「ちょ、っと待って、来ないで……! ストップ……!」
見えない彼に怯えて、過剰反応する私は、
「わ、私……人としゃべるのあまり得意じゃなくて、直接会ってしゃべるってなると、なに……話していいか分からなくて」
自分でもなに言ってるんだろうって、分からなくなって、「えっとだから……」言葉に詰まらせていると、スマホに通知が来て。
【うん、分かった。そっちには行かないから】
山田くんが私に気をつかってくれた。
なんだかそれが申し訳なく思いながらも、どこかでホッと安堵して。
「あ、あのね、そこから聞いててほしい……」
なんて自分勝手なことを言っているんだろう。
人としてどうかしている。
けれど、今私ができる最大限の勇気を振り絞らないといけない。
「SNSでは、すごくしゃべるみたいな人に…思われたかもしれないけど、ほんとは全然そんなことなくて……普段の私は、人としゃべることが下手で友達だっていなくて、いつもひとりで……」
なにからしゃべろうなんて考えていなかったせいで、言葉は全然まとまらなくて。
「クラスメイトに嫌なこと、頼まれても断る勇気もなくて、そんなことが何度も何度もあって……変わることができない自分が情けなくて、嫌で……」
ぐるぐるとずっと同じことばかりを考えている気がする。
「でも……でもね……」
作り物の私じゃない、〝本物の私〟を知ってほしいから。
ここから私、逃げたくないから。
「山田くんと出会って、山田くんが撮った写真を見てすごく心が動いたの……綺麗だなって、素敵だなって。こんなに、綺麗な写真を撮る人はどんな人なんだろうって気になって」
はじまりは、図書室の先生からもらった、たった一枚の写真だった。
「気がつけば自分から声をかけて、毎日毎日……山田くんが投稿する写真を見るのが日課になっていて、しゃべることが苦手だった私だけど……SNSではすごく会話が続いて、それが楽しくて、もっとこんな時間が続けばいいなって思って……」
ーーもっと山田くんと同じ時間を共有したいって、思って。
「気がつけば山田くんのことを探してる自分がいたの」
ーーもっと山田くんに近づきたい。
「こんな自分はじめてで……だからね、」
言葉を紡ごうと思ったら、持っていたスマホが振動して。
【ごめん、俺、山田じゃない】
画面に表示されていた言葉に、「えっ……」私は驚きを隠せなかった。
だって、今まで山田くんは〝僕〟だったのに突然〝俺〟に変わっていて。