第二試合の相手はシャルロッテだった。
身内戦が連続すると、どんな運命のいたずらだ、と神様をちょっと恨みたくなってしまう。
でも、これはこれで楽しそうだ、なんて思う俺は俺で問題かもしれない。
「ふふんっ、今日のわたくしはついていますわ!」
訓練場で向き合うシャルロッテは得意そうな笑みを浮かべていた。
「なんで、ついているんだ?」
「レン、あなたと戦うことができるからよ!」
「えっと……話が見えてこないんだけど」
「わたくしは、元々、優勝はあまり気にしていないので。ただ、レンと戦い、そして勝つ。それを一番の目標にしてきたのですわ」
「そう……なのか? もしかして、前に負けたことを気にしている?」
「さらっと人の傷に触れないでくれません!?」
シャルロッテが頬を膨らませて、拗ねるように怒った。
やっぱりあれは、あまり触れられたくないことらしい。
「あなたはすごい人。それと、男だけどしっかりした人。それはわかっているのですが……わたくしにもプライドがありますわ。負けたままではいられません」
「なるほど。ならこれはリベンジマッチ、っていうわけか」
「ええ、その通りですわ」
「そういうのは嫌いじゃない」
俺は笑う。
シャルロッテも不敵に笑う。
互いに睨みつけて……
「開始!」
審判の合図で同時に前に出た。
そして魔法を発動。
「火炎槍<ファイアランス>!」
「氷烈牙<フリーズストライク>!」
互いの魔法が激突して、打ち消し合う。
俺の方は初級魔法だったのだけど、魔力量と属性の相性のおかげで、なんとか互角のところに持ち込めたようだ。
「雷撃槍<サンダーランス>!」
シャルロッテはさらに魔法を放ち、
「閃光爆炎陣<フラッシュインパクト>!」
「竜哮波<ドラグーンハウリング>!」
「乱撃炎撃<マルチフレア>!」
さらに、立て続けに中級魔法を唱えてきた。
「ちょっ!?」
あまりにも詠唱が早すぎないか!?
俺の倍以上……いや、その上をいっている。
反撃は無理だ。
防御も難しい。
あえて受け止める、という手もあるけど……
シャルロッテがなんの対策もしていないとは考えづらいので、それはやめておこう。
回避に専念した。
跳んで、転がり、再び跳ぶ。
いくらかかすったものの、直撃は避けることができた。
「なんだよ、そのデタラメな詠唱速度は……!?」
「ふふんっ、素直に教えてさしあげると思って?」
不敵に笑いつつ、さらにシャルロッテは魔法を次々と放つ。
もはや連射だ。
魔法の嵐が吹き荒れて、どんどんこちらの魔力が削られてしまう。
まだ余裕はあるけど……
これが続いたら、ちょっとまずいかもしれないな。
シャルロッテは、おそらく初手から切り札を切っている。
それが、この異常なまでの詠唱速度の早さだろう。
いったい、どんな手を使っているんだ?
俺は防御と回避に専念して、シャルロッテの切り札を解明することに専念した。
上級魔法などで力任せの反撃に出てもいいのだけど……
ただ、今は彼女が使う力、技術に興味がある。
それを解き明かしたい、という欲求を抑えることができない。
これ、俺の悪い癖だな。
自嘲しつつ、戦闘を続ける。
「ふふ、逃げてばかりでは勝てませんわよ?」
「くっ……」
自分の優位を確信するシャルロッテは、立て続けに魔法を放つ。
って……ちょっとまてよ?
彼女、ちゃんとした詠唱をしていないのでは?
