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朝、いつもより早起きをした私は、誰もいない教室でスマホの中の小さな世界へとダイブしていた。
すると、すでに今日の日付けで写真が投稿されていた。
【綺麗な朝焼けをおすそわけ】
そんなコメントとともに、紫がかった夜と遠くから差し込む日差しのオレンジ色が絶妙なグラデーションを描いていた。
「うわー、綺麗……」
朝焼けって聞いても今までだったらこんなに感動することなんてなかったけれど、朝焼けってこんなに綺麗なの?
これ、何時に起きたら見られるんだろう?
ちゃんとこの目で見てみたい……!
景色なんて全然興味がなかったのに、あっという間に写真の世界にのめり込んでしまう。
もっといろんな景色を見てみたい。
もっとこの人に近づいてみたい。
どうしよう、私……
──この人のこともっと知りたい。
名前も顔も分からない男の子のことが気になってたまらなくなり。
勇気を出してみることに決めた。
【素敵な写真に惹かれました。勝手ながらフォローさせていただきました。よろしくお願いします】
が、彼に送るメッセージを何度も何度もおかしくないか確認する。
「うん、大丈夫。でも……緊張する」
悩んでばかりで時間だけが過ぎる。
このままじゃらちが開かないし……ええいっ、もうどうにでもなれ!
メッセージを送ったあと、彼のSNSの一番上にある【フォロー】ボタンを押した。
迷った末、指先ひとつに願いを込めた。
「……お、押しちゃった」
いきなりメッセージ送って大丈夫だったかな。
引かれたりしないかな。
でも、ちゃんと届いてほしいな。
スマホをぎゅっと握りしめて、願いを込める。
現実世界では、内気気味で相手に自分の気持ちを伝えることが苦手で自分から行動に出られないのに。
勝手に動いた心は、一体何なんだろう。