事件を起こした後、紆余曲折を経て、マーテリアは辺境の屋敷で軟禁されることになった。
俺は事件の関係者で、しかも家族だ。
面会が許されていることは事前に確認済み。
なにか情報を得られるかもしれないと、まずはマーテリア本人から改めて話を聞くことにしたのだけど……
「……久しぶりだねえ、レン。このようなことを言える立場でないことはわかっているのだけど、会えて嬉しいよ」
「そう、ですね……俺も、ちょっとは嬉しいです」
屋敷を訪問して、マーテリアとの面会が叶う。
久しぶりに姿を見た祖母は、とても老けていた。
10年くらいの月日が過ぎたかのようだ。
ただ……
代わりといってはなんだけど、とても穏やかな表情になっていた。
優しく、温和で……
気のいいおばあちゃん、という感じだ。
俺の前では絶対に見せなかった顔。
下手をしたら、エリゼやアラム姉さんの前でも見せていないだろう。
そんな表情を見られるのは、なんだかとても複雑だった。
「……レン」
「はい」
「すまなかったねえ……」
いきなり頭を下げられてしまう。
しかも、机に額がつくほどに低く低く。
「お、お祖母様!?」
「今更、謝っても許してもらえるなんて思っていない……それでも、謝罪だけはさせてほしい。受け入れてくれなくてもいい……すまなかった」
ひたすらに頭を下げるマーテリアからは、まっすぐな想いが伝わってきた。
本当に悪いことをしたと思っているのだろう。
以前のマーテリアからは考えられない姿だけど……
でも俺は、『今』を信じてみようと思う。
「頭を上げてください」
「……許してくれるのかい?」
「いいえ」
「そう、だよね……」
「許すもなにも、とっくに気にしていません」
「っ……!? レン、あんたっていう子は……うっ、くぅ」
マーテリアは……いや。
お祖母様は、ぽろぽろと涙をこぼした。
本当に変わったんだな。
いや、元に戻ったというべきか。
たぶん、これが本来のお祖母様の姿なのだろう。
それが『なにか』によって歪められていた。
……おそらくは、魔王。
「お祖母様。今日は謝罪を求めに来たわけじゃなくて、ちょっと聞きたいことがあるんです」
「話……かい?」
「ええ。なんていうか、えっと……」
――――――――――
祖母との面会が終わり、屋敷の外に出た。
魔王のことはぼかして、祖母になにが起きたか、過去から現在に至るまでの道筋を聞いてきたのだけど……
誰かが、度々、祖母に接触していたらしい。
その『誰か』は祖母の記憶に残っていない。
思い出そうとしても、そこの記憶だけすっぽりと抜け落ちているみたいだ。
今までの状況や経緯を考えると魔王の可能性が高い。
「女性……か」
唯一、祖母はその人が女性ということを覚えていた。
「そこそこの手がかりだけど、でも、これだけじゃ、まだなんともできないか」
「やっ、面会は終わったかい?」
少し歩いたところでメルと合流した。
「情報は?」
「あまり大したことは」
祖母との話で得た情報をメルと共有した。
「ふむ。ちょくちょくやってきた謎の女性か」
「怪しいけれど、でも、まるで情報が残っていない。わかるのは、女性、っていうことだけだ」
「魔王かな?」
「なんとも」
関係があるのは間違いないだろう。
ただ、本人か協力者なのか、そこは調べてみないとわからない。
「メルの方は、なにか情報は?」
俺が祖母と面会している間、メルはメルで独自に情報を集めていたはずだ。
メルは不敵に笑う。
「ふっふっふ。聞きたいかな?」
「いや、別に」
「え!?」
「さて、次の場所へ行くか」
「待ってくれよぉ、ボクががんばって集めた情報なんだよぉ。それをスルーなんて、あまりにもあまりじゃないかぁ」
なら、もったいぶらないでくれ。