詠唱らしきものはしているが、ほんの一言。
本来、魔法を放つために必要な詠唱を丸々省いているような気がした。
戦いの最中だから、きちんと確認することはできない。
見間違えという可能性もあるけど……
……いや。
なるほど、そういうことか。
「これで終わりですの? わたくしの切り札の前に手も足も出ないなんて、それはそれで、ちょっとがっかりですわね。レンは、もっとやれると思っていたのですが」
思っていた通り、よくわからないタイミングでシャルロッテは挑発めいたことを言う。
それはただの挑発ではなくて、彼女にとって必要なことなのだ。
「もっとやれるさ」
「え?」
「シャルロッテの切り札、わかったよ」
「なっ……で、デタラメですわ。そのようなことは……」
「遅延魔法」
「っ……!?」
シャルロッテの顔色が青くなる。
「あらかじめ魔法を唱えておいて、でも、それを発動することなく、矢のようにしてストックしておく。そして任意のタイミングで、ストックしておいた魔法を一瞬で発動することができる。そんな魔法理論があることを、どこかの本で見たんだけど……完成させていたんだな」
「……まさか、こうも早く見抜かれるなんて」
正解のようだ。
シャルロッテは苦い顔をしつつ、でも、楽しそうだった。
「さすがレンですわね。下手をしたら見抜かれるかもしれないと思っていましたが、まさか、こんなに早いとは思っていませんでしたわ」
「ありがとう」
「ですが……わたくしの切り札を見抜いたからといって、すぐに攻略法は思いつかないはず! このまま押し切らせてもらいますわ!」
今の会話の間に充填は完了したらしい。
連続で魔法を放とうとするけど……
「加速<アクセル>!」
瞬間的な移動を可能とする魔法を使い、シャルロッテの懐に潜り込む。
「なっ……!?」
「確かにそれは脅威だけど、放つ前に止めたら問題ないよな?」
ぽんと、シャルロッテのお腹に手を当てて、
「紫電烈閃掌<プラズマインパクト>!」
アリーシャの時と同じ魔法を放つ
紫電がシャルロッテを包み込み、その身に宿る魔力を根こそぎ奪い取り……
「あ……うぅ……」
シャルロッテは意識をなくして、そのまま倒れそうになる。
「おっと」
そのまま倒れたら危ないので、そっと受け止めた。
完全に意識を失っている。
「そこまで!」
審判がそれを確認したところで、俺の勝利が確定した。
身内戦が連続すると、どんな運命のいたずらだ、と神様をちょっと恨みたくなってしまう。
でも、これはこれで楽しそうだ、なんて思う俺は俺で問題かもしれない。
「ふふんっ、今日のわたくしはついていますわ!」
訓練場で向き合うシャルロッテは得意そうな笑みを浮かべていた。
「なんで、ついているんだ?」
「レン、あなたと戦うことができるからよ!」
「えっと……話が見えてこないんだけど」
「わたくしは、元々、優勝はあまり気にしていないので。ただ、レンと戦い、そして勝つ。それを一番の目標にしてきたのですわ」
「そう……なのか? もしかして、前に負けたことを気にしている?」
「さらっと人の傷に触れないでくれません!?」
シャルロッテが頬を膨らませて、拗ねるように怒った。
やっぱりあれは、あまり触れられたくないことらしい。
「あなたはすごい人。それと、男だけどしっかりした人。それはわかっているのですが……わたくしにもプライドがありますわ。負けたままではいられません」
「なるほど。ならこれはリベンジマッチ、っていうわけか」
「ええ、その通りですわ」
「そういうのは嫌いじゃない」
俺は笑う。
シャルロッテも不敵に笑う。
互いに睨みつけて……
「開始!」
審判の合図で同時に前に出た。
そして魔法を発動。
「火炎槍<ファイアランス>!」
「氷烈牙<フリーズストライク>!」
互いの魔法が激突して、打ち消し合う。
俺の方は初級魔法だったのだけど、魔力量と属性の相性のおかげで、なんとか互角のところに持ち込めたようだ。
「雷撃槍<サンダーランス>!」
シャルロッテはさらに魔法を放ち、
「閃光爆炎陣<フラッシュインパクト>!」
「竜哮波<ドラグーンハウリング>!」
「乱撃炎撃<マルチフレア>!」
さらに、立て続けに中級魔法を唱えてきた。
「ちょっ!?」
あまりにも詠唱が早すぎないか!?
