それからの毎日は、彼のアカウントを見ることが日課になった。
投稿する時間は日によってバラバラで。
その日の景色を、その一瞬の時間を、写真に切り取っているから、まるで同じ時間を共有しているみたいな気持ちになって彼の写真を見ていると、心が穏やかになれた。
毎日綺麗な写真をアップするから、それに私が"いいね"を送る。
写真を見るたびに、彼の日常を覗いているみたいで、毎日毎日SNSを覗くのが楽しくなった。
同い年ってことと男の子ってことは、先生から聞いているけど。
アカウント名がRitukiだから、〝りつきくん〟なのかなって勝手に思ってる。
顔も声も分からないけど、写真が好きなことと彼が穏やかで優しい人間だというはやりとりをする上で知ったこと。
それでも日に日に彼に対する思いが変化していくことに気がついた。
ーー私、彼のことが気になっている。
現実世界では、内気気味で相手に自分の気持ちを伝えることが下手で友達だってひとりもいない私が。
仮想空間ではそんなことを全部隠して違う人間に成り代わる。
指先ひとつで自分の思いを伝えられる便利な道具ーースマホ。
私がしゃべる必要はない。
だから、こうして自分とは違う人間として生きることができる。
けれど、もしも彼がほんとの私を見つけてしまったらこの関係はどうなってしまうんだろう。
どれだけ自分を偽ろうと所詮は〝作り物〟だ。
ーー私は、彼に嘘をついている。
それが少しだけ、罪悪感で。
申し訳ないと思っているのに、もう少しもう少しとこの関係を続けたくなる。
今、何をしてるのかな。
一番に思うのは、彼のことだった。
ーーピコンっ。
更新のお知らせがスマホに知らされる。
その中の彼が撮った写真を見て、
「……わっ、素敵」
自然と頬が緩み、指先は"いいね"を押していた。
そして、自分に言い聞かせる。
ーーもう少しだけ彼のそばにいさせてください、と。