僕は師匠に書いてもらった符を取り出し、迫り来る化け物に向けて投げつけた。
 符が化け物の肩に貼り付くと爆発した。
 辺りに不気味な緑色の血が飛び散る。

月花(げっか)の名の下に枯れ果てるがいい……」

 僕は指を宙に絵を描くように動かし、術を発動させた。

月花陣(げっかじん)

 化け物の周りに円陣が引かれ、宙に浮ぶ。
 その円陣の中にはきれいな桃色の花が描かれている。
 その花の名は月花……。
 それを見たものは、美しい花の魔力によって呪われ、死に至るという。

「月花はその美しい外見とは裏腹に恐ろしい力を持っている……お前も、その美しい花に見とれて死ぬがいい」
 人差し指を一直線に振り下ろす。

「陰!」
 化け物は一瞬にして灰と化した。

 僕は背後から邪気を感じ、振り返った。
 森の奥からはまだ化け物達の邪気が感じられる。
 先日、降った雨で土は泥濘となっている。
 化け物達にとって好都合でもあり、住みやすい場所なのだろう。

 僕は怯むことなく、前へと進み始めた。