翌日……二日目の休日。
今日もご褒美の日だ。
相手はアリーシャ。
どんなお願いをされるのだろうか?
思わず身構えてしまったのだけど……
「……なにこれ?」
学院の訓練場。
そこで模造剣を手にして、アリーシャと対峙していた。
アリーシャもまた、模造剣を手にしていた。
心なしか、普段と比べて表情が輝いている気がした。
……刃物を持っているからだろうか?
「さあ、いくわよ!」
「ちょっと待った」
いきなり踏み込んでこようとしたアリーシャに、慌ててストップをかけた。
「どうしたのよ?」
「この状況は、いったいなんなんだ? わけがわからない。まずは説明をしてくれ」
「説明もなにも……する必要あるの?」
「あるから聞いているんだよ」
「まったく……レンって、妙なところで鈍いのね」
ほっとけ。
「訓練場で模造剣を手に対峙する。これを訓練と言わず、なんていうと思う?」
「まあ……訓練以外のなにものでもないな」
「なら、わかるでしょう?」
「いや、待て。わからない」
今日は、アリーシャのお願いを聞くという話だったはずだ。
いつもの訓練もなし。
それなのに、なぜ訓練をすることに?
「決まっているじゃない。あたしのお願いは、レンに稽古をつけてもらうことだから……よ」
「稽古? え、なんで?」
「もっともっと強くなりたいの」
「もしかして……この前の結果、気にしてるのか?」
1週間、呪いの負荷に耐えた後……
エリゼだけじゃなくて、みんなも魔法の試し撃ちをした。
結果、全員が今まで以上の数値を叩き出したのだけど……
アリーシャは大幅に上昇することはなくて、予想内の範囲で終わった。
俺の推理は的中らしく、アリーシャが苦い顔をする。
「あたしだけ遅れているの。このままだと、みんなの足を引っ張ってしまうわ。それだけじゃなくて、レンに迷惑をかけてしまうかもしれないし……それだけは避けたいの」
「気にすることはないと思うんだけど……成長には個人差があるから、これも想定内だ。たぶん、これから巻き返すような勢いで、一気に成長していくと思うぞ」
「そうだとしても」
アリーシャが模造剣を構える。
「今できることをしておきたいの。そのために、今日一日、レンにみっちりと稽古をつけてもらいたいの」
ものすごく真面目な子だ。
それでいて、努力を重ねることを怠らない。
この調子なら、アリーシャはとんでもない成長を遂げるのではないか?
魔法剣という隠し玉も持っているし、一番の有望株かもしれない。
そう思うと、ちょっとわくわくしてきた。
魔王を倒すという使命の他に……
ごくごく単純に、強くなる、という言葉に俺は弱い。
そして、それをとても魅力的に思う。
「わかった。そういうことなら、いくらでも付き合うよ」
「ありがと。お願いするわね」
「ああ。それじゃあ……やろうか」
「ええ!」
共に駆けて、模造剣を振り下ろした。
――――――――――
「ふぅ……」
あれから3時間……ずっと稽古をした。
剣技、魔法、戦闘技術……ありとあらゆることをアリーシャに叩き込んだ。
その全てを、乾いた砂が水を吸収するように、アリーシャは己のものにした。
この短時間で、さすがに全てを伝えることはできないが……
それでも、かなりの成長ができたのではないかと思う。
さすがというか、なんというか……
アリーシャって、とんでもない女の子だな。
その力。
その才能。
とんでもなく優れている。
俺よりも上かもしれない。
とはいえ、さすがに疲れたらしい。
休憩を取ることになり……
アリーシャは汗をたっぷりとかいて、床の上に座り、肩で息をしている。
「ほい、おつかれ」
タオルとドリンクを渡す。
「ありがとう」
アリーシャはタオルで顔を拭いて、それからドリンクを口にした。
一気に半分くらいを飲んで、とてもスッキリとした顔になる。
「はぁあああ……生き返るわ。レンも立ってないで、座れば?」
「そうするよ」
「ちょっ……!?」
アリーシャの隣に座ると、なぜか赤くなってしまう。
ものすごく慌てているというか、気まずそうにしていた。
「どうした?」
「いや、だって……今のあたし、汗臭いし……そんなに近くに来たら……」
「稽古の後なんだから、汗をかいているのは当たり前だろ? そんなこと、俺は気にしないさ。それに……汗をかいていたとしても、アリーシャはとてもいい匂いがすると思うけど。それは努力の証なんだから、俺は好きだな」
「なっ?!」
フォローをしたつもりなのだけど、なぜか、アリーシャがさらに赤くなってしまう。
慌てた様子で俺から顔を背けて、ぶつぶつとつぶやく、
「す、好きとか……もうっ、レンはそういうことを簡単に……」
「アリーシャ?」
「こ、こっち見ないで。今のあたし……たぶん、ダメダメな顔をしてるから」
「なんでだよ?」
「なんでも! とにかく、こっちを見たらダメよ。ダメだからね!?」
「それって、見ろっていうフリ?」
「違うわよ!」
なぜか怒られてしまうのだった。
思春期の女の子って、よくわからない……
今日もご褒美の日だ。
相手はアリーシャ。
どんなお願いをされるのだろうか?
