シャルロッテと一緒に舞台を観た。
そして……一緒に寝た。
シャルロッテが舞台を退屈って言った意味、よく理解できた。
あれは眠くなる。
舞台が好きな人にとってはたまらないのだろうけど、俺達は、魔法の方が興味ある学生なんだよな。
あまり高尚な趣味にはついていけない。
「んんんーーーっ、よく寝ましたわ!」
シャルロッテが大きく伸びをして、よく通る声で言う。
ただ、劇場の前でそんなことを言うのはやめてくれ。
周囲の視線が痛い。
「これからどうする? 家に帰るか?」
「え? まだ昼前じゃない。せっかく街に出たのだから、もっともっと色々と楽しみましょう」
「んー……まあ、それもそうだな」
たまの休日。
体を休めても罰は当たらないだろう。
「なにをしようか?」
「それを女の子に尋ねるのですか? まったく……レンは魔法の腕はすごいけれど、レディのエスコートはまだまだみたいですわね」
ほっとけ。
「じゃあ……そろそろいい時間だから、なにか食べに行かないか?」
「ええ、賛成ですわ。それで、どこへ連れて行ってくれるのかしら?」
「え? まさか俺のおごりなのか?」
「うそよ」
デートなんだから男が払って当然……と言われると思っていたのだけど、そんなことはなくて、シャルロッテはいたずらに成功した子供のように顔を輝かせた。
「誕生日とか特別な日は、甘えてもいいかしら? とは思いますけどね。ですが、普通の日までそんなことは求めていませんわ。対等であることが、良い関係を長続きさせるコツなのですわ」
「シャルロッテって、恋人がいたことあるのか?」
「ないですわ。どうして?」
「まるで経験してきたかのように言うから」
「父様と母様を見ての経験よ。二人は全然対等じゃなかったから……もしも、対等になっていたら、今と違う結果になっていたのかしら?」
最後は誰に向けるともわからない問いかけになっていた。
なんだかんだで、シャルロッテも父親のことを多少は気にしているのかもしれない。
それも仕方ないとは思う。
強気なところが目立ったとしても、シャルロッテはまだ学生だ。
自立するには早いし、まだまだ両親の愛情を受けたいと思うだろう。
こうしてデートをすると、普段と違う一面を見ることができる。
女の子に対してどぎまぎするのとは違い……妙な感じで胸が少しだけドキドキした。
――――――――――
「はむっ」
シャルロッテは小さな口をいっぱいに開いて、ホットドッグを口にした。
次の瞬間、キラキラと笑顔が輝く。
ホットドッグの屋台を見つけて昼が決定した。
これでいいのか? と思わないでもないが、シャルロッテは喜んでいるみたいだ。
「んーーーっ、おいしいですわ♪」
「意外だな。お嬢様なんだから、こういう庶民の食べ物には興味ないと思ってた」
「逆ですわ、逆。今まで食べたことがないからこそ、気になるのですわ。わたくし、食わず嫌いはしないの」
「なるほどね」
デートの昼食にホットドッグはどうかと思うが……
まあ、シャルロッテが喜んでいるみたいだから、それでよしとしよう。
「次はどうしましょうか?」
「特に希望がないなら、俺に任せてくれないか」
「あら、ようやくエスコートをしてくれる気に?」
「満足してもらえるかわからないけどな」
「そこは、絶対に満足させてみせる、って言いなさいよ」
「こういうのは苦手なんだよ……」
「ふふんっ、わたくしは苦手じゃないわ。よって、このデート勝負はあたしの勝ちね!」
いつの間に勝負になったんだ。
シャルロッテは、いつでもどんな時でも変わらないよな。
我を貫き続けるというか、ブレることがない。
こんな性格をしているから、今まで、色々とトラブルはあっただろうに。
それでも己の道をまっすぐに進み続けている。
それはとてもすごいことのように思えて、この時だけは、シャルロッテがキラキラと輝いているように見えた。
「じゃあ、行こうか」
「楽しみにしていますわ」
