「火炎槍<ファイアランス>」
魔法人形に向けて魔法を放つ。
炎の槍が直撃して、他の生徒では出せない数字が表示される。
ただ……
「威力が高いだけなんだよな」
果たしてこれで魔法大会を勝ち抜くことができるだろうか?
この世界の魔法技術は500年前と比べると劣っている。
でも、全てが劣っているわけじゃない。
一部、突出した才能を持つ人がいる。
例えば、アリーシャ。
彼女の魔法剣は見事としか言いようがない。
例えば、シャルロッテ。
彼女の詠唱速度はとんでもなく速い。
「それに比べて俺は、ただ単に高い魔力を持っているだけ。うーん……ちょっと心もとないよな」
魔法大会で優勝を目指すにしても。
いつか来るであろう、魔王との戦いを想定するにしても。
単純に魔力が高いだけで勝てるとは思えない。
俺だけの『切り札』が欲しい。
「あら。今日も精が出ますわね」
シャルロッテが訓練場に姿を見せた。
「みなさんで一緒に訓練をした後、さらに自主練をする……ふふん、なかなかやりますわね。そこまでの熱意を見せられると、わたくしも熱くなってきますわ!」
「シャルロッテも訓練を?」
「ええ、もちろん。あと少しで『アレ』を完全に使いこなせるようになると思うので」
「『アレ』?」
シャルロッテが、しまった、というような顔になる。
秘密にしておきたいことだったのだろう。
この子、頭がいいように見えて、今みたいにちょっと抜けているところがあるんだよな。
まあ、そこが親しみやすくていいのだけど。
「な、なんでもありませんわ! わたくしが密かに必殺技を考えているとか、そのための訓練をしているとか、そんなことはありませんわよ?」
とてもわかりやすい。
「ああ、そうだな。シャルロッテは必殺技の訓練をしていない」
「そ、そうですわ」
「で、どんな必殺技?」
「それは、魔法を……ってぇ!?」
シャルロッテは得意そうに語り始めて、途中で我に返る。
「危ないですわ……このわたくしが騙されそうになるなんて。レンは話術も得意なのですね」
「どちらかというと、シャルロッテがぽんこつなような……」
「むー……」
頬を膨らませて拗ねてしまう。
しまった、言い過ぎたかもしれない。
「ごめん、ごめん」
「……レンは意地悪ですわ」
「謝るよ」
「まあ……許して差し上げます。わたくしは寛容な女ですから」
「ありがとう」
なんだかんだ、優しいところも彼女らしい。
「それで、レンはどんな必殺技を考えているんですの?」
「うーん……隠すわけじゃないんだけど、まだ、なにも思いついていないんだ」
なにか会得しないといけない。
切り札が必要になるはず。
でも、そのためのとっかかりが見えていないのが現状だ。
「ちょっと相談なんだけどさ。シャルロッテは、どうやってその必殺技を思いついたんだ? あ、必殺技の内容は言わなくていいから」
「そうですわね……わたくしの場合は、お母様から教わった感じでしょうか? わたくしのお母様は貴族ではありますが、とても高い魔法の技術を持っていまして、昔は宮廷魔術師として迎えられたこともありますの」
「へー、それはすごいな」
宮廷魔術師は、千人に一人なれるかなれないか、というくらいの超エリートだ。
「だから厳密に言うと、わたくしの必殺技ではありませんの。まあ、そのことはなにも気にしていませんけどね。むしろ、偉大なお母様の必殺技を継ぐことができて、嬉しいと思っていますわ」
「なるほど」
先人の知恵を学ぶ。
いい方法だ。
ただ、俺の場合は師匠というべき存在がいない。
いや。
エル師匠というとても素敵な先生がいたけど、でも今は……
「ん、待てよ?」
ふと、閃いた。
魔法人形に向けて魔法を放つ。
炎の槍が直撃して、他の生徒では出せない数字が表示される。
ただ……
「威力が高いだけなんだよな」
果たしてこれで魔法大会を勝ち抜くことができるだろうか?
この世界の魔法技術は500年前と比べると劣っている。
でも、全てが劣っているわけじゃない。
一部、突出した才能を持つ人がいる。
例えば、アリーシャ。
彼女の魔法剣は見事としか言いようがない。
例えば、シャルロッテ。
彼女の詠唱速度はとんでもなく速い。
「それに比べて俺は、ただ単に高い魔力を持っているだけ。うーん……ちょっと心もとないよな」
魔法大会で優勝を目指すにしても。
いつか来るであろう、魔王との戦いを想定するにしても。
単純に魔力が高いだけで勝てるとは思えない。
俺だけの『切り札』が欲しい。
「あら。今日も精が出ますわね」
シャルロッテが訓練場に姿を見せた。
「みなさんで一緒に訓練をした後、さらに自主練をする……ふふん、なかなかやりますわね。そこまでの熱意を見せられると、わたくしも熱くなってきますわ!」
「シャルロッテも訓練を?」
「ええ、もちろん。あと少しで『アレ』を完全に使いこなせるようになると思うので」
「『アレ』?」
シャルロッテが、しまった、というような顔になる。
秘密にしておきたいことだったのだろう。
この子、頭がいいように見えて、今みたいにちょっと抜けているところがあるんだよな。
まあ、そこが親しみやすくていいのだけど。
「な、なんでもありませんわ! わたくしが密かに必殺技を考えているとか、そのための訓練をしているとか、そんなことはありませんわよ?」
とてもわかりやすい。
「ああ、そうだな。シャルロッテは必殺技の訓練をしていない」
「そ、そうですわ」
「で、どんな必殺技?」
「それは、魔法を……ってぇ!?」
シャルロッテは得意そうに語り始めて、途中で我に返る。
「危ないですわ……このわたくしが騙されそうになるなんて。レンは話術も得意なのですね」
「どちらかというと、シャルロッテがぽんこつなような……」
「むー……」
頬を膨らませて拗ねてしまう。
しまった、言い過ぎたかもしれない。
「ごめん、ごめん」
「……レンは意地悪ですわ」
「謝るよ」
「まあ……許して差し上げます。わたくしは寛容な女ですから」
「ありがとう」
なんだかんだ、優しいところも彼女らしい。
「それで、レンはどんな必殺技を考えているんですの?」
「うーん……隠すわけじゃないんだけど、まだ、なにも思いついていないんだ」
なにか会得しないといけない。
切り札が必要になるはず。
でも、そのためのとっかかりが見えていないのが現状だ。
「ちょっと相談なんだけどさ。シャルロッテは、どうやってその必殺技を思いついたんだ? あ、必殺技の内容は言わなくていいから」
「そうですわね……わたくしの場合は、お母様から教わった感じでしょうか? わたくしのお母様は貴族ではありますが、とても高い魔法の技術を持っていまして、昔は宮廷魔術師として迎えられたこともありますの」
「へー、それはすごいな」
宮廷魔術師は、千人に一人なれるかなれないか、というくらいの超エリートだ。
「だから厳密に言うと、わたくしの必殺技ではありませんの。まあ、そのことはなにも気にしていませんけどね。むしろ、偉大なお母様の必殺技を継ぐことができて、嬉しいと思っていますわ」
「なるほど」
先人の知恵を学ぶ。
いい方法だ。
ただ、俺の場合は師匠というべき存在がいない。
いや。
エル師匠というとても素敵な先生がいたけど、でも今は……
「ん、待てよ?」
ふと、閃いた。