とは言えないな」
試験が想像以上に難しいかもしれない。
予想外のトラブルが起きるかもしれない。
『かもしれない』を考えると、絶対なんて言えない。
「そうですか……」
「どうしたんだ、暗い顔をして」
「もしもお兄ちゃんが落ちたりしたら、一緒に学校に行けません……その時のことを想像したら、とても寂しくなりました」
なんだ、この生き物は?
かわいすぎやしないか?
「大丈夫だ」
ぽんぽんとエリゼの頭を撫でた。
「俺は絶対に合格するよ」
「絶対はないんじゃ?」
「今、絶対になった」
妹が一緒にいたいと言ってくれている。
なら、兄としてその願いを叶えないとな。
「えへへ、がんばってくださいね。学校でもお兄ちゃんと一緒にいたいです」
「家では一緒じゃないか」
「ずっとずっと一緒がいいんです」
「そうか? そこまで気にしなくても……」
「私にとってはすごく大切なことなんです! お兄ちゃんと離れ離れになってしまうなんて、考えられませんから!」
「別に一生離れるわけじゃないだろ。もしもダメだったとしても、数年だ」
「数年『も』ですよ! お兄ちゃんがいない生活なんて、絶対に無理です。私、お兄ちゃん欠乏症になって、どうにかなっちゃいますよ」
なんだ、その怪しい病気は?
懐かれている、ということは自覚しているのだけど……
まさか、ここまでなんて。
うれしいにはうれしいのだけど、エリゼのブラコンっぷりがちょっと心配でもある。
「……あれ?」
ふと、エリゼが明後日の方向を見た。
「どうしたんだ?」
「あの子、どうしたんでしょうか?」
エリゼの視線を追いかけると、小さな女の子が見えた。
歳は俺と同じくらいだろう。
彼女は強く印象に残るような、特徴的な外見をしていた。
まず目に入るのは、その髪だ。
燃えるように赤く、それでいて人の目を引きつける綺麗さがある。
真紅の髪は長く、リボンで束ねていた。
瞳は同じ赤。
意思が強そうな感じで、凛とした雰囲気をまとっている。
服も赤い。
赤いブラウスにスカート、それとマント。
剣士なのか、剣を腰に下げている。
全身を赤で統一した女の子は、人の輪から外れていて、一人、ぽつんと佇んでいた。
ここにいるということは、一次試験を突破した受験者だと思うんだけど……
「確かに変だな」
ここは、エレニウム魔法学院の入学試験の場だ。
剣士が門を叩くようなところではない。
いや。
男の俺が言うのもなんだけど。
「もしかして、魔法剣士なのかな? だとしたら納得いくけど……」
魔法剣士というのは、名前の通り魔法と剣を使う者を指す。
魔法も剣も得意……近接も遠距離も両方こなせるという、オールラウンダーだ。
どちらも得意、なんていう人はなかなかいないので、けっこう貴重だったりする。
「それも気になりますが……」
「エリゼは他に気になることが?」
「えっと……うまく言えないんですが、なんとなく、でしょうか? 目が離せないというか放っておけないというか……とにかく気になってしまって」
エリゼはわりと勘が鋭い。
そんな妹が言うのだから、あの女の子にはなにかあるのかもしれない。
とはいえ、いきなり話しかけても相手にされない可能性がある
最悪、警戒されてしまうだろう。
どうする?
なとど迷っていたら、
「あの……」
エリゼが女の子のところへ移動して、声をかけていた。
うちの妹、おとなしいように見えて、たまにとんでもない行動力を発揮する。
放っておくわけにはいかず、俺も女の子のところへ。