シャルロッテを連れて、露店が並んでいた広場を離れる。
そのまま繁華街を通り抜けて、民家が立ち並ぶ住宅街へ。
その一角にある、広い公園に到着した。
「いいところって、ここの公園のこと? 見たところ、特に何もないけれど……まさか、この歳になって遊具で遊べと?」
「違うよ」
さすがにそれは俺も遠慮したい。
「こっちだ」
「わっ」
シャルロッテの手を引いて、公園の奥へ。
芝生が広がっていて、温かい陽光が降り注いでいた。
俺は芝生の上にごろんと転がる。
そのまま仰向けに寝た。
「んーっ、気持ちいい」
「ちょっと、どうしたの? 眠いのですの?」
不思議そうにするシャルロッテに手招きをする。
えー……という顔をしていたけれど、仕方なくという様子でシャルロッテが隣に座る。
ためらうような間を置いた後、えいやっ、と寝る。
「ん? ……おっ、おぉ……?」
妙な声をあげて……
それから、シャルロッテは猫のような感じで、気持ちよさそうに目を細くした。
「なにこれ……すごいぽかぽか。温かくて気持ちいいですわ」
「だろう?」
「ここ……レンの秘密スポットなの?」
「そういうわけじゃないさ。今日は天気もいいし、公園でこんな風に寝たら気持ちいいだろうな、って思っただけ。いつも来てるわけじゃない」
「なるほど……ふぁ、ホント、気持ちいいですわ」
「食べた後は眠くなるからな。それもあって、余計に心地いいんだろう」
「あっ……やばいですわ、本気で眠く……こんなところで。でも、気持ちいい……はふぅ」
お嬢さまのプライドと睡眠欲が激突して……
睡眠欲が勝ったらしく、ほどなくしてシャルロッテは小さな寝息をこぼし始めた。
気持ちよさそうに寝ているよなあ……
でも、どこか品があって……
「……俺も眠くなってきた」
すやすやと昼寝をするシャルロッテを見ていたら、うとうとしてきた。
寝るのは生物として普通のこと。
自然の摂理に逆らうことなく、俺はまぶたを閉じた。
そして……一緒に寝た。
シャルロッテが舞台を退屈って言った意味、よく理解できた。
あれは眠くなる。
舞台が好きな人にとってはたまらないのだろうけど、俺達は、魔法の方が興味ある学生なんだよな。
あまり高尚な趣味にはついていけない。
「んんんーーーっ、よく寝ましたわ!」
シャルロッテが大きく伸びをして、よく通る声で言う。
ただ、劇場の前でそんなことを言うのはやめてくれ。
周囲の視線が痛い。
「これからどうする? 家に帰るか?」
「え? まだ昼前じゃない。せっかく街に出たのだから、もっともっと色々と楽しみましょう」
「んー……まあ、それもそうだな」
たまの休日。
体を休めても罰は当たらないだろう。
「なにをしようか?」
「それを女の子に尋ねるのですか? まったく……レンは魔法の腕はすごいけれど、レディのエスコートはまだまだみたいですわね」
ほっとけ。
「じゃあ……そろそろいい時間だから、なにか食べに行かないか?」
「ええ、賛成ですわ。それで、どこへ連れて行ってくれるのかしら?」
「え? まさか俺のおごりなのか?」
「うそよ」
デートなんだから男が払って当然……と言われると思っていたのだけど、そんなことはなくて、シャルロッテはいたずらに成功した子供のように顔を輝かせた。
「誕生日とか特別な日は、甘えてもいいかしら? とは思いますけどね。ですが、普通の日までそんなことは求めていませんわ。対等であることが、良い関係を長続きさせるコツなのですわ」
「シャルロッテって、恋人がいたことあるのか?」
「ないですわ。どうして?」
「まるで経験してきたかのように言うから」
「父様と母様を見ての経験よ。二人は全然対等じゃなかったから……もしも、対等になっていたら、今と違う結果になっていたのかしら?」
最後は誰に向けるともわからない問いかけになっていた。
なんだかんだで、シャルロッテも父親のことを多少は気にしているのかもしれない。
