夜。
明日は決勝戦が控えている。
早く寝て万全の体勢で挑みたい。
ただ……
「やっぱり、なにかあるとしたら今夜だよな」
連日、学院のあちらこちらに仕掛けられている魔法陣。
今までのパターンを考えると、犯人は今夜も動くはず。
合間を見て魔法陣を解析していていたのだけど……
あれは、周囲の人々の魔力を吸収する性質があることが判明した。
地震はあくまでも副作用だ。
どうも、魔法陣は完璧なものではないらしい。
欠陥品だ。
魔力を全て吸収することはできず、一部が外に漏れてしまう。
結果、漏れた魔力が大地に作用して地震を引き起こしてしまう……と。
「魔法陣の効果は突き止めたものの……結局、犯人とその目的はわからないままなんだよな」
ただ、犯人が明日という日を待ち望みにしていることは推測できた。
明日は、魔法大会の決勝戦。
今まで以上に外から人がやってくるだろう。
魔力を吸い上げるとしたら絶好の機会だ。
「そんなことになる前に、どうにかして止めたいけど……」
当日、魔法陣を仕掛けている余裕はないはず。
犯人は、今夜、学院に忍び込むと思う。
そこを捕まえたいのが、俺一人でとうにかなるか。
「弱気になっていても仕方ないか」
どうにかなるか、ではなくて、どうにかするのだ。
そう決意して部屋の外に出て、
「お兄ちゃん?」
さっそくエリゼに見つかってしまった。
「どうしたんですか、こんな遅くに?」
「えっと……ちょっと喉が乾いたから、なにか買ってこようかな、って」
「食堂はもう閉まってますよ?」
「う」
「じー」
やばい。
妹が疑いの眼差しを向けてくる。
なんとかごまかさないと……
「あら、エリゼにレンじゃない。どうしたの?」
「まだ起きていたの? 早く寝ないとダメよ。レンは、明日決勝戦なんだから」
「もしかして、緊張していますの? ふふ、可愛らしいところもあるのですわね」
「えっと、えっと……飴、舐めますか? 落ち着きますよ?」
どこからともなくみんなも姿を見せた。
狙ってやっていないよな……?
そう疑いたくなるほど、とてもとても悪いタイミングだ。
「お兄ちゃん? なにか隠していませんか?」
「えっと……ちょっと散歩に」
「言ってることが変わりました。本当ですか?」
「ほ、本当だよ」
「じー」
「「「じー」」」
みんなもジト目を向けてくる。
ダメだ。
これはもう、ごまかすことができない。
俺は観念して事情を説明した。
「……と、いうことなんだ」
「そんなことが起きていたなんて……レン!」
アラム姉さんが厳しい顔になる。
それはそうだよな。
こんな隠し事をされていたら怒るのも当然だ。
「どうして、私達を頼ってくれないの?」
あれ?
なんか、思っていたのと違う怒られ方になっているような……?
「そんな大変なこと、一人で処理するのは難しいでしょう?」
「え? まあ、はい。たまに、複数の魔法陣が設置されている時もあったから、大変と言えば大変ですね」
「なら、私達を頼りなさい。一人でなんでも背負おうとしないように」
「でも、それは……」
「レンは優しいから、私達の心配をしてくれているんでしょう? その優しさは嬉しいけど、でも、寂しいの。ね?」
アラム姉さんがエリゼを見る。
エリゼは、激しく同意といった感じで、こくこくと頷いた。
「お兄ちゃんは優しいですけど、でもでも、たまに優しすぎるんです。もうちょっと、頼りにしてほしいです。お兄ちゃんが私達のことを心配してくれるように、私達もお兄ちゃんのことが心配なんです」
「……エリゼ……」
「あたしは、レンの力になりたいわ。困っているのなら助けたい。そう思うのは当たり前のことでしょう?」
「……アリーシャ……」
「レンには色々と助けてもらったから、恩を返さないと、って思いますが……でも、そういうのは関係なく力になりたいですわ。だって、わたくし達は友達でしょう?」
「……シャルロッテ……」
「わたしは、その、大したことはできませんけど……でもでも、がんばりたいです! レン君のために」
「……フィア……」
なんていうか。
俺、バカだった。
エル師匠から大事なことを教えてもらったはずなのに。
でも、理解したつもりになっていただけ。
本質をまだまだ理解できていない。
うん、そうだな。
危険だからと遠ざけるだけが優しさじゃない。
本当の友達なら、時に、危険だとしても頼りにしなければいけないのかもしれない。
一人で成し遂げられることなんて、たかがしれているのだから。
「みんな……手伝ってもらえるかな?」
「「「もちろん」」」
みんなは笑顔で頷いてくれた。
