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 彼とやりとりをするのは、いつも写真が投稿されてから。

 だから、いつでも連絡できるというわけではない。


 アカウントを開いてメッセージを自分から送れば連絡は取れる。でも、用もないのに連絡をするのは強引すぎるから、と勇気のない私はなかなか行動に移せなかった。


「あ〜……早く話したいのに……」


 お昼休み、お弁当を食べ終えた私は、ひとりで教室にいるは目立つからと、いつも図書室で時間を潰していた。


 机にうなだれて、スマホを見つめた。

 一切、音を鳴らさない。

 何も鳴らなかったら、ただの四角い電子機器としてそこに存在しているだけ。


 私と彼を繋ぐものは、この中にしかない。

 だから、現実で出会うことなど不可能で。


「あら、三好さん? ぼーっとしてどうかしたの」


 所用で帰って来た先生が、私に気づいて声をかける。


 私は、むくりと頭を上げて、


「いえっ、ちょっと暑かったので……頭がぼーっと……」


 笑って誤魔化すと、「あらそう?」とカウンターへ向かうと、ピッと音がする。


「今、冷房入れるから、これで少しはマシになるかもよ」


 私の嘘を先生は気にかけてくれた。


 なんだか申し訳なくなって、身体を起き上がらせる。


「先生いますか?」


 突然、男の子の声がドアの向こう側から現れて、びくっと肩が上がる。


「あら、山田くん。どうしたの?」

「この前、僕が読みたいって言ってた本を取り置きしてくれるってお願いしたんですけど」


 ちらっと顔を確認するも、見覚えのない顔。

 それもそのはず、この学校はマンモス校だからひと学年八クラスあって、おまけにコースも三つほどあるから、図書室ですれ違ったって全然分からない。


「え? …ああっ、あれね! もちろん取り置きしてるわよ! ちょっと待っててね」


 カウンターの奥に入る先生と、その前で立ち止まる男の子。


 あたりをキョロキョロするから、私は慌てて顔を背けた。


「山田くん、これよ」

「ありがとうございます」


 背中越しに、先生と山田くんという男の子がしゃべる声が聞こえる。

 すごく声は落ち着いていて、雰囲気も穏やかそう。