それも仕方ないとは思う。
強気なところが目立ったとしても、シャルロッテはまだ学生だ。
自立するには早いし、まだまだ両親の愛情を受けたいと思うだろう。
こうしてデートをすると、普段と違う一面を見ることができる。
女の子に対してどぎまぎするのとは違い……妙な感じで胸が少しだけドキドキした。
――――――――――
「はむっ」
シャルロッテは小さな口をいっぱいに開いて、ホットドッグを口にした。
次の瞬間、キラキラと笑顔が輝く。
ホットドッグの屋台を見つけて昼が決定した。
これでいいのか? と思わないでもないが、シャルロッテは喜んでいるみたいだ。
「んーーーっ、おいしいですわ♪」
「意外だな。お嬢様なんだから、こういう庶民の食べ物には興味ないと思ってた」
「逆ですわ、逆。今まで食べたことがないからこそ、気になるのですわ。わたくし、食わず嫌いはしないの」
「なるほどね」
デートの昼食にホットドッグはどうかと思うが……
まあ、シャルロッテが喜んでいるみたいだから、それでよしとしよう。
「次はどうしましょうか?」
「特に希望がないなら、俺に任せてくれないか」
「あら、ようやくエスコートをしてくれる気に?」
「満足してもらえるかわからないけどな」
「そこは、絶対に満足させてみせる、って言いなさいよ」
「こういうのは苦手なんだよ……」
「ふふんっ、わたくしは苦手じゃないわ。よって、このデート勝負はあたしの勝ちね!」
いつの間に勝負になったんだ。
シャルロッテは、いつでもどんな時でも変わらないよな。
我を貫き続けるというか、ブレることがない。
こんな性格をしているから、今まで、色々とトラブルはあっただろうに。
それでも己の道をまっすぐに進み続けている。
それはとてもすごいことのように思えて、この時だけは、シャルロッテがキラキラと輝いているように見えた。
「じゃあ、行こうか」
「楽しみにしていますわ」
シャルロッテを連れて、露店が並んでいた広場を離れる。
そのまま繁華街を通り抜けて、民家が立ち並ぶ住宅街へ。
その一角にある、広い公園に到着した。
「いいところって、ここの公園のこと? 見たところ、特に何もないけれど……まさか、この歳になって遊具で遊べと?」
「違うよ」
さすがにそれは俺も遠慮したい。
「こっちだ」
「わっ」
シャルロッテの手を引いて、公園の奥へ。
芝生が広がっていて、温かい陽光が降り注いでいた。
俺は芝生の上にごろんと転がる。
そのまま仰向けに寝た。
「んーっ、気持ちいい」
「ちょっと、どうしたの? 眠いのですの?」
不思議そうにするシャルロッテに手招きをする。
えー……という顔をしていたけれど、仕方なくという様子でシャルロッテが隣に座る。
ためらうような間を置いた後、えいやっ、と寝る。
「ん? ……おっ、おぉ……?」
妙な声をあげて……
それから、シャルロッテは猫のような感じで、気持ちよさそうに目を細くした。
「なにこれ……すごいぽかぽか。温かくて気持ちいいですわ」
「だろう?」
「ここ……レンの秘密スポットなの?」
「そういうわけじゃないさ。今日は天気もいいし、公園でこんな風に寝たら気持ちいいだろうな、って思っただけ。いつも来てるわけじゃない」
「なるほど……ふぁ、ホント、気持ちいいですわ」
「食べた後は眠くなるからな。それもあって、余計に心地いいんだろう」
「あっ……やばいですわ、本気で眠く……こんなところで。でも、気持ちいい……はふぅ」
お嬢さまのプライドと睡眠欲が激突して……
睡眠欲が勝ったらしく、ほどなくしてシャルロッテは小さな寝息をこぼし始めた。
気持ちよさそうに寝ているよなあ……
でも、どこか品があって……
「……俺も眠くなってきた」
すやすやと昼寝をするシャルロッテを見ていたら、うとうとしてきた。
寝るのは生物として普通のこと。
自然の摂理に逆らうことなく、俺はまぶたを閉じた。