閲覧時間ギリギリまで粘り、色々な禁書に目を通して……
その後、名残惜しさを覚えつつ禁忌図書館を後にした。
「くっ、残念だ……」
禁忌図書館は知識の宝庫だ。
一ヶ月……いや。一週間だけでも籠もることができれば、かなりレベルアップできると思う。
とはいえ、そんな権限はないし、シャルロッテの力を借りても許可は下りないだろう。
今日の一日だけでも、わりと無茶をしてくれたらしいし、これ以上、迷惑をかけることはできない。
「図書館、楽しかったですね」
「そうね。知らないことがたくさん本に書かれていて、とても勉強になったわ」
「す、すごく貴重な経験をしちゃいましたね」
「でも、貴重な本を読むだけではなくて、普通の本も読んで勉強することも大事よ?」
「わたくし、機会があれば、もう一度行きたいですわ」
寮に戻り、エリゼ達は、ラウンジでにこにこと今日の経験を語る。
「メルさんはどんな本を読んでいたんですか?」
エリゼがメルに話を振る。
けっこう困った性格をしているメルではあるが、社交性は高い。
いつの間にかエリゼ達と仲良くなったみたいだ。
「ボクが読んでいた本、知りたい?」
「はい、教えてください」
「ふっふっふー、それはね……えっちな大人の本」
「ふぇ!?」
「裸の男と女が、あーんなことやこーんなことをする本だよん♪」
「ど、ドキドキ……」
「そ、それはどういう物語だったんでしょうか!?」
「あれ? フィアちゃん、興味あるの?」
「そ、そそそ、それは!? えと、その、後学のために……決して興味本位ではなくて!」
「あ、あたしだけ仲間外れにしないでくれる?」
「おやおや、アリーシャちゃんまで」
「な、仲間外れにされるのがイヤなだけよ。勘違いしないで」
「あ、あたしにも教えてくれないかしら? へ、変なことは考えていないわよ?」
「ふっふっふ、アラムさんも好きですなあ」
「わたくしにも教えてくださる! ものすごく興味がありますわ!」
「ものすごいストレートだ!」
メルがニヤリと笑う。
対するみんなは赤くなる。
「ふふーん、みんな清楚に見えてムッツリだねぇ。うんうん、ボク、そういうのきらいじゃないよ。それじゃあ、ボクが見た本の話をあいたぁ!?」
悪ふざけがすぎるメルの頭を、かなり本気で叩いた。
けっこう痛かったらしく涙目だ。
「なにするのさー!」
「メルこそなにしてんだ。人の妹と姉と友達に変なことを吹き込まないでくれ」
「お兄ちゃん、これは男女のお付き合いに関する勉強……恋愛講座です! だから、変なことなんかじゃありませんっ」
「そんなわけあるか。というか、エリゼに恋愛なんてまだ早い!」
妙なところでませているな、まったく。
妹が彼氏を連れてくるとか……うん。
想像しただけで、ものすごく嫌な感じになったぞ。
「……ねえ、アラムさん。もしかして、レンってシスコンなのですわ?」
「……かもしれないわね」
聞こえているからな。
「まあ、冗談はさておき……レン。後で二人きりで話せるかい?」
「ああ、わかった」
真面目な顔をしていたので、たぶん、真面目な話なのだろう。
……だよな?
今の流れから、ついついメルを疑ってしまう俺だった。
――――――――――
深夜、俺はそっと部屋の外に出た。
それから、約束の場所である屋上へ移動する。
「やあ、早かったね」
屋上に出ると、メルが柵に寄りかかっていた。
こちらを見て、軽く手を上げて挨拶をする。
「話っていうのは?」
「せっかちだね。夜の逢瀬なんだから、ロマンチックな言葉の一つや二つ、欲しいな」
「帰るぞ?」
「やれやれ」
メルの手招きに応じて隣に移動した。
「情報を共有しておこうと思って。あれから記憶した情報を整理していたんだけど、ちょっと見過ごせない情報を見つけたんだ」
「……聞こうか」
「魔王は可愛い女の子」
ゴンッ!
