「なっ……」
メルが転生者!?
動揺を隠すことができず、目を大きくしてしまう。
そんな俺を見て、メルがくすくすと笑う。
「ふふ、驚いてくれた? なら、このタイミングで明かした甲斐があったかな」
「それは……本当なのか?」
「こんなウソはつかないよ。本当だって。とはいえ、それを証明する術は持っていないけどね」
俺も、転生した証拠なんてものはない。
ただ、それに似たものを示すことはできるはずだ。
「いくつか質問をさせてもらうぞ?」
「どうぞ」
「じゃあ……」
俺は500年前の知識、常識などを尋ねた。
その全てに、メルは迷うことなく答えた。
全て正解だ。
「どうかな?」
「……少なくとも、他の人と違うっていうことはわかったな」
誰も知らないような500年前のことを知っている。
その点だけを見ても、メルが特異な存在であることは間違いない。
でも、俺と同じ転生者ということを信じるかどうか……
なかなか微妙なところだ。
転生魔法は、前世の俺がかなり苦労して開発した魔法だ。
自惚れるつもりはないのだけど……
他の人に、あの魔法を使えるほどの力があったとは思えない。
メルの言葉が本当なら、どうやって転生したのだろう?
「色々と聞きたいことはあると思うけど、まずはボクの話を聞いてくれないかな? その後に、質問を受け付けるから」
「……わかった、話を聞こう」
「ありがと」
メルがにっこりと笑う。
その笑顔だけ見ると、可愛い女の子だけど……
でも、実際は、わりとくえない性格をしている。
可愛い女の子だけど、中身は大人というか。
見た目と心が一致していないというか。
転生の影響なのだろうか?
まあ、その点については、俺も人のことは言えないのだけど。
「ボクは、レンと同じ転生者だよ。ただ、同じ時期に転生したわけじゃないんだ。レンが転生魔法を使用した50年後……つまり、450年前くらいに転生したんだ」
「なるほど」
50年のタイムラグがあったということか。
それなら、メルが転生魔法を使うことができたのも納得だ。
それだけの年月があれば、俺が残した魔法を解析して、己のものにすることができるだろう。
「ボクの目的は……ちょっと大げさな言葉になっちゃうけど、人類という種の存続」
「本当に大げさだな。どういう意味だ?」
「未来に賭けて転生をすることで、過去の災厄から逃れた……っていうところかな」
「災厄?」
「簡単に言うと……450年前に、一度、世界は滅びたんだ」
「なっ!?」
予想の遥か斜め上を行くことを告げられて、言葉をなくしてしまう。
世界が滅びた?
そんなバカなことが……
そうだとしたら、なぜ、俺達はここに存在している?
あれこれと考えて、でも、答えを見つけることができなくて。
情報過多になってしまい、混乱してしまう。
そんな俺が落ち着くだけの時間を置いた後、メルは言葉を続ける。
「正確に言うと、滅びかけた……かな? ごめんね、ちょっとまぎらわしい言い方だったよね」
「……続きを」
「450年前……正確に言うと、445年くらい前なんだけど、まあ、そこはいいとして。その日、魔王が残した負の遺産が目覚めたんだ」
「負の遺産?」
「ボク達は、魔王の下僕……魔族、って呼んでいたよ」
「……魔族……」
魔物と似た存在なのだろうか?
