「ふむ」
宿に戻り、情報を整理する。
俺が得た情報。
そして、メルが得た情報。
二人の情報を交換して、照らし合わせて、話を進める。
「神隠しの被害者は、魔法学院の生徒で、学部は関係ない」
「ついでに、生徒個人の共通点もないね。平民もいれば貴族もいる。おとなしい子もいれば男勝りな子もいる。優秀な子もいれば劣等生もいる。交友関係もバラバラ」
「そうなると怨恨の線は薄い。脅迫が一度もないから、身代金目的の誘拐という可能性も少ない」
「愉快犯かな? あるいは、誘拐することが快楽に繋がる、特殊な犯人とか」
「もしくは……」
誘拐して酷いことをする。
なんて想像も出てきたものの、とてもおぞましく、口にはしないでおいた。
「……個人的な感想、というか勘だけど」
「どうぞ」
「犯人は、なにかしらの目的を抱えているような気がする」
根拠はない、本当にただの勘だ。
この事件、粘りつくような悪意を感じる。
それと、今まで度々感じてきた魔王の気配もする。
「今まで起きてきた事件……そのほとんどに魔王の気配を感じた。ヤツは俺のことを認知して、間接的な攻撃をしかけていると思う」
「直接的な行動に出ないのは、それができない理由がある?」
「まだ万全じゃないとか、転生のせいで悪影響が出ているとか……そんな感じかな。まあ、推測でしかないけどな」
「なるほど。でも、誘拐がレンにどんな影響を与えるんだい? レンを誘拐事件の犯人にして社会的に抹殺……なんて可能性はあるけど、それはちょっと回りくどすぎるよね」
「そういう可能性は捨てきれないけど、たぶん、違うよな。今回の目的は、俺を攻撃することじゃないと思う」
でも、魔王の関わりがないわけじゃない。
むしろ、魔王にとって、これはとても大事な計画のような気がした。
俺達は身を隠すことなく、堂々と行動している。
それなのに神隠しが続いているということは、この計画を途中でやめられない、ということ。
魔王にとって、それだけ大事なことなのだろう。
「ボクらなんてまったく気にしていない、っていう可能性もあるんじゃない?」
「そういう悲しいツッコミはやめてくれ」
メルの言う可能性もあるんだけど……
でも、それなら、そもそも魔王が俺にちょっかいをかけてこないはず。
俺を敵と認識しているからこそ、今まで色々な事件を引き起こしてきたはずだ。
あれだけのことをやらかしておいて、まったく興味がないということはないだろう。
それなりに脅威に感じているはず。
「敵の目的はわからないけど、絶対に止めないといけない。もちろん、被害者も助けないといけない」
「賛成。でも、手がかりがゼロに等しいのが頭が痛いところだよねー」
「それな」
現時点で判明していることは、被害者は全て魔法学院の生徒。
今のところ生死不明で、戻ってきた生徒は一人もいない。
……それだけだ。
「これが人の手による犯罪として」
メルが考える仕草を取りつつ、ゆっくりと言葉を並べていく。
「方法を考えるのはやめようか。なんか、時間をとられるだけで意味がないような気がするよ」
「だな。それは犯人を特定した後、ゆっくり調べればいい。それよりも、誘拐された生徒達がどこにいるか? っていうところを調べた方がいい」
「それについて、ちょっと思うところがあるんだよね」
メルはテーブルの上に地図を広げた。
この街と、その周辺が描かれたものだ。
「ここがレイドアロマ。で、その周辺がこんな感じ」
レイドアロマは山の麓に作られた街だ。
『コ』の字を描くように周囲が山に囲まれていて、南側だけが開けている。
周囲の山は鉱山として利用されていたが、今は資源が枯渇。
今も機能する鉱山は少なく、鉱山都市としての寿命は終わりだろう。
「あれこれ聞き込みをしてわかったんだけど、被害者って、みんな街の外に近いところで姿を消しているんだよね」
メルは地図のとある箇所を順々に指さしていく。
その全てが街の外側……あるいは、山に入ったところだ。
「人目のないところで犯行が行われている……いや、それだけじゃないか」
「うん。街の外の方が色々と都合がいいから、そこで誘拐をしているんじゃないかな、って思うんだよね」
「ということは、犯人の拠点は街の外……鉱山か?」
「ありえるね。今は使われていない鉱山を拠点にして活動する。鉱山は、人の手が入らなくなって長いから、危ないって理由で、基本、封鎖されている」
「怪しいといえば怪しいが……ふむ」
犯人が街の関係者か、あるいは部外者か、それはわからない。
鉱山を拠点に活動していると仮定して……
神隠しの頻度を考えると、活動はかなり活発だ。
拠点となる鉱山と街を行き来する回数は多いはず。
それなのに、街の人がまったく不審に思わないことがあるだろうか?
鉱山に出入りするところを誰にも目撃されないなんて、あるだろうか?