思わず身構えてしまったのだけど……
「……なにこれ?」
学院の訓練場。
そこで模造剣を手にして、アリーシャと対峙していた。
アリーシャもまた、模造剣を手にしていた。
心なしか、普段と比べて表情が輝いている気がした。
……刃物を持っているからだろうか?
「さあ、いくわよ!」
「ちょっと待った」
いきなり踏み込んでこようとしたアリーシャに、慌ててストップをかけた。
「どうしたのよ?」
「この状況は、いったいなんなんだ? わけがわからない。まずは説明をしてくれ」
「説明もなにも……する必要あるの?」
「あるから聞いているんだよ」
「まったく……レンって、妙なところで鈍いのね」
ほっとけ。
「訓練場で模造剣を手に対峙する。これを訓練と言わず、なんていうと思う?」
「まあ……訓練以外のなにものでもないな」
「なら、わかるでしょう?」
「いや、待て。わからない」
今日は、アリーシャのお願いを聞くという話だったはずだ。
いつもの訓練もなし。
それなのに、なぜ訓練をすることに?
「決まっているじゃない。あたしのお願いは、レンに稽古をつけてもらうことだから……よ」
「稽古? え、なんで?」
「もっともっと強くなりたいの」
「もしかして……この前の結果、気にしてるのか?」
1週間、呪いの負荷に耐えた後……
エリゼだけじゃなくて、みんなも魔法の試し撃ちをした。
結果、全員が今まで以上の数値を叩き出したのだけど……
アリーシャは大幅に上昇することはなくて、予想内の範囲で終わった。
俺の推理は的中らしく、アリーシャが苦い顔をする。
「あたしだけ遅れているの。このままだと、みんなの足を引っ張ってしまうわ。それだけじゃなくて、レンに迷惑をかけてしまうかもしれないし……それだけは避けたいの」
「気にすることはないと思うんだけど……成長には個人差があるから、これも想定内だ。たぶん、これから巻き返すような勢いで、一気に成長していくと思うぞ」
「そうだとしても」
アリーシャが模造剣を構える。
「今できることをしておきたいの。そのために、今日一日、レンにみっちりと稽古をつけてもらいたいの」
ものすごく真面目な子だ。
それでいて、努力を重ねることを怠らない。
この調子なら、アリーシャはとんでもない成長を遂げるのではないか?
魔法剣という隠し玉も持っているし、一番の有望株かもしれない。
そう思うと、ちょっとわくわくしてきた。
魔王を倒すという使命の他に……
ごくごく単純に、強くなる、という言葉に俺は弱い。
そして、それをとても魅力的に思う。
「わかった。そういうことなら、いくらでも付き合うよ」
「ありがと。お願いするわね」
「ああ。それじゃあ……やろうか」
「ええ!」
共に駆けて、模造剣を振り下ろした。
――――――――――
「ふぅ……」
あれから3時間……ずっと稽古をした。
剣技、魔法、戦闘技術……ありとあらゆることをアリーシャに叩き込んだ。
その全てを、乾いた砂が水を吸収するように、アリーシャは己のものにした。
この短時間で、さすがに全てを伝えることはできないが……
それでも、かなりの成長ができたのではないかと思う。
さすがというか、なんというか……
アリーシャって、とんでもない女の子だな。
その力。
その才能。
とんでもなく優れている。
俺よりも上かもしれない。
とはいえ、さすがに疲れたらしい。
休憩を取ることになり……
アリーシャは汗をたっぷりとかいて、床の上に座り、肩で息をしている。
「ほい、おつかれ」
タオルとドリンクを渡す。
「ありがとう」
アリーシャはタオルで顔を拭いて、それからドリンクを口にした。
一気に半分くらいを飲んで、とてもスッキリとした顔になる。
「はぁあああ……生き返るわ。レンも立ってないで、座れば?」
「そうするよ」
「ちょっ……!?」
アリーシャの隣に座ると、なぜか赤くなってしまう。
ものすごく慌てているというか、気まずそうにしていた。
「どうした?」
「いや、だって……今のあたし、汗臭いし……そんなに近くに来たら……」
「稽古の後なんだから、汗をかいているのは当たり前だろ? そんなこと、俺は気にしないさ。それに……汗をかいていたとしても、アリーシャはとてもいい匂いがすると思うけど。それは努力の証なんだから、俺は好きだな」
「なっ?!」
フォローをしたつもりなのだけど、なぜか、アリーシャがさらに赤くなってしまう。
慌てた様子で俺から顔を背けて、ぶつぶつとつぶやく、
「す、好きとか……もうっ、レンはそういうことを簡単に……」
「アリーシャ?」
「こ、こっち見ないで。今のあたし……たぶん、ダメダメな顔をしてるから」
「なんでだよ?」
「なんでも! とにかく、こっちを見たらダメよ。ダメだからね!?」
「それって、見ろっていうフリ?」
「違うわよ!」
なぜか怒られてしまうのだった。
思春期の女の子って、よくわからない……