そうして私は、色々なものを飲み込んで今、みいらさんと仲良くしている。みいらさんの小説も読むことには読むし、感想も言う。でも、ちっとも心が躍らない。評価云々のしがらみもあるけれど、ひらがなを多用した読みにくい文章や、原作キャラの行動に反する心理描写、流行りに乗っただけのパロディ……と私がどれも嫌厭しているものばかりが、みいらさんの小説にはちりばめられていた。
『みいらさんって今度のイベント参加するんですか?』
ドライヤーで髪を乾かしつつ、片手でちょいと画面をタップしてDMの画面に文字を入力する。ゴールデンウィークに開催されるリアイベで、半年ぶりにオフ本出すとか言ってたような。私は今回は見送りで、お客さんとして遊びに行こうかと思っていたところだった。リプはすぐに返ってくる。
『はい!締め切りギリギリまでフォロワーさんと頑張って、なんとか出せそうです』
「みいらさんまたギリギリなんだ。ていうか、みんな好きだよねそーいうの……」
ついでにみいらさん周りのフォロワーさんとやらを見れば、原稿作業通話をしてみんなで完成させることが出来た、と何やら昨日の夜盛り上がっていたようだ。そこで思わず鼻で笑ってしまう。
「いやいや、締め切りに間に合うように逆算して早めにやっとけばそんな追い込まれないでちゃんとやれるでしょ」
私の独り言に反応するように、みいらさんが返事の続きを送ってきた。ドライヤーで煽られた髪の毛から水滴が飛び、それを服で拭って画面を見る。
『本出すの久しぶりで緊張したんですけど、みんなでやり遂げられると楽しいですね!』
これも、才能だ。私にはとても真似出来ない。