「不審者?」
「そうそう。この街……レイドアロマで、今、不審者が現れているみたいだよ」
メル曰く……
レイドアロマは、かつては鉱山都市として栄えていた。
しかし鉱石が枯渇したことで都市は衰退。
今は辺境の田舎として、少ない人々がのんびりと暮らしている。
そんな田舎に、ある日、見知らぬ女性がやってきた。
人の少ない田舎だ。
外から人がやってくればすぐにわかる。
しかし、その女性は移住者ではない。
商売にやってきたわけでもなくて、街に数日滞在して、外へ。
しばらくしたらまた街にやってきて……ということを繰り返しているらしい。
「女性はいったいどんな人で、なんのためにこんな田舎までやってきているのか? って、ちょっとした謎になっているみたいだよ」
「魔王とか関係なく、思い切り不審者じゃないか、それ。通報されたりしないのか?」
「それがさー、わりと気のいい美人さんみたいでね? 何度も来るうちに街の人とも顔見知りになったらしく、みんな、大して気にしていないみたい」
「それ、不審者ってわけじゃないだろう」
言い方が悪い。
「ボクの方で気になった話はこれくらいかな」
「……ちなみに、その女性が現れたのはいつ頃なんだ?」
「えっと……3年くらい前だったかな?」
「15年以上前、っていうことは?」
「それはないね。長く住んでいるおじいさんおばあさんにも話を聞いたけど、そんな昔にはいなかった、って断言されたよ」
なら、祖母に干渉はしていないか。
街の人と仲良くなるくらいだから、魔王の関係者というわけでもなさそうだし……
「ハズレかな」
「だねえ」
そんなに簡単に魔王の情報を掴むことはできないと思っていたけれど、それでも落胆は大きい。
祖母の記憶が失われていたことも残念だ。
いや。
もしかしたら、それすらも魔王が……
「あれ?」
ふと、メルが怪訝そうに小首を傾げた。
「どうしたんだ?」
「いやー……今、ローラ先生を見かけたような気がして」
「ローラ先生を?」
「そこの角を曲がっていたように見えたんだけど、チラッと一瞬見えただけだから、なんとも言えないんだよね」
「……追いかけてみるか」
「らじゃー!」
メルが言う道を進んで、角を曲がり……
「えっ」
「ひゃ!?」
真正面から女性とぶつかってしまう。
俺は耐えることができたものの、相手は尻もちをついてしまった。
「す、すみません。大丈夫ですか?」
「いたたた……ええ、大丈夫よ。って……ストライン君?」
「え?」
背は低い方で、俺と同じくらい。
やや童顔のため、下手をしたら同い年にみられるかもしれない。
ただ、美人であることは間違いないため、街を歩けば、ついつい視線をやってしまう男性は多いだろう。
「って……ローラ先生?」
――――――――――
「まさか、こんなところで教え子と会うなんて」
「それは俺達の台詞ですよ」
ちょっとしたアクシデントはあったものの、ひとまずローラ先生と合流することができた。
せっかくなので話を、と思ったのだけど……
「ところで、ストライン君とティアーズさんは、どうしてこんなところに? 今日から1週間、あなた達が休むという連絡は受けているのだけど……もしかしてサボり? 若さ故のバカンスとロマンス?」
「なんですか、それ」
「いいね。それ、楽しそう」
「メルは、ローラ先生の話に乗らないでくれ……」
意外とローラ先生は茶目っ気が多いみたいだ。
「えっと……この近くで祖母がいるので、会いに来たんですよ。色々とあって、まとまった時間がないとなかなか会えないもので」
「ボクも同じようなものかな。ちょっとした縁があるんだ」
「そう……そういえば、ストライン君のお祖母さんは……」
祖母が起こした事件を知っているらしく、ローラ先生の顔が曇る。
俺は別に気にしていないと告げるように、努めて明るい声で言う。
「そういうローラ先生こそ、こんなところでどうしたんですか?」
「それは……」
ローラ先生は難しい顔に。
次いで、周囲を見回してカフェの様子を確認した。
「……まあ、二人になら話してもいいかしら? でも、他言無用よ」
「はい」
「うん」
なにやら重要な話みたいだ。
今回はメルも真面目に頷いていた。
「実は、この辺りで学院の生徒が行方不明になっているみたいなの」
