15歳になった。

 あれから、毎日欠かさずトレーニングをして……
 自己研鑽に励んできた。

 それでも、この時代の魔法技術の全てを会得したわけじゃない。
 完全なマスターには程遠い。

 なので、当初の予定通り、エレニウム魔法学院の門を叩いた。

 とはいえ、誰でも入学できるわけじゃない。
 試験に合格しないといけないので、その会場を訪ねた。

「ここが訓練場か……かなり広いな」

 試験は、エレニウム魔法学院が持つ複数の訓練場の一つで行われる。

 試験会場となる訓練場は最大規模の広さを誇るらしく、小さな村ならすっぽりと入ってしまいそうだ。
 訓練場の端に、大きな倉庫が三つ、横に並んでいる。
 きっと、武具などが収められているのだろう。

 そんな訓練場には、数百人ほどの受験者が集まっていた。
 全員がライバル。
 まだ試験は始まっていないものの、ピリピリとした雰囲気だ。

 さらに、後方に学院生と見られる女子達がたくさん。
 今年の新入生候補はどんなものなのか?
 興味を持っているらしく、毎年、一定数の見学者がやってくるという。

 そんな中、俺は……

「お兄ちゃん、お兄ちゃん。ここにいる人、みんな、受験生なんですね。たくさんいますね」
「そうだな」
「これだけの中から、合格者は数十人くらい……中途入学って、大変なんですね」
「基本、エレニウム魔法学院は階段式で、中途入学は少ないらしいからな」
「お兄ちゃんは……合格できますか?」
「もちろん」

 自信はある。
 そのために、今まで研鑽を重ねてきたんだ。

 ちなみに、エリゼとアラムは、すでにエレニウム魔法学院の生徒だ。

 初等部、中等部、高等部の三つに分かれているのだけど……
 エリゼは中等部の二年。
 アラムは高等部の三年だ。

 二人は元々ここの生徒で、初等部の頃から通っていた。
 寮ではなくて家から通っているため、離れ離れになったという感覚はない。

 ただ……

 合格した場合、俺は寮を選択するつもりだ。
 その方が色々とやりやすい。
 そうなると、エリゼとは離れ離れになってしまうな。

 それは、少し寂しい気がした。

「ところで、授業はいいのか?」
「今日はお休みですよ。編入生の試験の日は、みんなそわそわしてしまうので、授業にならないんです。なので、お休みになりました」
「わりと適当だな」

 まあ……

 試験は、基本的に教師が監督するものだ。
 これだけの規模の試験となると、通常通り授業なんてできないのだろう。

「ピー!」

 俺の肩に止まるニーアが、応援するかのように高く鳴いた。

 ニーアを連れてくるつもりはなかったのだけど……
 気がついたらすぐ近くにいて、ここにいて当たり前、というような感じで肩に止まっていたんだよな。

 まったく気配を感じなかったのだけど……
 この鳥、なんだろう?

 あれから色々と調べてみたものの、図鑑に載ってない種類で……
 貴重な種類だろう、という推測しかできていない。

 まあ、悪いヤツじゃなさそうだから、いいけどな。
 一緒にいると落ち着く。

「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」

 くいくい、とエリゼが俺の服を引っ張る。

「こんなにたくさんの受験生がいるんですね、ドキドキしてきました」
「なんでエリゼが緊張するんだ?」
「もしもお兄ちゃんが……って考えると、緊張してしまいます……」
「大丈夫だよ」

 ポンポンとエリゼの頭を撫でる。

「俺は合格するよ」
「絶対ですか?」
「絶対だ」
「絶対の絶対に?」
「絶対の絶対だ」
「なら……約束してください」

 エリゼは小さな小指を差し出してきた。

「これは?」
「指切り、っていう東方に伝わる約束のおまじないですよ。これをしたら、絶対に守らないとダメなんです。もしも破ったら、えっと……針を喉に刺す、だったかな?」
「拷問か……?」

 恐ろしいまじないがあったものだ。

「じゃあ……ゆびきりげんまん、うそついたらはりさーす、ゆびきった!」

 おまじないを終えると、エリゼは、どことなく満足そうにふにゃりと笑う。
 その笑みは、俺に対する信頼の証だろう。

 それを裏切らないように、絶対に合格しないといけないな。

「お兄ちゃん、絶対に合格してくださいね!」
「……エリゼ、無茶を言ってはいけないわ」

 どこで話を聞いていたのか、アラムが現れた。