いや。
似ているのは名前だけで、中身は別物なのだろう。
メルの表情を見れば、とんでもなく厄介な存在だということがわかる。
「魔族は人を遥かに超えた力を持っていて、しかも、魔法を使う。その上、数はとんでもなく多い。魔物と同じように、見境なく他の生き物に……特に人間に襲いかかる。もっと簡単に言うと、それぞれの個体がドラゴンと同じか、それ以上の力を持っていたよ。それが、イナゴのように発生」
「それは……」
とんでもない地獄だろう。
俺がその場にいたとしても、対処できたかどうか……
いや、無理だな。
一体ずつ倒していくことなら、十分に可能だろう。
ただ、イナゴほどの数がいるとなれば話は別だ。
数で押されてしまうかもしれない。
なんとかなったとしても、一箇所を守ることが精一杯で、他が襲われていたらどうしようもない。
「魔族は、ほどなくして魔王が関わっている、ってわかったよ。魔王の残しもの。ボク達人間を根絶やしにするためのシステム、っていうところかな?」
「なんで、そんなことが……?」
「理由はボクもわからないよ。ただ、魔王は、徹底的に人間を敵視しているよ。それこそ、憎んでいる、って言ってもいいくらいに」
「……」
それは俺も感じていた。
前世で、魔王を追いかけて、戦った時。
今世で、何度か魔王の影響を感じた時。
途方も知れない、濃厚な悪意を感じた。
「魔族の出現で、当時の人類は大混乱に陥った。じわじわと腐食が進むように、魔族の侵攻が進んで、次々と国が消えていった。たくさんの人が命を落とした。老若男女、関係なく……ね」
「……酷いな」
それくらいしか言うことができない。
「ある日、人類は団結して、最後の大攻勢に出ることになったんだけど……でも、それとは別に、種を存続させる方法も模索されていた。それが、レンが残した転生魔法」
未来に賭けて転生をする。
転生ならば『個』が消滅することはなく、記憶を引き継ぐことができる。
新しい世界で新しい人生をやり直すがことができる。
ただ、それは賭けだ。
魔族に荒らされた世界で人類は生き延びられるのか?
絶滅しなかったといても、文明レベルは大きく後退するだろう。
転生したことでさらなる絶望を味わうかもしれない。
それでも、メルは未来に賭けて転生をした。
450年前は絶望しかなくて……
まだ、見知らぬ未来の方がマシだと思えたから。
そうして、メルは現代に生まれ変わり……
今に至る。
「なるほど……結局、450年前の世界はどうなったんだ?」
「滅んだよ」
わりとあっさりと、しかし、どこか悔しそうにメルは断言するのだった。
メルが転生者!?
動揺を隠すことができず、目を大きくしてしまう。
そんな俺を見て、メルがくすくすと笑う。
「ふふ、驚いてくれた? なら、このタイミングで明かした甲斐があったかな」
「それは……本当なのか?」
「こんなウソはつかないよ。本当だって。とはいえ、それを証明する術は持っていないけどね」
俺も、転生した証拠なんてものはない。
ただ、それに似たものを示すことはできるはずだ。
「いくつか質問をさせてもらうぞ?」
「どうぞ」
「じゃあ……」
俺は500年前の知識、常識などを尋ねた。
その全てに、メルは迷うことなく答えた。
全て正解だ。
「どうかな?」
「……少なくとも、他の人と違うっていうことはわかったな」
誰も知らないような500年前のことを知っている。
その点だけを見ても、メルが特異な存在であることは間違いない。
でも、俺と同じ転生者ということを信じるかどうか……
なかなか微妙なところだ。
転生魔法は、前世の俺がかなり苦労して開発した魔法だ。
自惚れるつもりはないのだけど……
他の人に、あの魔法を使えるほどの力があったとは思えない。
メルの言葉が本当なら、どうやって転生したのだろう?
「色々と聞きたいことはあると思うけど、まずはボクの話を聞いてくれないかな? その後に、質問を受け付けるから」
「……わかった、話を聞こう」
「ありがと」
メルがにっこりと笑う。
その笑顔だけ見ると、可愛い女の子だけど……
でも、実際は、わりとくえない性格をしている。
可愛い女の子だけど、中身は大人というか。
見た目と心が一致していないというか。
転生の影響なのだろうか?