明日は決勝戦が控えている。
早く寝て万全の体勢で挑みたい。
ただ……
「やっぱり、なにかあるとしたら今夜だよな」
連日、学院のあちらこちらに仕掛けられている魔法陣。
今までのパターンを考えると、犯人は今夜も動くはず。
合間を見て魔法陣を解析していていたのだけど……
あれは、周囲の人々の魔力を吸収する性質があることが判明した。
地震はあくまでも副作用だ。
どうも、魔法陣は完璧なものではないらしい。
欠陥品だ。
魔力を全て吸収することはできず、一部が外に漏れてしまう。
結果、漏れた魔力が大地に作用して地震を引き起こしてしまう……と。
「魔法陣の効果は突き止めたものの……結局、犯人とその目的はわからないままなんだよな」
ただ、犯人が明日という日を待ち望みにしていることは推測できた。
明日は、魔法大会の決勝戦。
今まで以上に外から人がやってくるだろう。
魔力を吸い上げるとしたら絶好の機会だ。
「そんなことになる前に、どうにかして止めたいけど……」
当日、魔法陣を仕掛けている余裕はないはず。
犯人は、今夜、学院に忍び込むと思う。
そこを捕まえたいのが、俺一人でとうにかなるか。
「弱気になっていても仕方ないか」
どうにかなるか、ではなくて、どうにかするのだ。
そう決意して部屋の外に出て、
「お兄ちゃん?」
さっそくエリゼに見つかってしまった。
「どうしたんですか、こんな遅くに?」
「えっと……ちょっと喉が乾いたから、なにか買ってこようかな、って」
「食堂はもう閉まってますよ?」
「う」
「じー」
やばい。
妹が疑いの眼差しを向けてくる。
なんとかごまかさないと……
「あら、エリゼにレンじゃない。どうしたの?」
「まだ起きていたの? 早く寝ないとダメよ。レンは、明日決勝戦なんだから」
「もしかして、緊張していますの? ふふ、可愛らしいところもあるのですわね」
「えっと、えっと……飴、舐めますか? 落ち着きますよ?」
どこからともなくみんなも姿を見せた。
狙ってやっていないよな……?
そう疑いたくなるほど、とてもとても悪いタイミングだ。
「お兄ちゃん? なにか隠していませんか?」
「えっと……ちょっと散歩に」
「言ってることが変わりました。本当ですか?」
「ほ、本当だよ」
「じー」
「「「じー」」」
みんなもジト目を向けてくる。
ダメだ。
これはもう、ごまかすことができない。
俺は観念して事情を説明した。
「……と、いうことなんだ」
「そんなことが起きていたなんて……レン!」
アラム姉さんが厳しい顔になる。
それはそうだよな。
こんな隠し事をされていたら怒るのも当然だ。
「どうして、私達を頼ってくれないの?」
あれ?
なんか、思っていたのと違う怒られ方になっているような……?
「そんな大変なこと、一人で処理するのは難しいでしょう?」
「え? まあ、はい。たまに、複数の魔法陣が設置されている時もあったから、大変と言えば大変ですね」
「なら、私達を頼りなさい。一人でなんでも背負おうとしないように」
「でも、それは……」
「レンは優しいから、私達の心配をしてくれているんでしょう? その優しさは嬉しいけど、でも、寂しいの。ね?」
アラム姉さんがエリゼを見る。
エリゼは、激しく同意といった感じで、こくこくと頷いた。
「お兄ちゃんは優しいですけど、でもでも、たまに優しすぎるんです。もうちょっと、頼りにしてほしいです。お兄ちゃんが私達のことを心配してくれるように、私達もお兄ちゃんのことが心配なんです」
「……エリゼ……」
「あたしは、レンの力になりたいわ。困っているのなら助けたい。そう思うのは当たり前のことでしょう?」
「……アリーシャ……」
「レンには色々と助けてもらったから、恩を返さないと、って思いますが……でも、そういうのは関係なく力になりたいですわ。だって、わたくし達は友達でしょう?」
「……シャルロッテ……」
「わたしは、その、大したことはできませんけど……でもでも、がんばりたいです! レン君のために」
「……フィア……」
なんていうか。
俺、バカだった。
エル師匠から大事なことを教えてもらったはずなのに。
でも、理解したつもりになっていただけ。
本質をまだまだ理解できていない。
うん、そうだな。
危険だからと遠ざけるだけが優しさじゃない。
本当の友達なら、時に、危険だとしても頼りにしなければいけないのかもしれない。
一人で成し遂げられることなんて、たかがしれているのだから。
「みんな……手伝ってもらえるかな?」
「「「もちろん」」」
みんなは笑顔で頷いてくれた。