「あーあ……」
そんな自分が嫌になり、締め切られた窓を開けて空気を取り込んだ。
むわっと、思わず顔をしかめてしまうほど生ぬるい風が、べったりと顔を撫でて過ぎ去る。
全然気持ちよくない……!
慌てて窓を閉めようと思ったら、目の前に広がる光景に動きが止まる。
空に、一直線の真っ白な飛行機曇が綺麗にくっきりとあとをつけていた。
「……うわー、すごい」
思わず、ぽつりと声を漏らす。
それと同時に、りつきくんを思い出す。
この光景を今もどこかで見てるのかな。
──あっ、そういえば私、まだ返信してない!
なんて返せばいいのかな。こういうときどうするべき? みんなはなんて返すのかな。親しげに? ……いやでも、馴れ馴れしいって思われちゃうし。
【こちらこそフォローありがとうございます。すごくびっくりしたけど、すごく嬉しかったです!】
これで大丈夫かな?
不安になりながら、指先に願いを込めてボタンをタップする。
送信して、1分も経たないうちに、返信が来るから、どきどきと鼓動が全力疾走。
【すごーく喜んでもらえたみたいでよかった。】
え、すごーく?
自分の文を読み返すと、〝すごく〟を二度使っていることに気がついて、途端に恥ずかしくなる。
【それと今、空見てる? すごく綺麗な飛行機雲出てるよね】
さらにもう一通届いた。
そのメッセージを読んで。
「えっ、うそ……」
思わず、ひとりで歓喜する。
私と同じ景色を見てるんだ。
【私も今、教室にいて、すごく綺麗で見入ってました!】
今どこで見てるのかな。
どんな気持ちで見てるかな。
【この空の景色をどこかでお互い見ているってなんかすごく不思議な気持ちになるよね。でも、同じ時間を共有できてるみたいで嬉しいな】
同じ時間を共有……。
そんなこと今まで誰にも言われたことなかったから。
それがすごく嬉しくて。
【私も、すごく嬉しい。】
ーーそう送らずにはいられなくて。
同じ目線で、同じ場所で、この感動を共有できたら、どんなに素晴らしいことだろう──。