「うぅ……痛いです……」
「ダメ、体が……」
「こんなこと……くらい、でっ……」
魔法を受けたエリゼ達は地面を転がる。
意識は残っていて、致命傷を負ったわけでもない。
ただ、その身に受けたダメージは相当なもので、立ち上がることができない様子だった。
ゴーレムが魔法を使うわけがない。
そんな常識をすり抜けた策に見事にハマってしまった。
常識を利用して、逆手に取る戦い方。
いざという時に切り札を使う。
平気で外法を利用することを無視すれば、エイルマットは一流の策士であった。
「直撃だ。しばらく立ち上がることはできないだろう。そこで寝ているといい。なに、後でしっかりと君達も生体ユニットにしてあげるから、寂しがる必要はないさ」
「こ、のぉっ……!!!」
アラムは燃え盛るような怒りを瞳に宿して、エイルマットを睨みつけた。
この男は許せない。
大事な弟の友達を傷つけたというだけではなくて……
一人の人間として、エイルマットが行う外法を見過ごすことはできない。
動け。
動け。
動け。
必死にそう念じるものの、しかし、体は反応してくれない。
思っている以上にダメージが深いのだ。
ずっと放置すれば致命傷になるほどの傷。
今、意識があることが奇跡に等しい。
「さて……一人、残してしまったね」
「あ……ぅ」
残されたフィアはびくりと震えた。
蛇に睨まれたカエル。
攻撃することも、かといって逃げることもできない。
ただ立ち尽くすだけだ。
「安心するといい。出来損ないとはいえ、それなりに価値はある。君も一緒に生体ユニットにしてあげよう」
「……う……」
「ほら。シャルロッテと一緒に僕の役に立つといい」
フィアは震える。
怖い。
体の震えが止まらない。
逃げてしまいたい。
でも……
それ以上に、シャルロッテのことを助けたい。
「……お嬢様を」
「うん?」
「お嬢様を返してください!」
恐怖は残っている。
しかし、それ以上に、シャルロッテを失うことの方が怖い。
勇気が彼女を突き動かす。
「火炎槍<ファイアランス>!」
魔法の詠唱をするが、
「……あ……」
なにも起きない。
ポーションの効果は切れて、さらに時間が経ったことで残っていた魔力が吸収されてしまったのだろう。
「そら、見たことか。もう君にできることはなにもない。諦めて、おとなしく僕の糧に……」
「うあぁあああああ!!!」
「なに?」
フィアは恐怖をごまかすように叫びつつ、ゴーレムに向けて駆けた。
途中、棚に飾られていた壺を手に取り、それをゴーレムの頭部に叩きつける。
ガシャンと壺が割れるものの、ゴーレムに傷はつかない。
鉄の刃を弾くほどの装甲だ。
この結果は当たり前のもの。
でも。
「お嬢様を……返してください!!!」
フィアは割れた壺の欠片を手に取る。
そんなものを手にすれば傷ついてしまうが、しかし、フィアは気にしない。
壺の欠片を即席の刃として、アリーシャのように接近戦を挑む。
魔法が使えないのなら物理で戦うしかない。
装甲を貫くことはできないけど、関節部ならあるいは。
必死に食らいついて、どうにかこうにかシャルロッテだけは助けられるかもしれない。
そんな希望を抱いて、がむしゃらに攻撃を繰り返していく。
……しかし、それは無謀でしかない。
元々、フィアは普通の魔法使いだ。
成績も平凡。
アリーシャのように剣に特化しているわけでもない。
「あぅ!?」
ゴーレムの拳がフィアを打つ。
ゴーレムとまともにぶつかれば、こうなることは明白だった。
勢いよく小さな体が飛んで、転がる。
壁に激突してようやく止まる。
「かはっ」
激突した衝撃で肺の空気を全部吐き出してしまう。
それだけじゃなくて、体の芯から響くような激痛が走る。
骨が折れたかもしれない。
だとしても。
「……して」
フィアはゆらりと立ち上がり、ゴーレムと対峙する。
「返して」
その目は決意に燃えていた。
「お嬢様を……返してください!」
「……っ……」
圧倒的有利のはずのエイルマットだけど、フィアの圧に押されてしまう。
それは屈辱以外の何者でもなくて……
だからこそ、彼はそのことが絶対に許せない。
「もういい! ゴーレムよ、この女を殺してしまえ!」
「わたしが、死んだとしても……絶対に、お嬢様は……!!!」
「その大好きなお嬢様に殺されるのだ。君も本望だろう? はははははっ!」
勝利を確信したエイルマットが高笑いを響かせた。
フィアは覚悟を決めた。
アラム達が絶望を顔に浮かべた。
そして……
「火炎槍<ファイアランス>」
どこからともなく飛来した炎の槍がゴーレムの足を打ち、その動きを止めさせた。
