ソフィアは、自分がシオンとレオナルドの足を引っぱっているのではと思い始めた。
『わたくしは魔術師。もうあの魔術を使うしかない』
 そう心に決めたソフィアは、両手の指でハートマークを作ると、突然叫びだした。
「キャロラインビーム!」
 ハートの中からピンク色のハート型のビームが連鎖しながら飛びだした。
 ビームを当てる位置は自由自在に操れる。
 ソフィアはシオンとレオナルドを避けながら体を一回転させてモンスター化した木々を攻撃した。
「キャロラインちゃん、なにそれ! アイドルみたいで超かわいい!」
「そう言われると思ったので、やりたくなかったんです!」
 ソフィアの顔はみるみるうちに真っ赤なっていく。自分でもこの魔術だけは恥ずかしくて、できる事なら使いたくなかった。
 魔術師は、生まれた時から自分の名前を使った攻撃魔術を持っている。
 その魔術はさまざまで、魔力の宿った剣や銃もあれば、弾丸のように光の弾を撃つ事もできるし、スコールのように針の雨を降らせるなど、その魔術師によって違いがある。
 攻撃魔術なので効力が高く、何度でもできるが、長時間の攻撃はできない。
 ソフィアの攻撃が終わろうとしている今、背後には今にもソフィアに襲いかかろうとしているモンスターがいた。
「レオ! キャロラインちゃんの加勢にまわって! そこは俺がやるから!」
「わかりました、シオン様!」
 レオナルドはソフィアの後ろにまわり、襲いかかってくるモンスター化した木々に剣をふるい、ソフィアを護った。
 すると、突然地面うねりながらが盛り上がり、海のように波打ちだした。
 足元が揺れ、立っている事すらが精一杯になったその時、
「きゃあああ!」
 と、ソフィアの悲鳴が響いた。
 ソフィアはふらつきに耐えられず転倒してしまったのだ。
 モンスター化した木々は容赦なくソフィアの体に蔦をまわし、森の中へ取り込もうとしている。近くでふんばっていたレオナルドも阻止しようと剣をふるったが、ソフィアを傷つけないようにしないといけないので苦戦を強いられていた。
「キャロラインちゃん大丈夫か? レオ! なんとかできそうか?」
「ふんばります! シオン様は……あっ!」
 レオナルドは、モンスター化した木々に剣を取られてしまったのだ。