「試されている……?」
ふと、そんな言葉が漏れ出た。
みんなが小首を傾げる。
「試されている、って……レン、どういうこと?」
「あ、いや。俺もよくわからないんですけど、ふと、そう思ったというか……」
魔王は色々な手を使い、俺に対して間接的な攻撃をしかけている。
ただ、そのどれも致命的なものではない。
極端な話だけど……
かつての仇敵である俺を排除したいのなら、ゴロツキなどを雇い、不意打ちで刺すなどしてしまえばいい。
前世で賢者と呼ばれていた俺でも、四六時中、警戒することは不可能で、隙はできる。
暗殺に特化してしまえば、それを防ぐことは難しい。
それをしないということは……
魔王は、俺を殺すつもりはない?
いや、でも、場合によっては死ぬ可能性もあったわけで……んんんー?
「ちょっと混乱してきたな」
「魔王について、あたし達はなにも知らないけど……だからこそ、気づくことができる点があるかもしれないわね。少し調べてみましょう」
「は、はい! 調べものは得意です」
「やれやれですわ。レンは、本当に手がかかるんですから」
「えっと……」
みんなの言葉は嬉しい。
ただ、それでも、念のために確認しておきたいことがある。
「みんなは……協力してくれるのか?」
「なにがですか?」
「だから、魔王についての……」
「もちろんです! お兄ちゃんのピンチを見過ごすなんて、妹としてできませんから!」
他のみんなも同じ意見らしく、しっかりと頷いてみせた。
「……ありがとう」
「ほら、言ってみるものだろう? 思うに、レンは守りに入りすぎていたかな」
「そうみたいだな」
メルの言葉に、もう苦笑するしかない。
今世で俺は、人の絆を知った。
大事な家族、大事な友達ができた。
初めて得た幸せはとても甘く……
絶対に手放したくないと思うようになっていた。
だからこそ、巻き込むことを避けた。
失うことを恐れて、俺一人で抱え込むようになった。
でも……
それはもう、終わりにしよう。
一人でできることに限界はある。
それだけじゃなくて、なんでもかんでも一人で抱え込むと、かえって周りを心配させてしまう。
立場が逆だとしたら、俺は、耐えられない。
自分が耐えられないことを、みんなに押しつけるべきじゃない。
「みんな……よろしく頼む」
俺はそう言って、頭を深く下げるのだった。
――――――――――
「はぁあああ……」
夜。
宿の裏手にある広場で、俺は夜空を見上げていた。
夜風は冷たい。
ただ、その冷たさが今は心地いい。
俺達は、まだレイドアロマにいた。
もうこの街に用はないのだけど……
あれこれ話をしていたら遅くなってしまい、もう一泊することになったのだ。
「……」
夜空で輝く無数の星々。
それに向かって手を伸ばす。
「前世では、あれに手が届くなんて欠片も思っていなかったけど……今なら、手が届くかもしれないな」
それは、俺一人で成し遂げることじゃない。
みんなの力を借りて成し遂げることだ。
「俺、今まで、一人でなにをしていたんだか……思い返すと、もう、色々と痛くて恥ずかしいな」
「そうだね、キミはとても恥ずかしい」
「メルか」
気がつけばメルがいた。
同じように夜空の星を眺める。
「もっと、他人に頼るってことを覚えないと」
「……言い訳だけど、そもそも、そういう発想がなかったんだよ」
前世では、なにもかも全て一人でこなしていた。
その癖というか、思考が染み付いていて……
今世でも一人で行動することが当たり前になっていた。
誰かに頼る、なんて基本的に考えていなかった。
「みんなと一緒にいる大切さを知ったっていうのに、でも、肝心な時は一人でいて……学んでないな」
「ダメダメだね」
「……お前は、俺の心にトドメを刺しに来たのか?」
「あの大賢者をからかえる機会なんて滅多にないからねー、にひひ♪」
悪魔か?
