ホテルの部屋へ戻ると、ソフィアがシオンたちの部屋の前で、魔術師のローブ姿で待っていた。
「あれー? キャロラインちゃんに寝てて良いって言わなかったの?」
「言いましたよ、シオン様」
 部屋の鍵を開けながら答える。そして部屋の扉を開けると、シオンを先に通し、そのあとにソフィアを招き入れ、最後にレオナルドが入った。
「ローブ姿だけど、どうしたの? あ、洋服はクリーニングに出したの?」
「はい。明日も着ないと行けないので、クリーニングに出させていただきました」
「それよりもレオナルドさん、少しいいですか? シオン様はシャワーをされるなり、お休みになられるなりしていてください」
 と、レオナルドだけをトレーニングルームへ連れて行った。
「今、何時かおわかりですか? どういうお心積もりで任務にあたるのですか? だいたいシオン様は未成年ですよね?」
 ソフィアは、小声でレオナルドを問いただす。シオンには言えない事をレオナルドにぶつけているのだ。
「たしかにクラブには行きましたが、シオン様も私もお酒は飲んでいません。情報収集に行っていたのです」
「クラブで女性と談笑しながら情報収集? どうでしょうね!」
 ソフィアの怒りはとまらない。
「とりあえず、ミーティングは明日の朝にしませんか? 今日はもう遅いですし」
「遅くなったのは誰のせいでしょうね!」
「すみません、私たちのせいです」
 素直に謝るレオナルド姿勢に、ソフィアも仕方なく「今後は気をつけてくださいね!」の一言で場をおさめた。
「では、明日は五時に起きてくださいね! ミーティングいたしますので!」
 トレーニングルームから出たソフィアは、一応、という形でシオンに、
「おつかれさまでした」
 と挨拶をしたが、バンッと怒りをぶつけるように部屋の扉をしめた。
 リラックスルームにあるソファに寝転んでうとうとしていたシオンが、大きな音に驚いて体を起こした。
「え、今のなに? ソフィアちゃんご機嫌ナナメなの? ちゃんと最高級のケータリング頼んだんだよね?」
 シオンが不思議がる。
 いやいや、初めて会った時からずーっとシオン様の言動にご機嫌ナナメでしたよ!
とレオナルドは言いたかったが飲み込んだ。