最近、学院全体が活気づいていた。

 魔法大会の影響だ。
 大半の生徒が興味を持っているらしく、魔法大会の話題を耳にしない日はない。

 一方で、地震の話題も増えていた。

 最近、地震が多くない? ……と。

 一週間前にそこそこの地震が起きて。
 それをきっかけにしたかのように、さらに三回、地震が起きていた。

 なにかの前触れなのでは? と不安に思う生徒も多い。



――――――――――



「おー、今日はたくさんだね」

 昼食の時間。
 俺、エリゼ、アラム姉さん、アリーシャ。
 シャルロッテ、フィア。
 そして、メル。

 フルメンバーだった。

「あなたがメルさんね? 妹から話は聞いているわ。弟と妹と仲良くしてくれてありがとう」
「いやいやー、ボクこそ仲良くしてもらってありがとう、って言いたいかな」
「ふふん、わたくしはシャルロッテですわ!」
「えっと……お嬢様の侍女をやっているフィアです」
「うん、よろしくね♪」

 みんなで仲良くご飯を、というのが今回のコンセプトらしい。
 それはいいのだけど……

「こんなにたくさんで食べるなんて初めてだから、楽しいなー!」

 メルは笑顔を浮かべていた。

 でも、その笑顔は本物なのだろうか?
 仮面のように簡単に付け替えることできるのではないか?

 ついつい、そんな疑いを抱いてしまう。

 というのも、この前地震が起きた時……
 あの時に見かけた人影がメルに似ているような気がしたのだ。

 もしかしたら、あの地震はメルが起こしたものかもしれない。
 その目的は不明だけど……
 行動から考えると、ろくでもないことを企んでいるのは間違いないだろう。

 この仮定が正しいとしたら、俺は……

「レン?」

 ふと、アラム姉さんが不思議そうにこちらを見た。

「ぼーっとしているけど、どうかしたの?」
「あ、いえ。なんでもないです」
「そう? ご飯が冷める前に食べましょう」
「そうですね」

 メルは敵なのか?
 それとも味方なのか?
 その動向を注視した方がいいかもしれない。
 放っておかない方がいいと、勘が告げていた。

「おっと」

 一人、先に食事を終えたメルが席を立つ。

「どうしたんですか、メルちゃん?」
「えへへ……ちょっとお花摘みに」
「あ、ごめんなさい」
「ううん、気にしないで」

 メルは恥ずかしそうにしつつ、食堂の外に出た。

 うーん?
 なんか今、演技っぽい感じがしたのだけど……

 と、その時。

「きゃっ!?」

 再び地震が起きた。
 みんな、慌ててテーブルの下に避難する。

 今までよりも若干揺れが大きい。
 でも、それ以上の被害に拡大することはなくて、ほどなくして揺れが止む。

「び、びびび、びっくりしましたわ……」
「シャルロッテ、地震が苦手なの?」
「そ、そそそ、そのようなことは!?」
「みんな、大丈夫? レンも怪我していない?」
「……」
「レン?」
「ちょっと出てきます」

 気配を探ると、前の時と同じように妙な感じがした。
 怪訝そうにするアラム姉さんを置いて、食堂の外に出る。

 そして、妙な感じがする場所……学院の裏手に移動すると、やはりというか、魔法の残滓を感じることができた。

「やっぱり、この地震は人工的に起こされている。目的はまだわからないけど、でも、犯人は……」

 メルが姿を消した後、すぐに地震が起きた。
 彼女が犯人なのだろうか……?