走ること少し、エリゼを見つけた。
ただ、一人じゃない。
同じ学生らしき女子生徒二人に挟まれていた。
「あなた、マーセナルのエリゼさん?」
「え? はい、そうですけど……?」
「ふーん……かわいい顔してるのに、中はまっくろ、っていうわけか。ふざけた子ね」
「え? え?」
「ちょっと顔を貸してもらえるかしら?」
「私達のことを侮り、バカにしたこと、後悔させてあげる」
事情はさっぱりわからないが、女子生徒二人にエリゼが絡まれていることは間違いない。
エリゼの力ならば、大抵のことは自力でなんとかできると思うが、まだ戦闘に対する心構えは、きちんと構築されていない。
突然、自分に向けられた敵意に対してどうしていいかわからない様子で、あたふたとしていた。
「エリゼ!」
「あっ、お兄ちゃん!」
慌てて間に割り込むと、エリゼはぱあっと顔を明るくして抱きついてきた。
よほど不安だったらしく、ちょっと涙が浮かんでいる。
よし。
この二人も泣かせてやるか。
そんな決意をしてしまうシスコンな俺であった。
「な、なによ、あなたは?」
「俺はエリゼの兄だ。事情は知らないが、妹に手を出すつもりなら、こちらにも考えがあるぞ?」
「あなたが唯一の男の魔法使い……」
「かなり優秀な魔法使いと聞いていますわ……ここは退いた方が得策ですわね!」
「あなた達、覚えてなさいよ!」
悪役のようなセリフを残して、二人の女子生徒は立ち去ろうとする。
「いや、逃がすわけないだろ。拘束<バインド>」
「「きゃあ!?」」
魔法で二人を拘束した。
目の前に転がっている火種を放置しておくバカはいない。
今後、問題が発生しないように、しっかりと話を聞いておかないとな。
――――――――――
女の子を魔法で拘束して尋問する。
どこからどう見ても悪役のするようなことなので、さすがに場所を変えた。
俺とエリゼでそれぞれ一人ずつを担いで、公園に移動した。
夜なので人気はない。
「こ、このようなところに私達を連れ込むなんて……」
「けだもの! 男はけだものよ!」
魔法で拘束されて動けない二人は、ここぞとばかりに声をあげる。
なにを言っているんだ、こいつらは?
というか、エリゼの前でそういう話はやめほしい。
ほら、なんのことだろう? って興味を持ってしまったじゃないか。
後々で質問されたら、どう答えればいいのやら。
「それじゃあ、質問させてもらうぞ」
「ふんっ、マーセナルの関係者であるあなたに話すことなんて、なにもありませんわ!」
「そうよっ、私達は何も話さないわよ!」
「へえ、いい度胸をしているな。抵抗するのなら、それなりの覚悟はできているだろうな?」
「ま、まさか……ここぞとばかりに、私達のみずみずしい体を貪るのでは……!?」
だから、エリゼの前なんだから、そういう発言は謹んでくれ。
どれだけ妄想たくましいんだよ。
「素直にしゃべらないっていうのなら……コレを使う」
そこらに落ちている鳥の羽を拾い、それを二人に見せつけた。
二人は、それがなにか? というような感じでキョトンとした。
しかし……
俺が二人の靴を脱がせて、さらに靴下も脱がせて……
素足にすると、こちらの目的を察した様子で、サアっと顔を青くする。
俺はニヤリと悪人のように笑い……
鳥の羽で二人の足裏をくすぐる。
「「きゃはははははっ!? や、やめっ、ひゃあああああっ!?」
……二人が降参するのに、1分もかからなかった。
ちなみに、エリゼが俺を見て「お兄ちゃん、鬼畜です……」なんてことをつぶやいていた。
結局、俺自身が悪影響を与えてしまったみたいだ。
まあ、それはまた今度考えることにして……
今は二人から話を聞くことにしよう。
「それで……どうしてエリゼに絡んでいたんだ?」
「そ、それは……」
「まだ笑い足りないなら、おかわりをしても俺は一向にかまわないけど……」
「しゃ、喋ります!」
鳥の羽を見せつけると、二人は慌てて口を開いた。
「……私達、シルカードなんですけど」
「ある日、とある噂を聞いたのよ。マーセナルのエリゼ・ストラインが私達のことを、無能な魔法使い、ってあざ笑ってる、って。シルカード、ガナスなんて雑魚の集まり……って」
「えぇ!? な、なんですか、それ。そんなこと、私、知りませんよ!」
