アラムも試験を見に来ていたらしい。
エリゼと同じく、エレニウム魔法学院の制服に身を包んでいる。
膝丈のスカートに胸元のリボンが特徴的な制服だ。
エリゼが着ているところを見ると、とてもかわいいと思う。
アラムも、綺麗だとは思う。
ただ……
「男がエレニウム魔法学院の試験に合格するなんて、ありえない話よ」
中身はまったくの別物だ。
エリゼが野原に咲く綺麗な花なら、アラムは雑木林の奥に咲く食虫植物といったところか?
とにかく目がきつく、ほぼほぼ俺を睨みつけている。
「なにかのまぐれでレンは魔法を使えるみたいだけど……所詮、まぐれよ。エレニウム魔法学院に入学できるはずがないわ。奇跡が続くと思わないことね」
「お姉ちゃん……意地悪言わないでほしいです」
「私は事実を言ったまでよ?」
「でもでも、お兄ちゃんはすごい魔法を使えますよ? あんな魔法が使えるなら、絶対に合格できます!」
「あれは……なにかの間違いよ。男のレンに、あんなことができるわけがないわ。あるいは、トリックなのかもしれない。そう、そういうことに違いないわ……お父様とお母様にいいところを見せようと、あのような小細工をするなんて……ずる賢いヤツね」
どうやら、以前の試合は、なにかのトリックだと思われたらしい。
試合だけじゃなくて、ダンジョンでも魔法を見せたはずなんだけどな……
アラムの中では、自分に都合の悪いことは、良い具合に書き換えられるらしい。
「うぅ……お兄ちゃんもお姉ちゃんも、仲良くしてほしいです……」
「あ、えっと……」
エリゼが泣きそうな顔をして、アラムが焦った顔に。
妹には弱いらしい。
「……まあ、試験を受けるのは自由よ。ほら、受付をしてきたら?」
おもしろくなさそうな顔をしつつも、アラムは素直に案内をしてくれた。
見学をする生徒は、試験の手伝いをしないといけないらしい。
「はい、そうですね」
アラムに言われるまま、受付へ。
男だということで驚かれていたけど……
父さんと母さんが書いてくれた推薦状を見せると納得してくれた。
「よし」
受付完了。
これで、あとは試験開始を待つだけだ。
「お兄ちゃん、がんばってくださいね。私、がんばって応援します!」
「ふん……まあ、ストライン家に恥をかかせないようにしてちょうだい」
「もう、お姉ちゃん……」
アラムが憎まれ口を叩いて、エリゼが困った顔になる。
うーん。
なんだかんだ、アラムは姉だ。
家族なのだから、仲良くしたいと思う。
とてもひねくれているが、でも、悪人というわけじゃない。
なぜか知らないけど、女尊男卑の傾向が強く……
俺に対する当たりがきつい。
昔はこんなんじゃなかったと思うんだけど……
「おや? アラム様ではありませんか」
なにやら金髪の女性がアラムに話しかけてきた。
制服を着ているところを見ると、アラムの同級生なのだろう。
「あら、あなたなのね。どうしたの、こんなところで?」
「それは私のセリフですよ。アラム様が受験生に興味を持っているなんて、初耳です」
「まあ……弟が試験を受けるから」
「弟?」
女性は目を大きくして……
そして、ようやく俺の存在に気がついたらしく、視線がこちらへ移動する。
「ふむ……君がアラム様の弟か」
「あなたは?」
「私は、アラム様の親友のミリア・フォールアウトだ」
フォールアウト家……確か、ウチと親交のある貴族だったか。
それなりに有名なところだと聞く。
「君も試験を受けるのか?」
「それがなにか?」
「やめておきたまえ。男は魔法を使えない。魔法を使えない以上、君は試験に合格することは絶対にない。時間の無駄になるだけだ」
言葉はやや乱暴だけど……
見合いの言葉に嫌味らしさは感じられない。
たぶん、俺のことを考えて忠告してくれているのだろう。
ただ、そんな忠告を聞き入れることはできない。
「だとしても、俺は試験を受けますよ。世の中に『絶対』なんてないので」
「ふむ」
ミリアは考えるような仕草をとり……
「なるほど。意思が強いのだな。うむ。君はいい人のようだな。男にしておくのが惜しいくらいだ。それに、かわいい……はぁはぁ」
惜しい、と言われても……
まさか、女になれ、とか言わないよな?
というか、なんで吐息を荒げている?
不審者みたいで、ちょっと怖いぞ。
「しかし、魔法を使えないのに、どうやって試験に合格するつもりなんだい?」
「俺は魔法を使えるんだ」
「ほう。こんな時でもハッタリを言うことができるか。その度胸は大したものだね、はっはっは」
この人……悪い人ではないが、人の話を聞かないタイプと見た。
「ふむ……しかし、このままでは心を折られ、傷つくだけだろう。それを見過ごすのはどうしたものか。そうだな……アラム様。弟君に教育をしても?」
「ええ、好きにしてちょうだい」
「かしこまりました」
なんの話だろう?