「でも、意味なかったかな」
「え」
「だってもう、理解しているじゃん」
「それは……」
「なら、間違えることはないと思うよ。心配することもない。これからは、みんなで一緒にがんばればいいさ。致命的な失敗はしていない。ここからやり直すことはできる……そうだろう?」
「……ああ、その通りだな」
俺は苦笑して……
もう一度、夜空に輝く星を見上げるのだった。
ふと、そんな言葉が漏れ出た。
みんなが小首を傾げる。
「試されている、って……レン、どういうこと?」
「あ、いや。俺もよくわからないんですけど、ふと、そう思ったというか……」
魔王は色々な手を使い、俺に対して間接的な攻撃をしかけている。
ただ、そのどれも致命的なものではない。
極端な話だけど……
かつての仇敵である俺を排除したいのなら、ゴロツキなどを雇い、不意打ちで刺すなどしてしまえばいい。
前世で賢者と呼ばれていた俺でも、四六時中、警戒することは不可能で、隙はできる。
暗殺に特化してしまえば、それを防ぐことは難しい。
それをしないということは……
魔王は、俺を殺すつもりはない?
いや、でも、場合によっては死ぬ可能性もあったわけで……んんんー?
「ちょっと混乱してきたな」
「魔王について、あたし達はなにも知らないけど……だからこそ、気づくことができる点があるかもしれないわね。少し調べてみましょう」
「は、はい! 調べものは得意です」
「やれやれですわ。レンは、本当に手がかかるんですから」
「えっと……」
みんなの言葉は嬉しい。
ただ、それでも、念のために確認しておきたいことがある。
「みんなは……協力してくれるのか?」
「なにがですか?」
「だから、魔王についての……」
「もちろんです! お兄ちゃんのピンチを見過ごすなんて、妹としてできませんから!」
他のみんなも同じ意見らしく、しっかりと頷いてみせた。
「……ありがとう」
「ほら、言ってみるものだろう? 思うに、レンは守りに入りすぎていたかな」
「そうみたいだな」
メルの言葉に、もう苦笑するしかない。
今世で俺は、人の絆を知った。
大事な家族、大事な友達ができた。
初めて得た幸せはとても甘く……
絶対に手放したくないと思うようになっていた。
だからこそ、巻き込むことを避けた。
失うことを恐れて、俺一人で抱え込むようになった。
でも……
それはもう、終わりにしよう。
一人でできることに限界はある。
それだけじゃなくて、なんでもかんでも一人で抱え込むと、かえって周りを心配させてしまう。
立場が逆だとしたら、俺は、耐えられない。
自分が耐えられないことを、みんなに押しつけるべきじゃない。
「みんな……よろしく頼む」
俺はそう言って、頭を深く下げるのだった。
――――――――――
「はぁあああ……」
夜。
宿の裏手にある広場で、俺は夜空を見上げていた。
夜風は冷たい。
ただ、その冷たさが今は心地いい。
俺達は、まだレイドアロマにいた。
もうこの街に用はないのだけど……
あれこれ話をしていたら遅くなってしまい、もう一泊することになったのだ。
「……」
夜空で輝く無数の星々。
それに向かって手を伸ばす。
「前世では、あれに手が届くなんて欠片も思っていなかったけど……今なら、手が届くかもしれないな」
それは、俺一人で成し遂げることじゃない。
みんなの力を借りて成し遂げることだ。
「俺、今まで、一人でなにをしていたんだか……思い返すと、もう、色々と痛くて恥ずかしいな」
「そうだね、キミはとても恥ずかしい」
「メルか」
気がつけばメルがいた。
同じように夜空の星を眺める。
「もっと、他人に頼るってことを覚えないと」
「……言い訳だけど、そもそも、そういう発想がなかったんだよ」
前世では、なにもかも全て一人でこなしていた。
その癖というか、思考が染み付いていて……
今世でも一人で行動することが当たり前になっていた。
誰かに頼る、なんて基本的に考えていなかった。
「みんなと一緒にいる大切さを知ったっていうのに、でも、肝心な時は一人でいて……学んでないな」
「ダメダメだね」
「……お前は、俺の心にトドメを刺しに来たのか?」
「あの大賢者をからかえる機会なんて滅多にないからねー、にひひ♪」
悪魔か?
「でも、意味なかったかな」
「え」
「だってもう、理解しているじゃん」
「それは……」
「なら、間違えることはないと思うよ。心配することもない。これからは、みんなで一緒にがんばればいいさ。致命的な失敗はしていない。ここからやり直すことはできる……そうだろう?」
「……ああ、その通りだな」
俺は苦笑して……
もう一度、夜空に輝く星を見上げるのだった。