「レオナルドさん、あなたもシオン様のおっしゃる事を信じているのですか?」
 唯一、シオンの言動に意見を言えるのも、シオンの間違いを言葉を選んで、プライドを傷つけないように正す事をできるのはレオナルドだけだ。
「はい。今日はその村へ行ってみるのも良いかと存じます」
 予想していたものとは真逆の答えに、「嘘でしょう?」とソフィアは目を大きく見開いた。それと同時に、「正気ですか?」とも思った。
 ソフィアの顔色がくもっていたのを見たシオンが補足する。
「別に、キャロラインちゃんの魔術が違っていた、とかそういうのじゃないからね。元々魔術では森の中を示していたんだし。あんな広い樹海をやみくもに探すよりは、少しでもピンポイント狙いたいだけだから」


  * * *

  
 土埃をあげながら、舗装されていない道を車で走り続けて二、三時間。周りになにもなくてつまらない、と文句を言っていたシオンの目にもいくつかの建物が見えてきた。
 本当に小さな村のようで、側面しか確認できなかったからその全貌はわからないが、木製の低い囲いが入り口の両サイドにあり、上には同じく木製のアーチ。
 そこには『ようこそ!』の文字が刻まれていた。そのアーチを見て、よく耳にする閉鎖的なものはなく、ウエルカムな印象だった。
 住宅は見えただけでは数十軒ほど。ある一定の並びで段々畑のように建っていたので、奥の方にも住宅があるかもしれなかった。
 住宅は新旧の違いはあったが、全部同じ形で玄関は村への入り口に面しており、屋根が紅色だった。
 レオナルドは村の近くの道に車を駐めた。
 村はアスファルトや石畳での舗装もされていなかったので、車でヅカヅカと入って行くと土埃が舞ってしまうと判断したからだ。
 ただでさえ異国の人間なのだから、村人たちを驚かせてもいけない、という配慮もあった。
 車を村の外に駐め、シオンとレオナルドとソフィアが順に村へと入って行った。
 入り口を入って百メートルくらいのところが広場になっていて、噴水と噴水を囲むように野菜や果物、日用品などのマーケットがあった。
広場は村人たちが集まる場所らしく、噴水の周りやマーケットで買い物する人たちでにぎわっていた。
 彼らは、外から入ってきたシオンたちにすぐ気がついたようで、四十代くらいの女性から声をかけられた。