私は傷ついたハークのもとへと駆け寄った。
「ハークさん、しっかりして!」
彼はうめきながらも、笑顔で私に言った。
「そうか、真帆。お前はあのタイガの子供だったのか」
私もにっこり笑って答えた。
「はい、そうみたいです」
だが、ハークにはまだやるべきことがあった。
そうだ。〝悪魔の蓄音機〟を破壊せねばならない。
「真帆、頼みがある」
ハークが獣の目に変わった。
「〝悪魔の蓄音機〟を破壊してきてほしい」
「えっ? 私が?」
「そうだ、お前の父、タイガの力を持ってすれば魔王の力など及ばぬわい」
「む、無理ですよ!」
ハークは鼻で笑う。
「真帆、お前の背中をよく見てみろ」
「え?」
ふと後ろに首をひねると、背中に真っ白な翼が生えていた。
「これって、私のお父さんの力なんですか?」
「うむ、そうじゃろうな」
「じゃあ私、魔王を倒しにいってきます!」
そういって、私はにっこりとハークに笑顔を見せた。
「頼むぞ」
「はい!」
私は翼を大きく広げて飛びたった。
さすが、お父さんの翼、ものすごいスピード。
そのせいか、肌寒かった。
そして、とうとう魔王の城に着くと、螺旋階段をぐるぐる飛びながら昇っていく。。
最上階につくと私はびっくりして、口を大きくあけた。
「先輩…?」
そこには真っ黒な鎧を着た先輩がいた。
そして、先輩は怖い顔をしたまま、全身真っ黒なスーツを着た男の人と睨みあっていた。
隣りには、大きな紫色の怪物が経っていた。
その人は鬼のような怖い顔で先輩に叫ぶと、右手をまっすぐ構え、何か術のような言葉を唱える。
すると手先から紫色の大きなボールが出現した。
どんどん大きくなっていく。
私は瞬時に危険を感じた。
あれが先輩に当たったら死んじゃう。
「やめてぇ!」
咄嗟に先輩の前に割り込んで、仁王立ちした。
すると、ぼこっと私の胸に大きな穴があく。
私は口から真っ赤な血を吐きだして、倒れた。
「真帆ぉ!」
薄れていく意識のなか、先輩が駆け寄る足音が耳に響く。
「なんで、なんで、お前がここにいるんだ!」
私は気を失いながらも答えた。
「やっと…先輩に出会えた」
先輩はずっと子供のように泣きじゃくっていた。
それでも私は嬉しかった。