「そうそう。この街……レイドアロマで、今、不審者が現れているみたいだよ」
メル曰く……
レイドアロマは、かつては鉱山都市として栄えていた。
しかし鉱石が枯渇したことで都市は衰退。
今は辺境の田舎として、少ない人々がのんびりと暮らしている。
そんな田舎に、ある日、見知らぬ女性がやってきた。
人の少ない田舎だ。
外から人がやってくればすぐにわかる。
しかし、その女性は移住者ではない。
商売にやってきたわけでもなくて、街に数日滞在して、外へ。
しばらくしたらまた街にやってきて……ということを繰り返しているらしい。
「女性はいったいどんな人で、なんのためにこんな田舎までやってきているのか? って、ちょっとした謎になっているみたいだよ」
「魔王とか関係なく、思い切り不審者じゃないか、それ。通報されたりしないのか?」
「それがさー、わりと気のいい美人さんみたいでね? 何度も来るうちに街の人とも顔見知りになったらしく、みんな、大して気にしていないみたい」
「それ、不審者ってわけじゃないだろう」
言い方が悪い。
「ボクの方で気になった話はこれくらいかな」
「……ちなみに、その女性が現れたのはいつ頃なんだ?」
「えっと……3年くらい前だったかな?」
「15年以上前、っていうことは?」
「それはないね。長く住んでいるおじいさんおばあさんにも話を聞いたけど、そんな昔にはいなかった、って断言されたよ」
なら、祖母に干渉はしていないか。
街の人と仲良くなるくらいだから、魔王の関係者というわけでもなさそうだし……
「ハズレかな」
「だねえ」
そんなに簡単に魔王の情報を掴むことはできないと思っていたけれど、それでも落胆は大きい。
祖母の記憶が失われていたことも残念だ。
いや。
もしかしたら、それすらも魔王が……
「あれ?」
ふと、メルが怪訝そうに小首を傾げた。
「どうしたんだ?」
「いやー……今、ローラ先生を見かけたような気がして」
「ローラ先生を?」
「そこの角を曲がっていたように見えたんだけど、チラッと一瞬見えただけだから、なんとも言えないんだよね」
「……追いかけてみるか」
「らじゃー!」
メルが言う道を進んで、角を曲がり……
「えっ」
「ひゃ!?」
真正面から女性とぶつかってしまう。
俺は耐えることができたものの、相手は尻もちをついてしまった。
「す、すみません。大丈夫ですか?」
「いたたた……ええ、大丈夫よ。って……ストライン君?」
「え?」
背は低い方で、俺と同じくらい。
やや童顔のため、下手をしたら同い年にみられるかもしれない。
ただ、美人であることは間違いないため、街を歩けば、ついつい視線をやってしまう男性は多いだろう。
「って……ローラ先生?」
――――――――――
「まさか、こんなところで教え子と会うなんて」
「それは俺達の台詞ですよ」
ちょっとしたアクシデントはあったものの、ひとまずローラ先生と合流することができた。
せっかくなので話を、と思ったのだけど……
「ところで、ストライン君とティアーズさんは、どうしてこんなところに? 今日から1週間、あなた達が休むという連絡は受けているのだけど……もしかしてサボり? 若さ故のバカンスとロマンス?」
「なんですか、それ」
「いいね。それ、楽しそう」
「メルは、ローラ先生の話に乗らないでくれ……」
意外とローラ先生は茶目っ気が多いみたいだ。
「えっと……この近くで祖母がいるので、会いに来たんですよ。色々とあって、まとまった時間がないとなかなか会えないもので」
「ボクも同じようなものかな。ちょっとした縁があるんだ」
「そう……そういえば、ストライン君のお祖母さんは……」
祖母が起こした事件を知っているらしく、ローラ先生の顔が曇る。
俺は別に気にしていないと告げるように、努めて明るい声で言う。
「そういうローラ先生こそ、こんなところでどうしたんですか?」
「それは……」
ローラ先生は難しい顔に。
次いで、周囲を見回してカフェの様子を確認した。
「……まあ、二人になら話してもいいかしら? でも、他言無用よ」
「はい」
「うん」
なにやら重要な話みたいだ。
今回はメルも真面目に頷いていた。
「実は、この辺りで学院の生徒が行方不明になっているみたいなの」