「火炎槍<ファイアランス>!」
「雷撃槍<ライトニングランス!>」
「氷烈牙<フリーズストライク>!」

 俺とエリゼ。
 そして、アラム姉さんの魔法が炸裂して……

「紫電鞭<サンダーウィップ>!」
「はぁっ!」

 ローラ先生の雷の鞭と、アリーシャの剣が閃いた。

 一斉攻撃。
 これで倒せるなんて、そんな甘い期待はしていない。
 ただ、それなりのダメージを与えることが……

「……オォ、オ……」

 黒い霧は怯んでいるものの、しかし、決定的なダメージを受けている様子はない。
 変わらない様子で黒い手を生成して、こちらに伸ばしてくる。

 なんてタフなヤツなんだ。
 弱点はないのか?

「このっ……しつこい方は嫌われますわよ!?」
「お、お嬢様には手を出させません!」

 シャルロッテとフィアも魔法を放つ。
 雨あられと攻撃魔法が降り注ぐものの、黒い霧を消滅させることはできない。

 勢いを削ぐことはできているから、ノーダメージということはないだろう。
 ただ、致命的な打撃を与えることに成功していない。

 ヤツの弱点はなんだ?
 どこにある?

 それを見極めるために、戦いつつ、しっかりと黒い霧を観察する。

「双・紫電鞭<ダブル・サンダーウィップ>!」

 ローラ先生は両手に雷の鞭を作り出して、手数を二倍に増やした。

 なにそれ!?
 同じ魔法を同時に使うとか、初めてなんだけど!?

 ぜひ教えてもらいたい。
 そして、徹底的に研究したい!

「ばか。今は戦いに集中しなさい」
「ごもっとも……」

 アリーシャに怒られてしまった。

 ローラ先生の教示を得るためにも、どうにかして黒い霧を倒さないと。
 悩み、迷い、押しきれないでいると……

 ゴォッ!

 轟音が響いた。
 空気が震えて、坑道全体が揺れる。

 何事かと、音がした方……横を見ると、そこに大穴が空いていた。
 その先に太陽の光が見える。
 外と繋がっている?

 そして姿を見せたのは、

「やあやあ。なにやら大変そうにしているね?」
「メル!」

 メルがやってきた。
 一人ではなくて、武装した女性達が数人。
 援軍だろう。

「なにやら戦闘を始めたみたいだから、ボクも参戦しようと思ったんだけど……ふむ? なぜ、誘拐犯じゃなくて化け物と戦っているんだい?」
「ナイスタイミングだ! 後で説明するから、加勢を頼む!」
「オッケー」

 メルと、女性達が参戦。
 攻撃の手数がさらに増えて、少しずつ黒い霧が押されていく。

 本当なら、メルが空けた穴を使い、黒い霧を外に誘導して大規模魔法で……といきたいのだけど、失敗したら街に被害が出てしまうかもしれない。
 さすがにそんな賭けはできないので、ここで戦うしかない。

 戦いにくいのだけど……
 しかし、言い換えれば敵を閉じ込めているとも言える。

「待ってばかりでストレスだったから、一発、いかせてもらおうかな? 光爆<ライトインパルス>!」

 メルの手の平から光の奔流が放たれた。
 それは黒い霧を飲み込み、消滅させようとする。

 黒い霧は全身をうねらせて、手をいくつも生やして抵抗した。
 ただ、メルの魔法の方が上で、けっこうな勢いで押されているのが見てわかる。

「……ヤツの弱点は、光属性の魔法なのか?」

 外法によって生み出された魔物。
 そんな規格外の存在を目にして動揺していたのか、属性のことを考えるのを忘れていた。
 なんていう失態。

 でも、メルがいたから思い出すことができたわけで……

「……一人でできることって、ホント、限りがあるんだな」

 俺は苦笑するのだった。