「痛い……女の子を叩くなんて、酷いと思わないかい?」
「くだらないことを言うからだ」
「いやいや、これ、本当のことだよ? 魔王は魔法を使うから、性別は女の子。間違いないね」
「まあ、それはそうかもしれないが……それが重要な情報なのか?」
「本番はこれからさ」
メルは笑顔を引っ込めて、難しい表情を作る。
「今までの話を整理すると、魔王はこの時代に転生している。でも、正体は不明。だけど、ちょくちょくレンに絡んできている」
「そうだな」
「不思議に思ったんだ。魔王がレンを敵視するのは当然だけど、なら、どうして自分で手を下そうとしない? 間接的な妨害ばかりで、嫌がらせみたい。なにがしたいのか、よくわからないんだよね」
「まだ力が完全に戻っていないから、時間稼ぎをしているんじゃないか? あわよくば俺を、とか考えているのかも」
「うん、その可能性が高いと思う。だから、魔王が完全に力を取り戻す前に見つけ出して、倒さないといけない」
「とはいえ、どこにいるのやら……」
「それなんだけど、ちょっと思いついたんだよね」
メルは真面目な顔をして続ける。
「案外、魔王は身近にいるんじゃないかな?」
その後、名残惜しさを覚えつつ禁忌図書館を後にした。
「くっ、残念だ……」
禁忌図書館は知識の宝庫だ。
一ヶ月……いや。一週間だけでも籠もることができれば、かなりレベルアップできると思う。
とはいえ、そんな権限はないし、シャルロッテの力を借りても許可は下りないだろう。
今日の一日だけでも、わりと無茶をしてくれたらしいし、これ以上、迷惑をかけることはできない。
「図書館、楽しかったですね」
「そうね。知らないことがたくさん本に書かれていて、とても勉強になったわ」
「す、すごく貴重な経験をしちゃいましたね」
「でも、貴重な本を読むだけではなくて、普通の本も読んで勉強することも大事よ?」
「わたくし、機会があれば、もう一度行きたいですわ」
寮に戻り、エリゼ達は、ラウンジでにこにこと今日の経験を語る。
「メルさんはどんな本を読んでいたんですか?」
エリゼがメルに話を振る。
けっこう困った性格をしているメルではあるが、社交性は高い。
いつの間にかエリゼ達と仲良くなったみたいだ。
「ボクが読んでいた本、知りたい?」
「はい、教えてください」
「ふっふっふー、それはね……えっちな大人の本」
「ふぇ!?」
「裸の男と女が、あーんなことやこーんなことをする本だよん♪」
「ど、ドキドキ……」
「そ、それはどういう物語だったんでしょうか!?」
「あれ? フィアちゃん、興味あるの?」
「そ、そそそ、それは!? えと、その、後学のために……決して興味本位ではなくて!」
「あ、あたしだけ仲間外れにしないでくれる?」
「おやおや、アリーシャちゃんまで」
「な、仲間外れにされるのがイヤなだけよ。勘違いしないで」
「あ、あたしにも教えてくれないかしら? へ、変なことは考えていないわよ?」
「ふっふっふ、アラムさんも好きですなあ」
「わたくしにも教えてくださる! ものすごく興味がありますわ!」
「ものすごいストレートだ!」
メルがニヤリと笑う。
対するみんなは赤くなる。
「ふふーん、みんな清楚に見えてムッツリだねぇ。うんうん、ボク、そういうのきらいじゃないよ。それじゃあ、ボクが見た本の話をあいたぁ!?」
悪ふざけがすぎるメルの頭を、かなり本気で叩いた。
けっこう痛かったらしく涙目だ。
「なにするのさー!」
「メルこそなにしてんだ。人の妹と姉と友達に変なことを吹き込まないでくれ」
「お兄ちゃん、これは男女のお付き合いに関する勉強……恋愛講座です! だから、変なことなんかじゃありませんっ」
「そんなわけあるか。というか、エリゼに恋愛なんてまだ早い!」
妙なところでませているな、まったく。
妹が彼氏を連れてくるとか……うん。
想像しただけで、ものすごく嫌な感じになったぞ。
「……ねえ、アラムさん。もしかして、レンってシスコンなのですわ?」
「……かもしれないわね」
聞こえているからな。
「まあ、冗談はさておき……レン。後で二人きりで話せるかい?」
「ああ、わかった」
真面目な顔をしていたので、たぶん、真面目な話なのだろう。
……だよな?
今の流れから、ついついメルを疑ってしまう俺だった。
――――――――――
深夜、俺はそっと部屋の外に出た。
それから、約束の場所である屋上へ移動する。
「やあ、早かったね」
屋上に出ると、メルが柵に寄りかかっていた。
こちらを見て、軽く手を上げて挨拶をする。
「話っていうのは?」
「せっかちだね。夜の逢瀬なんだから、ロマンチックな言葉の一つや二つ、欲しいな」
「帰るぞ?」
「やれやれ」
メルの手招きに応じて隣に移動した。
「情報を共有しておこうと思って。あれから記憶した情報を整理していたんだけど、ちょっと見過ごせない情報を見つけたんだ」
「……聞こうか」
「魔王は可愛い女の子」
ゴンッ!
「痛い……女の子を叩くなんて、酷いと思わないかい?」
「くだらないことを言うからだ」
「いやいや、これ、本当のことだよ? 魔王は魔法を使うから、性別は女の子。間違いないね」
「まあ、それはそうかもしれないが……それが重要な情報なのか?」
「本番はこれからさ」
メルは笑顔を引っ込めて、難しい表情を作る。
「今までの話を整理すると、魔王はこの時代に転生している。でも、正体は不明。だけど、ちょくちょくレンに絡んできている」
「そうだな」
「不思議に思ったんだ。魔王がレンを敵視するのは当然だけど、なら、どうして自分で手を下そうとしない? 間接的な妨害ばかりで、嫌がらせみたい。なにがしたいのか、よくわからないんだよね」
「まだ力が完全に戻っていないから、時間稼ぎをしているんじゃないか? あわよくば俺を、とか考えているのかも」
「うん、その可能性が高いと思う。だから、魔王が完全に力を取り戻す前に見つけ出して、倒さないといけない」
「とはいえ、どこにいるのやら……」
「それなんだけど、ちょっと思いついたんだよね」
メルは真面目な顔をして続ける。
「案外、魔王は身近にいるんじゃないかな?」