「どうしたんだい?」
「ふと思ったんだけど……」
ただの思いつきだ。
勘に等しい。
でも、勘は経験によって作られていくもの。
バカにしてはいけない。
「これ……犯人は、意外と身近なところにいるんじゃないか?」
宿に戻り、情報を整理する。
俺が得た情報。
そして、メルが得た情報。
二人の情報を交換して、照らし合わせて、話を進める。
「神隠しの被害者は、魔法学院の生徒で、学部は関係ない」
「ついでに、生徒個人の共通点もないね。平民もいれば貴族もいる。おとなしい子もいれば男勝りな子もいる。優秀な子もいれば劣等生もいる。交友関係もバラバラ」
「そうなると怨恨の線は薄い。脅迫が一度もないから、身代金目的の誘拐という可能性も少ない」
「愉快犯かな? あるいは、誘拐することが快楽に繋がる、特殊な犯人とか」
「もしくは……」
誘拐して酷いことをする。
なんて想像も出てきたものの、とてもおぞましく、口にはしないでおいた。
「……個人的な感想、というか勘だけど」
「どうぞ」
「犯人は、なにかしらの目的を抱えているような気がする」
根拠はない、本当にただの勘だ。
この事件、粘りつくような悪意を感じる。
それと、今まで度々感じてきた魔王の気配もする。
「今まで起きてきた事件……そのほとんどに魔王の気配を感じた。ヤツは俺のことを認知して、間接的な攻撃をしかけていると思う」
「直接的な行動に出ないのは、それができない理由がある?」
「まだ万全じゃないとか、転生のせいで悪影響が出ているとか……そんな感じかな。まあ、推測でしかないけどな」
「なるほど。でも、誘拐がレンにどんな影響を与えるんだい? レンを誘拐事件の犯人にして社会的に抹殺……なんて可能性はあるけど、それはちょっと回りくどすぎるよね」
「そういう可能性は捨てきれないけど、たぶん、違うよな。今回の目的は、俺を攻撃することじゃないと思う」
でも、魔王の関わりがないわけじゃない。
むしろ、魔王にとって、これはとても大事な計画のような気がした。
俺達は身を隠すことなく、堂々と行動している。
それなのに神隠しが続いているということは、この計画を途中でやめられない、ということ。
魔王にとって、それだけ大事なことなのだろう。
「ボクらなんてまったく気にしていない、っていう可能性もあるんじゃない?」
「そういう悲しいツッコミはやめてくれ」
メルの言う可能性もあるんだけど……
でも、それなら、そもそも魔王が俺にちょっかいをかけてこないはず。
俺を敵と認識しているからこそ、今まで色々な事件を引き起こしてきたはずだ。
あれだけのことをやらかしておいて、まったく興味がないということはないだろう。
それなりに脅威に感じているはず。
「敵の目的はわからないけど、絶対に止めないといけない。もちろん、被害者も助けないといけない」
「賛成。でも、手がかりがゼロに等しいのが頭が痛いところだよねー」
「それな」
現時点で判明していることは、被害者は全て魔法学院の生徒。
今のところ生死不明で、戻ってきた生徒は一人もいない。
……それだけだ。
「これが人の手による犯罪として」
メルが考える仕草を取りつつ、ゆっくりと言葉を並べていく。
「方法を考えるのはやめようか。なんか、時間をとられるだけで意味がないような気がするよ」
「だな。それは犯人を特定した後、ゆっくり調べればいい。それよりも、誘拐された生徒達がどこにいるか? っていうところを調べた方がいい」
「それについて、ちょっと思うところがあるんだよね」
メルはテーブルの上に地図を広げた。
この街と、その周辺が描かれたものだ。
「ここがレイドアロマ。で、その周辺がこんな感じ」
レイドアロマは山の麓に作られた街だ。
『コ』の字を描くように周囲が山に囲まれていて、南側だけが開けている。
周囲の山は鉱山として利用されていたが、今は資源が枯渇。
今も機能する鉱山は少なく、鉱山都市としての寿命は終わりだろう。
「あれこれ聞き込みをしてわかったんだけど、被害者って、みんな街の外に近いところで姿を消しているんだよね」
メルは地図のとある箇所を順々に指さしていく。
その全てが街の外側……あるいは、山に入ったところだ。
「人目のないところで犯行が行われている……いや、それだけじゃないか」
「うん。街の外の方が色々と都合がいいから、そこで誘拐をしているんじゃないかな、って思うんだよね」
「ということは、犯人の拠点は街の外……鉱山か?」
「ありえるね。今は使われていない鉱山を拠点にして活動する。鉱山は、人の手が入らなくなって長いから、危ないって理由で、基本、封鎖されている」
「怪しいといえば怪しいが……ふむ」
犯人が街の関係者か、あるいは部外者か、それはわからない。
鉱山を拠点に活動していると仮定して……
神隠しの頻度を考えると、活動はかなり活発だ。
拠点となる鉱山と街を行き来する回数は多いはず。
それなのに、街の人がまったく不審に思わないことがあるだろうか?
鉱山に出入りするところを誰にも目撃されないなんて、あるだろうか?
「どうしたんだい?」
「ふと思ったんだけど……」
ただの思いつきだ。
勘に等しい。
でも、勘は経験によって作られていくもの。
バカにしてはいけない。
「これ……犯人は、意外と身近なところにいるんじゃないか?」