「ォ……ォオ……!」
初めて黒い霧に動きが出た。
こちらの攻撃に反応したらしく、複数の手を作り、一斉に飛ばしてくる。
黒い手が洞窟の岩をかすめる。
すると、岩がぼろぼろと崩れ、砂となってしまう。
物を分解する能力?
いや……
崩れた砂が黒に染まっているところを見ると、物質に含まれている魔力が枯渇したようだ。
っていうことは……
あの黒い手は、対象の魔力を奪うことができる。
しかも急激に、命の危機を抱くほどに。
「みんな、あの黒い手には絶対に触れないように!」
「そ、そう言われても……わわわ!?」
「エリゼ!」
慌てるエリゼを、アリーシャが背中にかばう。
いつの間にか剣を取り戻していたらしく、一閃。
黒い手を切り裂いて、霧散させた。
物理は効く?
なら……
「これはどうだ、火炎槍<ファイアランス>!」
初級魔法ではあるが、それなりに魔力は込めている。
生み出された炎の槍は、黒い手を打ち砕いて、そのまま燃やし尽くした。
「よし、魔法も効くな」
「なら、わたくしの出番ですわ! 火炎槍<ファイアランス>! 雷撃槍<ライトニングランス>! 火炎嵐<ファイアストーム>!」
シャルロッテは、得意の遅延魔法で、三連撃。
炎と雷が駆け抜けて……
再び炎が舞い上がり、黒い霧を飲み込む。
「ヒ……ゥ、オオォ……」
怯んでいるように見えるが……
決定的なダメージは受けていない様子だ。
やはり初級魔法だと限界があるか。
かといって、坑道内で派手な魔法を放つと、崩落が発生して、生き埋めになってしまうかもしれない。
外に出て戦いたいところだけど……
しかし、そのためには目の前の黒い霧をなんとかしなければいけない。
なんていうジレンマ。
「紫電鞭<サンダーウィップ>!」
ローラ先生は雷で鞭を編み、それで黒い霧を打ち据えた。
バチィッ! と紫電が弾けて、襲いかかろうとしていた黒い霧の動きが封じられる。
魔力を武器の形にする魔法はよくあるが、鞭の形は珍しい。
どういう原理、仕組みなのだろうか?
うーん、興味深い。
後で教えてもらわないと。
「そのためにも、なんとかして外に出たいんだけど……」
「スティア―ト君、みなさんを連れて後退してください」
「え?」
「ここは、私がなんとかします。その間に、別の出口を探すか、あるいは、道を作って強引にここから脱出してください」
「それは……」
現状を考えると、ローラ先生の策が最適解かもしれない。
俺達が退くことで、ローラ先生は後ろを気にすることなく戦える。
また、脱出路を作ることで、後々、ローラ先生も脱出することができる。
ただそれは、ローラ先生が一人で耐える、という前提の上に成り立つものだ。
今のところ、黒い霧はそこまでの脅威ではない。
ただ、これが最大値ということはないだろう。
まだまだ力を隠しているような気がした。
そんな相手に一人で立ち向かうなんて無謀だ。
どれだけの力があったとしても、一人でできることなんて……
「って……んぅ?」
これ、なんていうか、えっと……
自分自身に対する特大のブーメランになるのでは?
みんなを巻き込みたくないと一人で行動して。
でも結局、巻き込んで。
しかも、今は協力することが必要になっている。
それなのに俺は……
ええいっ、今は考えるのは後回しだ!
「俺も残ります」
「スティア―ト君? でも、それは……」
「あんな化け物を一人で相手にするのは、さすがに危険ですよ。俺も一緒に戦います」
だから、エリゼ達は避難を……
そう言おうとしたのだけど、
「もちろん、私達も一緒です!」
「ええ、がんばらないとね」
「あたしの剣は、こういう時のためにあるの」
「ふふんっ、外法かなんだか知りませんが、わたくしの敵ではありませんわ!」
「が、がんばりまふっ!」
みんな、考えることは同じ。
困ったなあ、っていう感情よりも、素直に嬉しいという気持ちの方が勝る。
「……まったく、仕方ありませんね」
ローラ先生は苦笑した。
たぶん、俺と同じような気持ちになっているんだと思う。
一人よりは二人。
二人よりは三人。
たくさんの仲間がいると心強いものだ。
一人で戦うのではなくて。
全てを背負うのではなくて。
分け合い、支え合う。
そのことを、俺は、今回の生で学んだ。
「さて、化け物退治といこうか!」
初めて黒い霧に動きが出た。
こちらの攻撃に反応したらしく、複数の手を作り、一斉に飛ばしてくる。
黒い手が洞窟の岩をかすめる。
すると、岩がぼろぼろと崩れ、砂となってしまう。
物を分解する能力?
