「とにかく、無事出発する事ができて良かったですね! シオン様、ソフィアさん」
「キャロラインちゃんのセクシーさが際だっていてイイネ! その服最高! やっぱり俺天才だ!」
「……」
 レオナルドは車のハンドルを握りながら、明るく振舞った。
 だがシオンは、助手席のソフィアにはそっぽを向かれ、後部座席のど真ん中を陣取って「キャロラインちゃんに無視されちゃったよ。恥ずかしがり屋さんなのかな!」などと笑っているが、レオナルドにミラー越しで睨み返される。
「お二人とも、これから行動を共にするのですから、仲良くしましょうね!」
 微妙な雰囲気の車内を明るくしようと、レオナルドは二人に話しかけるが、シオンはあいかわらずソフィアの洋服の出来映えに心酔している。
 途中からは車窓から初めて見るの景色に夢中になってみたりと、自分がソフィアを不機嫌にさせたという事に全く気づいていない。
 無言の状態が続き、まさか反省でもしているのかとレオナルドはミラー越しにシオンを見ると、シオンはスケッチブックになにかを描いていた。
「シオン様、なにをされているのですか?」
 レオナルドの問いかけに、シオンは「うーん。仕事かな」と答えた。
「作戦でも練っていらっしゃるのですか? わたくしにも見せてください」
 ソフィアも後部座席に振り返ったが、レオナルドがとめた。
「見ない方がいいですよ」
 と。
 それでも、紙をなぞる鉛筆の音はとまらない。
 気になったソフィアは、
「シオン様、見せてください」
 と、懇願した。
「うん、いいよー。まだ途中のもあるけど」
 シオンはパタンと閉じたスケッチブックをソフィアに手渡した。
 一ページ目を開くと、そこには洋服のデザイン画が描かれていた。
「え?」と思いながらページをめくっていく。そのたびに違うデザインの洋服のデッサンがあるだけだった。
 ワンピースや女性用のスーツ、ウエディングドレス。
 そのほかにも今、ソフィアが着ているような個性的なデザイン画もあった。
 どれも素敵で、出来上がったらどうなるのだろうとソフィアは思ったが、今は任務中。
「シオン様、おそれながら今は任務中でございます。こういう趣味的な事はやめて任務に集中願います!」
 スケッチブックをパタンと閉じてシオンに突き返した。