俺の腰にしがみついてくるメルを見て、ため息をこぼしてしまうのだった。
俺は事件の関係者で、しかも家族だ。
面会が許されていることは事前に確認済み。
なにか情報を得られるかもしれないと、まずはマーテリア本人から改めて話を聞くことにしたのだけど……
「……久しぶりだねえ、レン。このようなことを言える立場でないことはわかっているのだけど、会えて嬉しいよ」
「そう、ですね……俺も、ちょっとは嬉しいです」
屋敷を訪問して、マーテリアとの面会が叶う。
久しぶりに姿を見た祖母は、とても老けていた。
10年くらいの月日が過ぎたかのようだ。
ただ……
代わりといってはなんだけど、とても穏やかな表情になっていた。
優しく、温和で……
気のいいおばあちゃん、という感じだ。
俺の前では絶対に見せなかった顔。
下手をしたら、エリゼやアラム姉さんの前でも見せていないだろう。
そんな表情を見られるのは、なんだかとても複雑だった。
「……レン」
「はい」
「すまなかったねえ……」
いきなり頭を下げられてしまう。
しかも、机に額がつくほどに低く低く。
「お、お祖母様!?」
「今更、謝っても許してもらえるなんて思っていない……それでも、謝罪だけはさせてほしい。受け入れてくれなくてもいい……すまなかった」
ひたすらに頭を下げるマーテリアからは、まっすぐな想いが伝わってきた。
本当に悪いことをしたと思っているのだろう。
以前のマーテリアからは考えられない姿だけど……
でも俺は、『今』を信じてみようと思う。
「頭を上げてください」
「……許してくれるのかい?」
「いいえ」
「そう、だよね……」
「許すもなにも、とっくに気にしていません」
「っ……!? レン、あんたっていう子は……うっ、くぅ」
マーテリアは……いや。
お祖母様は、ぽろぽろと涙をこぼした。
本当に変わったんだな。
いや、元に戻ったというべきか。
たぶん、これが本来のお祖母様の姿なのだろう。
それが『なにか』によって歪められていた。
……おそらくは、魔王。
「お祖母様。今日は謝罪を求めに来たわけじゃなくて、ちょっと聞きたいことがあるんです」
「話……かい?」
「ええ。なんていうか、えっと……」
――――――――――
祖母との面会が終わり、屋敷の外に出た。
魔王のことはぼかして、祖母になにが起きたか、過去から現在に至るまでの道筋を聞いてきたのだけど……
誰かが、度々、祖母に接触していたらしい。
その『誰か』は祖母の記憶に残っていない。
思い出そうとしても、そこの記憶だけすっぽりと抜け落ちているみたいだ。
今までの状況や経緯を考えると魔王の可能性が高い。
「女性……か」
唯一、祖母はその人が女性ということを覚えていた。
「そこそこの手がかりだけど、でも、これだけじゃ、まだなんともできないか」
「やっ、面会は終わったかい?」
少し歩いたところでメルと合流した。
「情報は?」
「あまり大したことは」
祖母との話で得た情報をメルと共有した。
「ふむ。ちょくちょくやってきた謎の女性か」
「怪しいけれど、でも、まるで情報が残っていない。わかるのは、女性、っていうことだけだ」
「魔王かな?」
「なんとも」
関係があるのは間違いないだろう。
ただ、本人か協力者なのか、そこは調べてみないとわからない。
「メルの方は、なにか情報は?」
俺が祖母と面会している間、メルはメルで独自に情報を集めていたはずだ。
メルは不敵に笑う。
「ふっふっふ。聞きたいかな?」
「いや、別に」
「え!?」
「さて、次の場所へ行くか」
「待ってくれよぉ、ボクががんばって集めた情報なんだよぉ。それをスルーなんて、あまりにもあまりじゃないかぁ」
なら、もったいぶらないでくれ。
俺の腰にしがみついてくるメルを見て、ため息をこぼしてしまうのだった。