まあ、その点については、俺も人のことは言えないのだけど。
「ボクは、レンと同じ転生者だよ。ただ、同じ時期に転生したわけじゃないんだ。レンが転生魔法を使用した50年後……つまり、450年前くらいに転生したんだ」
「なるほど」
50年のタイムラグがあったということか。
それなら、メルが転生魔法を使うことができたのも納得だ。
それだけの年月があれば、俺が残した魔法を解析して、己のものにすることができるだろう。
「ボクの目的は……ちょっと大げさな言葉になっちゃうけど、人類という種の存続」
「本当に大げさだな。どういう意味だ?」
「未来に賭けて転生をすることで、過去の災厄から逃れた……っていうところかな」
「災厄?」
「簡単に言うと……450年前に、一度、世界は滅びたんだ」
「なっ!?」
予想の遥か斜め上を行くことを告げられて、言葉をなくしてしまう。
世界が滅びた?
そんなバカなことが……
そうだとしたら、なぜ、俺達はここに存在している?
あれこれと考えて、でも、答えを見つけることができなくて。
情報過多になってしまい、混乱してしまう。
そんな俺が落ち着くだけの時間を置いた後、メルは言葉を続ける。
「正確に言うと、滅びかけた……かな? ごめんね、ちょっとまぎらわしい言い方だったよね」
「……続きを」
「450年前……正確に言うと、445年くらい前なんだけど、まあ、そこはいいとして。その日、魔王が残した負の遺産が目覚めたんだ」
「負の遺産?」
「ボク達は、魔王の下僕……魔族、って呼んでいたよ」
「……魔族……」
魔物と似た存在なのだろうか?
いや。
似ているのは名前だけで、中身は別物なのだろう。
メルの表情を見れば、とんでもなく厄介な存在だということがわかる。
「魔族は人を遥かに超えた力を持っていて、しかも、魔法を使う。その上、数はとんでもなく多い。魔物と同じように、見境なく他の生き物に……特に人間に襲いかかる。もっと簡単に言うと、それぞれの個体がドラゴンと同じか、それ以上の力を持っていたよ。それが、イナゴのように発生」
「それは……」
とんでもない地獄だろう。
俺がその場にいたとしても、対処できたかどうか……
いや、無理だな。
一体ずつ倒していくことなら、十分に可能だろう。
ただ、イナゴほどの数がいるとなれば話は別だ。
数で押されてしまうかもしれない。
なんとかなったとしても、一箇所を守ることが精一杯で、他が襲われていたらどうしようもない。
「魔族は、ほどなくして魔王が関わっている、ってわかったよ。魔王の残しもの。ボク達人間を根絶やしにするためのシステム、っていうところかな?」
「なんで、そんなことが……?」
「理由はボクもわからないよ。ただ、魔王は、徹底的に人間を敵視しているよ。それこそ、憎んでいる、って言ってもいいくらいに」
「……」
それは俺も感じていた。
前世で、魔王を追いかけて、戦った時。
今世で、何度か魔王の影響を感じた時。
途方も知れない、濃厚な悪意を感じた。
「魔族の出現で、当時の人類は大混乱に陥った。じわじわと腐食が進むように、魔族の侵攻が進んで、次々と国が消えていった。たくさんの人が命を落とした。老若男女、関係なく……ね」
「……酷いな」
それくらいしか言うことができない。
「ある日、人類は団結して、最後の大攻勢に出ることになったんだけど……でも、それとは別に、種を存続させる方法も模索されていた。それが、レンが残した転生魔法」
未来に賭けて転生をする。
転生ならば『個』が消滅することはなく、記憶を引き継ぐことができる。
新しい世界で新しい人生をやり直すがことができる。
ただ、それは賭けだ。
魔族に荒らされた世界で人類は生き延びられるのか?
絶滅しなかったといても、文明レベルは大きく後退するだろう。
転生したことでさらなる絶望を味わうかもしれない。
それでも、メルは未来に賭けて転生をした。
450年前は絶望しかなくて……
まだ、見知らぬ未来の方がマシだと思えたから。
そうして、メルは現代に生まれ変わり……
今に至る。
「なるほど……結局、450年前の世界はどうなったんだ?」
「滅んだよ」
わりとあっさりと、しかし、どこか悔しそうにメルは断言するのだった。