「ダメ、体が……」
「こんなこと……くらい、でっ……」
魔法を受けたエリゼ達は地面を転がる。
意識は残っていて、致命傷を負ったわけでもない。
ただ、その身に受けたダメージは相当なもので、立ち上がることができない様子だった。
ゴーレムが魔法を使うわけがない。
そんな常識をすり抜けた策に見事にハマってしまった。
常識を利用して、逆手に取る戦い方。
いざという時に切り札を使う。
平気で外法を利用することを無視すれば、エイルマットは一流の策士であった。
「直撃だ。しばらく立ち上がることはできないだろう。そこで寝ているといい。なに、後でしっかりと君達も生体ユニットにしてあげるから、寂しがる必要はないさ」
「こ、のぉっ……!!!」
アラムは燃え盛るような怒りを瞳に宿して、エイルマットを睨みつけた。
この男は許せない。
大事な弟の友達を傷つけたというだけではなくて……
一人の人間として、エイルマットが行う外法を見過ごすことはできない。
動け。
動け。
動け。
必死にそう念じるものの、しかし、体は反応してくれない。
思っている以上にダメージが深いのだ。
ずっと放置すれば致命傷になるほどの傷。
今、意識があることが奇跡に等しい。
「さて……一人、残してしまったね」
「あ……ぅ」
残されたフィアはびくりと震えた。
蛇に睨まれたカエル。
攻撃することも、かといって逃げることもできない。
ただ立ち尽くすだけだ。
「安心するといい。出来損ないとはいえ、それなりに価値はある。君も一緒に生体ユニットにしてあげよう」
「……う……」
「ほら。シャルロッテと一緒に僕の役に立つといい」
フィアは震える。
怖い。
体の震えが止まらない。
逃げてしまいたい。
でも……
それ以上に、シャルロッテのことを助けたい。
「……お嬢様を」
「うん?」
「お嬢様を返してください!」
恐怖は残っている。
しかし、それ以上に、シャルロッテを失うことの方が怖い。
勇気が彼女を突き動かす。
「火炎槍<ファイアランス>!」
魔法の詠唱をするが、
「……あ……」
なにも起きない。
ポーションの効果は切れて、さらに時間が経ったことで残っていた魔力が吸収されてしまったのだろう。
「そら、見たことか。もう君にできることはなにもない。諦めて、おとなしく僕の糧に……」
「うあぁあああああ!!!」
「なに?」
フィアは恐怖をごまかすように叫びつつ、ゴーレムに向けて駆けた。
途中、棚に飾られていた壺を手に取り、それをゴーレムの頭部に叩きつける。
ガシャンと壺が割れるものの、ゴーレムに傷はつかない。
鉄の刃を弾くほどの装甲だ。
この結果は当たり前のもの。
でも。
「お嬢様を……返してください!!!」
フィアは割れた壺の欠片を手に取る。
そんなものを手にすれば傷ついてしまうが、しかし、フィアは気にしない。
壺の欠片を即席の刃として、アリーシャのように接近戦を挑む。
魔法が使えないのなら物理で戦うしかない。
装甲を貫くことはできないけど、関節部ならあるいは。
必死に食らいついて、どうにかこうにかシャルロッテだけは助けられるかもしれない。
そんな希望を抱いて、がむしゃらに攻撃を繰り返していく。
……しかし、それは無謀でしかない。
元々、フィアは普通の魔法使いだ。
成績も平凡。
アリーシャのように剣に特化しているわけでもない。
「あぅ!?」
ゴーレムの拳がフィアを打つ。
ゴーレムとまともにぶつかれば、こうなることは明白だった。
勢いよく小さな体が飛んで、転がる。
壁に激突してようやく止まる。
「かはっ」
激突した衝撃で肺の空気を全部吐き出してしまう。
それだけじゃなくて、体の芯から響くような激痛が走る。
骨が折れたかもしれない。
だとしても。
「……して」
フィアはゆらりと立ち上がり、ゴーレムと対峙する。
「返して」
その目は決意に燃えていた。
「お嬢様を……返してください!」
「……っ……」
圧倒的有利のはずのエイルマットだけど、フィアの圧に押されてしまう。
それは屈辱以外の何者でもなくて……
だからこそ、彼はそのことが絶対に許せない。
「もういい! ゴーレムよ、この女を殺してしまえ!」
「わたしが、死んだとしても……絶対に、お嬢様は……!!!」
「その大好きなお嬢様に殺されるのだ。君も本望だろう? はははははっ!」
勝利を確信したエイルマットが高笑いを響かせた。
フィアは覚悟を決めた。
アラム達が絶望を顔に浮かべた。
そして……
「火炎槍<ファイアランス>」
どこからともなく飛来した炎の槍がゴーレムの足を打ち、その動きを止めさせた。