一瞬の出来事だった。剣を失ったレオナルドは、みるみるうちにモンスター化した木々に取り込まれていく。
 それを見ていたシオンは持っていた剣を、レオナルドを取り込んでいたモンスター化した木々に向かって投げつけた。
「レオ、その剣使え!」
 絶妙の連携プレイで、レオナルドはなんとか剣を受け取ることに成功した。
 それは見事に命中し、レオの体からモンスターが消えていくのが確認できた。
 レオナルドは、すばやくシオンと自分の剣を取り返した。
 すぐにシオンへ剣を返そうとしたのだが、シオンは背負っていた聖剣を引き抜いた。
 剣が抜けると同時に、目を閉じてしまいそうなになるくらいのまばゆい光が放たれた。
 その光は紅い炎になり、シオンの体を包んだ。
 シオン自身も驚いたが、戸惑っている時間はなかった。
 シオンは聖剣を持ちなおすと、ソフィアを襲っていたモンスターに向かった。
 森全体がモンスター化しているので苦戦を予想されたが、シオンが聖剣を一振りするだけで天から稲妻が落ちてくるが如く周りが眩しく光り、モンスター化した木々は一瞬にしてまるで焼き払われてしまったかのように消え去った。
 さきほどまでそこに森があったのが信じられないくらいになってしまった。
「すげえな。この剣」
 シオン自身も聖剣の持つ力に圧倒された。 カシャンと、背中の鞘に聖剣を収めると、シオンはしりもちをついていたソフィアに手をさしのべた。
「大丈夫? ケガはしてない?」
「ありがとうございます。わたくしは大丈夫です。シオン様にいただいたドレスが少し破けてしまいました。申し訳ありません」
「なに言ってんの。洋服ならまた作ってあげるよ。予備もあるから、そんな事心配しないの! それよりキャロラインちゃんにケガがなくてよかったよ。女性を助けるのが男の務めだからね!」
 レオナルドもシオンの元に駆けよる。
「シオン様、大丈夫ですか?」
「うん。なんともない」
 シオンは、自分自身でも確認するように両手のひらを見たが、あの聖剣の威力でやけどを負ったりはしていなかった。
「そうですか」
 レオナルドは、一抹の不安をかかえながらシオンの背中を目で追った。
 先に進んで行ったシオンを追おうとしていたソフィアに、レオナルドは声をかけた。
「ソフィアさん、シオン様は決して望んでいないだろう事を、私はあえてあなたに告げます」