まるで見に覚えのないことを言われてしまい、エリゼは慌てて首をぶんぶんと横に振った。
手も横に振っていて、全身で違うと否定していた。
エリゼのことは、兄である俺がよく知っている。
そんなことは絶対に言わない。
そのことを二人も理解してくれたらしく、勢いが衰えていく。
「もしかして、噂は噂であって……」
「そんなことはない……?」
「も、もちろんです! そりゃあ、私は聖人君子ってわけじゃないですから、悪いことをする時もありますけど……だからって、他人を無意味に貶めるようなことなんてしません!」
エリゼの訴えが通じたらしく、二人は顔を見合わせる。
身動きできない状況の中、器用に頭を下げた。
「もうしわけありませんでした……」
「どうやら、私達の勘違いというか、噂に踊らされていたみたいで……ごめんなさい」
演技とか上辺だけの反省ではなくて、二人は本当にもうしわけないと思っているみたいだ。
それくらいにもうしわけなさそうにしている。
この様子なら逃げることもないだろうと思い、魔法による拘束を解除した。
その上で、改めて話を聞く。
「誤解も解けたところで、もう少し話を聞きたいんだけど……エリゼが他のクラスの悪口を言っていたっていう噂、どこで聞いたんだ? また、どれくらいの信ぴょう性があったんだ?」
「どこで聞いたか、と聞かれますと……」
「困るよね」
「ん? どういうことだ?」
「色々な人から、ちょくちょく聞きますわ。もっとも、内容が内容なので、あまり表に出ることはありませんが……」
「けっこうな人が耳にしてるらしく、話題にしているの。だから、本当のことなのかな……って、確認もしないで信じちゃって……」
火のないところに煙は立たないというが、エリゼは絶対にそんなことをするような子じゃない。
となると、エリゼの評判を落とすなり、なにかしらの目的で悪評を流している人物がいるということになる。
それと、ローラ先生から聞いたクラス間の対立……
色々な話がピタリと重なる。
なにか起きるのではないか?
これは、その前触れではないか?
そんな嫌な予感がした。
ただ、一人じゃない。
同じ学生らしき女子生徒二人に挟まれていた。
「あなた、マーセナルのエリゼさん?」
「え? はい、そうですけど……?」
「ふーん……かわいい顔してるのに、中はまっくろ、っていうわけか。ふざけた子ね」
「え? え?」
「ちょっと顔を貸してもらえるかしら?」
「私達のことを侮り、バカにしたこと、後悔させてあげる」
事情はさっぱりわからないが、女子生徒二人にエリゼが絡まれていることは間違いない。
エリゼの力ならば、大抵のことは自力でなんとかできると思うが、まだ戦闘に対する心構えは、きちんと構築されていない。
突然、自分に向けられた敵意に対してどうしていいかわからない様子で、あたふたとしていた。
「エリゼ!」
「あっ、お兄ちゃん!」
慌てて間に割り込むと、エリゼはぱあっと顔を明るくして抱きついてきた。
よほど不安だったらしく、ちょっと涙が浮かんでいる。
よし。
この二人も泣かせてやるか。
そんな決意をしてしまうシスコンな俺であった。
「な、なによ、あなたは?」
「俺はエリゼの兄だ。事情は知らないが、妹に手を出すつもりなら、こちらにも考えがあるぞ?」
「あなたが唯一の男の魔法使い……」
「かなり優秀な魔法使いと聞いていますわ……ここは退いた方が得策ですわね!」
「あなた達、覚えてなさいよ!」
悪役のようなセリフを残して、二人の女子生徒は立ち去ろうとする。
「いや、逃がすわけないだろ。拘束<バインド>」
「「きゃあ!?」」
魔法で二人を拘束した。
目の前に転がっている火種を放置しておくバカはいない。
今後、問題が発生しないように、しっかりと話を聞いておかないとな。
――――――――――
女の子を魔法で拘束して尋問する。
どこからどう見ても悪役のするようなことなので、さすがに場所を変えた。
俺とエリゼでそれぞれ一人ずつを担いで、公園に移動した。
夜なので人気はない。
「こ、このようなところに私達を連れ込むなんて……」
「けだもの! 男はけだものよ!」
魔法で拘束されて動けない二人は、ここぞとばかりに声をあげる。
なにを言っているんだ、こいつらは?