俺の倍以上……いや、その上をいっている。
反撃は無理だ。
防御も難しい。
あえて受け止める、という手もあるけど……
シャルロッテがなんの対策もしていないとは考えづらいので、それはやめておこう。
回避に専念した。
跳んで、転がり、再び跳ぶ。
いくらかかすったものの、直撃は避けることができた。
「なんだよ、そのデタラメな詠唱速度は……!?」
「ふふんっ、素直に教えてさしあげると思って?」
不敵に笑いつつ、さらにシャルロッテは魔法を次々と放つ。
もはや連射だ。
魔法の嵐が吹き荒れて、どんどんこちらの魔力が削られてしまう。
まだ余裕はあるけど……
これが続いたら、ちょっとまずいかもしれないな。
シャルロッテは、おそらく初手から切り札を切っている。
それが、この異常なまでの詠唱速度の早さだろう。
いったい、どんな手を使っているんだ?
俺は防御と回避に専念して、シャルロッテの切り札を解明することに専念した。
上級魔法などで力任せの反撃に出てもいいのだけど……
ただ、今は彼女が使う力、技術に興味がある。
それを解き明かしたい、という欲求を抑えることができない。
これ、俺の悪い癖だな。
自嘲しつつ、戦闘を続ける。
「ふふ、逃げてばかりでは勝てませんわよ?」
「くっ……」
自分の優位を確信するシャルロッテは、立て続けに魔法を放つ。
って……ちょっとまてよ?
彼女、ちゃんとした詠唱をしていないのでは?
詠唱らしきものはしているが、ほんの一言。
本来、魔法を放つために必要な詠唱を丸々省いているような気がした。
戦いの最中だから、きちんと確認することはできない。
見間違えという可能性もあるけど……
……いや。
なるほど、そういうことか。
「これで終わりですの? わたくしの切り札の前に手も足も出ないなんて、それはそれで、ちょっとがっかりですわね。レンは、もっとやれると思っていたのですが」
思っていた通り、よくわからないタイミングでシャルロッテは挑発めいたことを言う。
それはただの挑発ではなくて、彼女にとって必要なことなのだ。
「もっとやれるさ」
「え?」
「シャルロッテの切り札、わかったよ」
「なっ……で、デタラメですわ。そのようなことは……」
「遅延魔法」
「っ……!?」
シャルロッテの顔色が青くなる。
「あらかじめ魔法を唱えておいて、でも、それを発動することなく、矢のようにしてストックしておく。そして任意のタイミングで、ストックしておいた魔法を一瞬で発動することができる。そんな魔法理論があることを、どこかの本で見たんだけど……完成させていたんだな」
「……まさか、こうも早く見抜かれるなんて」
正解のようだ。
シャルロッテは苦い顔をしつつ、でも、楽しそうだった。
「さすがレンですわね。下手をしたら見抜かれるかもしれないと思っていましたが、まさか、こんなに早いとは思っていませんでしたわ」
「ありがとう」
「ですが……わたくしの切り札を見抜いたからといって、すぐに攻略法は思いつかないはず! このまま押し切らせてもらいますわ!」
今の会話の間に充填は完了したらしい。
連続で魔法を放とうとするけど……
「加速<アクセル>!」
瞬間的な移動を可能とする魔法を使い、シャルロッテの懐に潜り込む。
「なっ……!?」
「確かにそれは脅威だけど、放つ前に止めたら問題ないよな?」
ぽんと、シャルロッテのお腹に手を当てて、
「紫電烈閃掌<プラズマインパクト>!」
アリーシャの時と同じ魔法を放つ
紫電がシャルロッテを包み込み、その身に宿る魔力を根こそぎ奪い取り……
「あ……うぅ……」
シャルロッテは意識をなくして、そのまま倒れそうになる。
「おっと」
そのまま倒れたら危ないので、そっと受け止めた。
完全に意識を失っている。
「そこまで!」
審判がそれを確認したところで、俺の勝利が確定した。