不思議に思っていると、ミリアが自信たっぷりに告げてくる。
「レンと言ったね? 君に勝負を挑もう」
エリゼと同じく、エレニウム魔法学院の制服に身を包んでいる。
膝丈のスカートに胸元のリボンが特徴的な制服だ。
エリゼが着ているところを見ると、とてもかわいいと思う。
アラムも、綺麗だとは思う。
ただ……
「男がエレニウム魔法学院の試験に合格するなんて、ありえない話よ」
中身はまったくの別物だ。
エリゼが野原に咲く綺麗な花なら、アラムは雑木林の奥に咲く食虫植物といったところか?
とにかく目がきつく、ほぼほぼ俺を睨みつけている。
「なにかのまぐれでレンは魔法を使えるみたいだけど……所詮、まぐれよ。エレニウム魔法学院に入学できるはずがないわ。奇跡が続くと思わないことね」
「お姉ちゃん……意地悪言わないでほしいです」
「私は事実を言ったまでよ?」
「でもでも、お兄ちゃんはすごい魔法を使えますよ? あんな魔法が使えるなら、絶対に合格できます!」
「あれは……なにかの間違いよ。男のレンに、あんなことができるわけがないわ。あるいは、トリックなのかもしれない。そう、そういうことに違いないわ……お父様とお母様にいいところを見せようと、あのような小細工をするなんて……ずる賢いヤツね」
どうやら、以前の試合は、なにかのトリックだと思われたらしい。
試合だけじゃなくて、ダンジョンでも魔法を見せたはずなんだけどな……
アラムの中では、自分に都合の悪いことは、良い具合に書き換えられるらしい。
「うぅ……お兄ちゃんもお姉ちゃんも、仲良くしてほしいです……」
「あ、えっと……」
エリゼが泣きそうな顔をして、アラムが焦った顔に。
妹には弱いらしい。
「……まあ、試験を受けるのは自由よ。ほら、受付をしてきたら?」
おもしろくなさそうな顔をしつつも、アラムは素直に案内をしてくれた。
見学をする生徒は、試験の手伝いをしないといけないらしい。
「はい、そうですね」
アラムに言われるまま、受付へ。
男だということで驚かれていたけど……
父さんと母さんが書いてくれた推薦状を見せると納得してくれた。
「よし」
受付完了。
これで、あとは試験開始を待つだけだ。
「お兄ちゃん、がんばってくださいね。私、がんばって応援します!」
「ふん……まあ、ストライン家に恥をかかせないようにしてちょうだい」
「もう、お姉ちゃん……」
アラムが憎まれ口を叩いて、エリゼが困った顔になる。
うーん。
なんだかんだ、アラムは姉だ。
家族なのだから、仲良くしたいと思う。
とてもひねくれているが、でも、悪人というわけじゃない。
なぜか知らないけど、女尊男卑の傾向が強く……
俺に対する当たりがきつい。
昔はこんなんじゃなかったと思うんだけど……
「おや? アラム様ではありませんか」
なにやら金髪の女性がアラムに話しかけてきた。
制服を着ているところを見ると、アラムの同級生なのだろう。
「あら、あなたなのね。どうしたの、こんなところで?」
「それは私のセリフですよ。アラム様が受験生に興味を持っているなんて、初耳です」
「まあ……弟が試験を受けるから」
「弟?」
女性は目を大きくして……
そして、ようやく俺の存在に気がついたらしく、視線がこちらへ移動する。
「ふむ……君がアラム様の弟か」
「あなたは?」
「私は、アラム様の親友のミリア・フォールアウトだ」
フォールアウト家……確か、ウチと親交のある貴族だったか。
それなりに有名なところだと聞く。
「君も試験を受けるのか?」
「それがなにか?」
「やめておきたまえ。男は魔法を使えない。魔法を使えない以上、君は試験に合格することは絶対にない。時間の無駄になるだけだ」
言葉はやや乱暴だけど……
見合いの言葉に嫌味らしさは感じられない。
たぶん、俺のことを考えて忠告してくれているのだろう。
ただ、そんな忠告を聞き入れることはできない。
「だとしても、俺は試験を受けますよ。世の中に『絶対』なんてないので」
「ふむ」
ミリアは考えるような仕草をとり……
「なるほど。意思が強いのだな。うむ。君はいい人のようだな。男にしておくのが惜しいくらいだ。それに、かわいい……はぁはぁ」
惜しい、と言われても……
まさか、女になれ、とか言わないよな?
というか、なんで吐息を荒げている?
不審者みたいで、ちょっと怖いぞ。
「しかし、魔法を使えないのに、どうやって試験に合格するつもりなんだい?」
「俺は魔法を使えるんだ」
「ほう。こんな時でもハッタリを言うことができるか。その度胸は大したものだね、はっはっは」
この人……悪い人ではないが、人の話を聞かないタイプと見た。
「ふむ……しかし、このままでは心を折られ、傷つくだけだろう。それを見過ごすのはどうしたものか。そうだな……アラム様。弟君に教育をしても?」
「ええ、好きにしてちょうだい」
「かしこまりました」
なんの話だろう?
不思議に思っていると、ミリアが自信たっぷりに告げてくる。
「レンと言ったね? 君に勝負を挑もう」