「きゃあ!?」
「じ、地震……!?」
「みなさん、落ち着いて! 机の下に隠れてください!」

 先生の言う通り机の下に隠れて頭を守る。

 地震で怖いのは、なにかしら物が落ちてきた時、頭を打ってしまうことだ。
 頭にダメージがあると、ちょっとしたことでも致命傷になりかねないからな。

「ひぃぅうううううっ……!?」
「大丈夫です、お嬢様。私がいますから!」

 シャルロッテが思い切り怯えて、フィアが必死に励ましていた。
 立場が逆になってしまっている……
 実は、いざという時はフィアの方がしっかりしているのだろうか?

「……止まった」

 ほどなくして地震が収まる。
 完全に揺れがなくなったところで机の下から出た。

 幸いというか、大きな物は落ちていないようだ。
 教室の後ろにある簡易ロッカーから、いくつか鞄が落ちているだけ。

「みなさん、大丈夫ですか? 怪我をしている人はいませんか?」

 先生も教卓から出て、みんなに声をかける。
 それを合図に、クラスメイト達が机の下から出てきた。

 よかった。
 みんな怪我はしていないみたいだ。

「ピー!」
「ニーア、お前も無事だったか」
「ピッ、ピッ!」

 ニーアは俺の肩に乗ると、ツンツンと頬を突いてきた。
 そして、バサッと翼を広げて窓の外を指す。

 つられて視線をやると……

「……なんだ、あれ?」

 学院の屋上に人影が見えた。
 女性ということはわかるものの、遠くなので顔などは見えない。

 ただ……

 その人を見ていると、ひどく嫌な感じがした。
 ざわざわと心が震える。

「あっ、ストライン君!? どこに行くんですか!?」
「トイレです!」

 適当なことを言い残して、俺は教室を飛び出した。
 そのまま棟を移動して、人影が見えた屋上に移動する。

「……いないか」

 すでに人影は消えていた。
 しかし、ここに誰かがいたことは確定だ。

 しかも……

「今の地震……もしかして、あの人影の仕業か?」

 屋上に大規模な魔法陣が描かれていた。
 とても複雑な術式で、なかなか解読できないだろう。

 それもそのはず。

「この術式は……俺の前世の、500年前のものだ」

 だからこそ、俺は魔法陣の意味を理解できる。
 小規模ではあるが、地震を起こすことができるものだった。

 謎の人影に、500年前の魔法陣。

 それと……
 魔王を知るというメル。

 立て続けに妙なことが起きている。
 それらの事件が連鎖して、より大きなことが起きそうな……
 そんな不安を受けた。

「ピッ」

 肩でニーアが鳴いた。

 俺を励ましているようで。
 それと、自分がいるから大丈夫、と言っているかのようでもあった。

「……そうだな、弱気になっていても仕方ないよな」
「ピー!」
「よし。まずは魔法陣を徹底的に解析して……うん、報告は後でいいか。それから、ここにいた人影も追えるだけ追ってみよう」

 なにが起きているかわからない。
 なら、突き止めればいい。
 知ればいい。

「やってやるか!」