「さあ、やってまいりました! ついに、ついについについに、つ・い・に! 今年の魔法大会が開催されることになりました! みなさん、拍手ーっ!!!」

 訓練場を舞台に魔法大会が始まる。
 その場に集まった選手、観客達が万雷の拍手を打ち鳴らした。

 ちなみに、魔法を使い解説をしているのは……意外や意外、ハンナだった。

 実行委員の一人なので、解説を担当することになったらしい。
 真面目な子だと思っていたけど、意外とノリがよく、元気に明るく解説をしている。

 その様子を観客席に座る俺と、他、みんなが見守る。

「……」

 ふと、解説席のハンナと目が合う。
 ハンナは小さく笑い、俺に向けて手を振る。
 俺も手を振る。

 秘密の会話をしているみたいで、ちょっと楽しい。

「なにをしているのかしら、レン?」
「えっと……?」
「あ、いや。なんでもないよ」

 シャルロッテとフィアが不思議そうな顔をしたので、適当にごまかしておいた。

 ハンナによる大会開催の挨拶は問題なく終わり……
 続いて、いくらかの教師陣の挨拶が始まる。

 魔法学院の生徒らしく、とか。
 正々堂々と、理念を追い求めて、とか。

 そんな堅苦しい挨拶が続く。
 この辺りは正直退屈だ。
 早く大会を始めてほしい。

「では……これより、魔法大会を開催します!」

 長い挨拶の後、学長による宣言が行われた。
 瞬間、わーっと訓練場が歓声に包まれる。

 生徒のもの、外からやってきた観客のもの。
 みんな、この瞬間を楽しみにしていたみたいだ。

 俺達生徒にとっては、己の力と今までの研鑽を披露することができる。
 外の人達にとっては、お祭りのようなもの。
 実際、生徒達による屋台などが出店されている。
 大会に出場しない生徒は、別の形で大会を楽しんでいるのだ。

「いよいよだな」

 わくわくしていた。

 ただ……
 同時に、ちょっとした不安も感じていた。

 大会前に起きた、いくつかの事件。
 それはまだ解決されていない。
 犯人の目的も正体も不明だけど、魔法大会に合わせてなにかを企んでいるとしたら……?

「勘違いであってほしいけど、警戒するに越したことはないか」



――――――――――



 試合は訓練場で行われる。
 結界があるため、魔法を使っても怪我をすることはない。

 絶対、とは言い切れないけど……
 それでも大怪我をする確率はかなり低いだろう。
 結界もいつも以上に強化されている。
 それに、いざという時に備えて治療班も待機しているため、安全対策はバッチリだ。

 そんな中、俺の番が訪れた。

 初戦の相手は……

「まさか、いきなりレンとぶつかるなんて……」
「それ、俺の台詞」

 まさかのアリーシャだった。

 学年もクラスも関係ない。
 だから、もしかしたら身内とぶつかる、ということは考えていたけど……
 初戦からというのは予想外だ。

「手加減してくれる?」
「えっと……」
「嘘よ」

 アリーシャは小さく笑う。

「むしろ、手加減なんてしたら許さないから」
「え」
「あたしは、これまでずっとがんばってきた。自分の力を確かめるため。そして……レンの隣に立つにふさわしい力を手に入れるため」

 アリーシャの顔から笑みが消える。
 鋭く、鋭く。
 矢のような眼差しをこちらに向けて、腰の剣を抜いた。

「どこまで通用するか、無理矢理にでも胸を貸してもらうわ」
「……強引だなあ。でも、嫌いじゃない!」

 俺も杖を構える。

 俺とアリーシャの視線が激突して……

「開始!」

 そんな中、審判の合図が響いた。