いや……
崩れた砂が黒に染まっているところを見ると、物質に含まれている魔力が枯渇したようだ。
っていうことは……
あの黒い手は、対象の魔力を奪うことができる。
しかも急激に、命の危機を抱くほどに。
「みんな、あの黒い手には絶対に触れないように!」
「そ、そう言われても……わわわ!?」
「エリゼ!」
慌てるエリゼを、アリーシャが背中にかばう。
いつの間にか剣を取り戻していたらしく、一閃。
黒い手を切り裂いて、霧散させた。
物理は効く?
なら……
「これはどうだ、火炎槍<ファイアランス>!」
初級魔法ではあるが、それなりに魔力は込めている。
生み出された炎の槍は、黒い手を打ち砕いて、そのまま燃やし尽くした。
「よし、魔法も効くな」
「なら、わたくしの出番ですわ! 火炎槍<ファイアランス>! 雷撃槍<ライトニングランス>! 火炎嵐<ファイアストーム>!」
シャルロッテは、得意の遅延魔法で、三連撃。
炎と雷が駆け抜けて……
再び炎が舞い上がり、黒い霧を飲み込む。
「ヒ……ゥ、オオォ……」
怯んでいるように見えるが……
決定的なダメージは受けていない様子だ。
やはり初級魔法だと限界があるか。
かといって、坑道内で派手な魔法を放つと、崩落が発生して、生き埋めになってしまうかもしれない。
外に出て戦いたいところだけど……
しかし、そのためには目の前の黒い霧をなんとかしなければいけない。
なんていうジレンマ。
「紫電鞭<サンダーウィップ>!」
ローラ先生は雷で鞭を編み、それで黒い霧を打ち据えた。
バチィッ! と紫電が弾けて、襲いかかろうとしていた黒い霧の動きが封じられる。
魔力を武器の形にする魔法はよくあるが、鞭の形は珍しい。
どういう原理、仕組みなのだろうか?
うーん、興味深い。
後で教えてもらわないと。
「そのためにも、なんとかして外に出たいんだけど……」
「スティア―ト君、みなさんを連れて後退してください」
「え?」
「ここは、私がなんとかします。その間に、別の出口を探すか、あるいは、道を作って強引にここから脱出してください」
「それは……」
現状を考えると、ローラ先生の策が最適解かもしれない。
俺達が退くことで、ローラ先生は後ろを気にすることなく戦える。
また、脱出路を作ることで、後々、ローラ先生も脱出することができる。
ただそれは、ローラ先生が一人で耐える、という前提の上に成り立つものだ。
今のところ、黒い霧はそこまでの脅威ではない。
ただ、これが最大値ということはないだろう。
まだまだ力を隠しているような気がした。
そんな相手に一人で立ち向かうなんて無謀だ。
どれだけの力があったとしても、一人でできることなんて……
「って……んぅ?」
これ、なんていうか、えっと……
自分自身に対する特大のブーメランになるのでは?
みんなを巻き込みたくないと一人で行動して。
でも結局、巻き込んで。
しかも、今は協力することが必要になっている。
それなのに俺は……
ええいっ、今は考えるのは後回しだ!
「俺も残ります」
「スティア―ト君? でも、それは……」
「あんな化け物を一人で相手にするのは、さすがに危険ですよ。俺も一緒に戦います」
だから、エリゼ達は避難を……
そう言おうとしたのだけど、
「もちろん、私達も一緒です!」
「ええ、がんばらないとね」
「あたしの剣は、こういう時のためにあるの」
「ふふんっ、外法かなんだか知りませんが、わたくしの敵ではありませんわ!」
「が、がんばりまふっ!」
みんな、考えることは同じ。
困ったなあ、っていう感情よりも、素直に嬉しいという気持ちの方が勝る。
「……まったく、仕方ありませんね」
ローラ先生は苦笑した。
たぶん、俺と同じような気持ちになっているんだと思う。
一人よりは二人。
二人よりは三人。
たくさんの仲間がいると心強いものだ。
一人で戦うのではなくて。
全てを背負うのではなくて。
分け合い、支え合う。
そのことを、俺は、今回の生で学んだ。
「さて、化け物退治といこうか!」