というか、エリゼの前でそういう話はやめほしい。
ほら、なんのことだろう? って興味を持ってしまったじゃないか。
後々で質問されたら、どう答えればいいのやら。
「それじゃあ、質問させてもらうぞ」
「ふんっ、マーセナルの関係者であるあなたに話すことなんて、なにもありませんわ!」
「そうよっ、私達は何も話さないわよ!」
「へえ、いい度胸をしているな。抵抗するのなら、それなりの覚悟はできているだろうな?」
「ま、まさか……ここぞとばかりに、私達のみずみずしい体を貪るのでは……!?」
だから、エリゼの前なんだから、そういう発言は謹んでくれ。
どれだけ妄想たくましいんだよ。
「素直にしゃべらないっていうのなら……コレを使う」
そこらに落ちている鳥の羽を拾い、それを二人に見せつけた。
二人は、それがなにか? というような感じでキョトンとした。
しかし……
俺が二人の靴を脱がせて、さらに靴下も脱がせて……
素足にすると、こちらの目的を察した様子で、サアっと顔を青くする。
俺はニヤリと悪人のように笑い……
鳥の羽で二人の足裏をくすぐる。
「「きゃはははははっ!? や、やめっ、ひゃあああああっ!?」
……二人が降参するのに、1分もかからなかった。
ちなみに、エリゼが俺を見て「お兄ちゃん、鬼畜です……」なんてことをつぶやいていた。
結局、俺自身が悪影響を与えてしまったみたいだ。
まあ、それはまた今度考えることにして……
今は二人から話を聞くことにしよう。
「それで……どうしてエリゼに絡んでいたんだ?」
「そ、それは……」
「まだ笑い足りないなら、おかわりをしても俺は一向にかまわないけど……」
「しゃ、喋ります!」
鳥の羽を見せつけると、二人は慌てて口を開いた。
「……私達、シルカードなんですけど」
「ある日、とある噂を聞いたのよ。マーセナルのエリゼ・ストラインが私達のことを、無能な魔法使い、ってあざ笑ってる、って。シルカード、ガナスなんて雑魚の集まり……って」
「えぇ!? な、なんですか、それ。そんなこと、私、知りませんよ!」
まるで見に覚えのないことを言われてしまい、エリゼは慌てて首をぶんぶんと横に振った。
手も横に振っていて、全身で違うと否定していた。
エリゼのことは、兄である俺がよく知っている。
そんなことは絶対に言わない。
そのことを二人も理解してくれたらしく、勢いが衰えていく。
「もしかして、噂は噂であって……」
「そんなことはない……?」
「も、もちろんです! そりゃあ、私は聖人君子ってわけじゃないですから、悪いことをする時もありますけど……だからって、他人を無意味に貶めるようなことなんてしません!」
エリゼの訴えが通じたらしく、二人は顔を見合わせる。
身動きできない状況の中、器用に頭を下げた。
「もうしわけありませんでした……」
「どうやら、私達の勘違いというか、噂に踊らされていたみたいで……ごめんなさい」
演技とか上辺だけの反省ではなくて、二人は本当にもうしわけないと思っているみたいだ。
それくらいにもうしわけなさそうにしている。
この様子なら逃げることもないだろうと思い、魔法による拘束を解除した。
その上で、改めて話を聞く。
「誤解も解けたところで、もう少し話を聞きたいんだけど……エリゼが他のクラスの悪口を言っていたっていう噂、どこで聞いたんだ? また、どれくらいの信ぴょう性があったんだ?」
「どこで聞いたか、と聞かれますと……」
「困るよね」
「ん? どういうことだ?」
「色々な人から、ちょくちょく聞きますわ。もっとも、内容が内容なので、あまり表に出ることはありませんが……」
「けっこうな人が耳にしてるらしく、話題にしているの。だから、本当のことなのかな……って、確認もしないで信じちゃって……」
火のないところに煙は立たないというが、エリゼは絶対にそんなことをするような子じゃない。
となると、エリゼの評判を落とすなり、なにかしらの目的で悪評を流している人物がいるということになる。
それと、ローラ先生から聞いたクラス間の対立……
色々な話がピタリと重なる。
なにか起きるのではないか?
これは、その前触れではないか?
そんな嫌な予感がした。