「んーっ、よく寝たな」
「そうですわね。たまには、こういうのも悪くないかもしれませんわ」

 目が覚めると陽が傾いていた。
 変わったデートだったけれど、これはこれで悪くないと思う。

「さてと……それじゃあ、そろそろ寮に帰ろうか」

 明日からは、また授業が始まる。
 授業の準備をしないといけない。

 禁忌図書館は、また明日にしよう。
 すぐに許可が降りるものではないだろうし……
 どちらにしても、こんな時間に開いているものではないだろう。

「ねえ、レン」
「うん?」
「帰る前に、ちょっと話がしたいのだけど」
「話? 禁忌図書館のこと?」
「それは明日するわ。大丈夫、ちゃんと約束は守るもの」
「そっか、ありがと」
「わたくしがしたいのは、もっと別の話ですわ」

 ぐいっと、シャルロッテが距離をつめてきた。

 顔が目の前にある。
 ちょっとしたことで触れてしまいそうだ。

「しゃ、シャルロッテ……?」
「……」

 じっとこちらを見た後、シャルロッテは、一歩後ろに下がる。

「うん。やはり、間違いないですわ」
「えっと……なんのことだ?」
「ここに宣言いたしますわ!」

 こちらの話を聞かず、シャルロッテはびしっと指さしてきた。
 そのまま鋭い表情で……
 やや頬を染めて、言い放つ。

「レン・ストライン。あなたを、わたくしのものにしてみせますわ!」
「……は?」

 予想外の展開すぎて、思わず間の抜けた声がこぼれてしまう。

 今、なんて?

「ど、どういう意味だ……?」
「つまり」

 シャルロッテは、ニヤリといたずらを企む子供のように笑い、

「わたくしは、あなたのことが好き、ということですわ♪」
「……」

 今度こそ言葉を失う。

 シャルロッテは……本気だろう。
 こんな冗談は言わない。
 それに、赤くなっている頬などが本気の証でもある。

 いや、うん。
 こんな展開になるなんて、いくらなんでも予想できないから。

「本気……なんだよな?」
「もちろんですわ。わたくしの気持ちを疑いになって?」
「いや、そんなことはないんだけど……」

 あー、もう!
 うまく言葉が出てこない。

 仕方ないだろう?
 こんな経験、前世を含めて初めてなんだ。
 未知の経験。
 どう対処すればいいか、まったくわからないわけで……

 はぁ。
 前世で大賢者と呼ばれていた俺は、なんて情けない。

「えっと、俺は……」
「あ、返事はいりませんわ」
「えぇ!?」
「だって、今のレンは『よくわからない』って顔をしていますもの」

 俺、そんな顔をしているのか……?

「だからたぶん、断られるオチになってしまいますわ」

 よく俺のことを見ているな……

「なので、まずは好意を告げておくだけにしておきますわ。いわば、これは宣戦布告!」
「宣戦布告?」
「そう。いずれ、レンの方からわたくしに告白させてみせますわ」
「すごい自信だな」
「ふふん、わたしくには、それだけの魅力がありますもの!」

 ほんと、すごい子だ。
 確かに魅力がある。

 俺が恋愛に疎くなくて……
 魔王の問題がなければ、シャルロッテの告白を受け入れていたかもしれないな。

「シャルロッテ」
「なにかしら?」
「お前、いい女だな」
「もちろんよ♪」