ちょっとした騒動はあったものの、露店巡りは続く。

「なにかしら、あれ?」

 ふと、アリーシャが怪訝そうに言う。

 なにやら紫色のテントが設置されていた。
 よく見てみると、『占い』の二文字が見えた。

「占い屋みたいだな」
「「「占い!」」」

 女性陣が顔をキラキラと輝かせた。
 ものすごく食いついている。

「私、占いやってみたいです!」
「あたしとレンの相性を……」
「やっぱり、ここは定番の恋愛占いかしら?」
「ふふん。わたくしならば、きっと最高の結果になることは間違いないですわ!」
「き、期待したらダメですけど、ちょ、ちょっとくらいなら……」

 どうして、女性はこんなに占いが好きなんだろう?
 転生して色々なことを学んできたつもりだけど、これは未だにわからない。

「えっと……覗いていく?」
「「「もちろん!」」」

 全会一致だった。



――――――――――



「中はけっこう広いですわね」
「そ、それに雰囲気もありますね」

 さっそくテントに入る。
 この人数が押しかけても問題ないくらい広い。
 それと、天井の辺りがキラキラと輝いていた。
 なにかの魔法だろうか?
 ものすごく気になる。

「ようこそ、星の館へ……ここは、あなたの天命を知ることができる場所」

 それらしい格好をした生徒が、それらしいことを口にする。
 雰囲気作りはバッチリだ。

「さあ、来訪者よ。どのような天命に触れることを望みますか?」
「私の運勢を占ってほしいです」
「とある人との相性を」
「恋愛の占いね」
「家のことを占ってほしいですわ」
「えっと、えっと……こ、恋占いで」
「あの……そんなに一度に言われても」

 みんなにものすごく食い気味に答えられて、生徒が素に戻っていた。
 咳払いを一つして、再び雰囲気を作る。

「では、一人ずつ順に……その天命に触れることを許可しましょう」

 最初はエリゼ。
 次はアリーシャ……といった感じで、順々に、さらにテントの奥に案内されていく。

 一人、5分くらい。
 満足のいく結果を得られたのか、戻ってきたみんなは笑顔だった。

「では、最後の方、どうぞ」
「え? いや、俺は……」

 みんなを待っていただけで、占いを待っていわけじゃない。

 ただ……そうだな。
 せっかくだから占ってもらおうか。
 ここまで来て帰るっていうのも相手に失礼だ。

「じゃあ、頼むよ」
「はい。こちらへどうぞ」

 奥に案内されると、小さなテーブルの上に水晶玉が置かれていた。
 こちらも雰囲気はバッチリだ。

「あなたはどのような天命を求めますか?」

 なにを占ってほしい、ってことだろうな。

「えっと……ちょっとやりたいことがあるんだけど、それについて」
「それは、夢ですか?」
「夢じゃないな。なんていうか……使命? いや、大げさか。乗り越えたい壁があって、それに挑んでいる……が、一番近い表現かな?」
「なるほど。では、占いましょう」

 占い師に扮した生徒の手が光る。
 たぶん、魔法だろう。

 占い魔法なんて、まったく聞いたことがないけど……
 オリジナルだろうか?
 ぜひ、後で話を聞いてみたい。

「……えっ!? な、なにこれ……」

 生徒が素に戻った様子で驚いていた。

「どうかした?」
「なに、この嫌な感じは……未来が真っ黒に塗りつぶされている。ものすごい悪意……」

 もしかして……魔王のことか?

「酷い、こんな天命は……あ。でも、全てが悪いわけじゃない? 小さな光が六つ……ううん、本人を含めて七つ。まだ手遅れじゃない? ここから逆転することも可能? だとしたら……」

 ぶつぶつと呟く。
 その表情があまりにも真剣で、こちらが心配になってしまう。

「大丈夫か?」
「え? ……あ、うん。大丈夫」

 水晶玉の光が消えた。
 同時に、生徒も落ち着きを取り戻す。

「えっと、占いの結果だけど……」
「うん」
「その……ものすごく悪いことになりそう」
「そっか……」
「で、でも、諦めないで! よくわからなかったけど、希望はあるの。それもすぐ近くに。絆を紡いで、それを大事にすればいいと思う」

 絆……か。
 そういえば、エル師匠も似たようなことを言っていたな。

「ありがとう、参考になったよ」

 ただのお祭りの占いと思いきや、けっこう確信を射ていたような気がする。

 がんばろう。
 俺は改めて決意を固めて、テントを後にした。