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それからの毎日は、雨が続いた。
そのせいで少しだけ気持ちが沈む。
「うー……」
お昼休み、図書室で暇を持て余していた。
今は、ひとりだ。
そのわけは、数分前にやって来た私に先生が、
『ごめん、三好さん。少し職員室に用事あるから留守番お願いしてもいい?』
と頼まれたため、ここを動けないでいた。
カウンターに座るのなんて、なにげに初めてで少しだけどきどきする。
山田くんが来ちゃったらどうしようって。
さっきからそんなことばかりをぐるぐると頭の中をめぐっていた。
「あ〜……もっと話したいのに」
カウンターでスマホを見つめる。
SNSの投稿は、昨日の18時が最後だ。
今日は、まだ。
だから、待っていれば必ず投稿はあるはずなのに。
「まだかなぁ……」
足をバタバタさせて、待てない自分がいた。
待てないなら自分から連絡すればいいのに、迷惑だったらどうしようって真っ先に考えてしまって、指先で文字を打つことができない。
ーー弱虫な私。
SNSでは、話しかけることができた。
現実世界では、きっと無理。
目を合わせることだって、噛まずにしゃべることだって、絶対に不可能。
ほんとの私を知ったら、山田くんはなんて思うかな。
ーーパタパタパタッ
不意に、いくつかの足音がこちらへ近づいて来る音がする。
もしかして本を返却する生徒?
だとしたら私、やり方とか分からないし。
先生にはただ留守番お願いねとしか言われてないから。
「あれ……先生いない」
ガラッとドアが開けられる直前、私はカウンターの下へ隠れてしまった。
「これ、どうしよう」
聞き覚えのある声が耳に入り込む。
「ついて来いって言ったくせに用事済ませられないじゃん」
「うーん、先生今留守みたいだね。ごめん佐々木」
私の鼓動の音は尋常じゃないくらいうるさくて、カウンターの下でぎゅっと縮こまる。
「じゃー、ジュース山田の奢りな」
「えー? うーん、仕方ないなぁ」
パタパタと、足音が遠ざかる。
「えっ……」
ちょっと待って、やっぱり今の山田くん?
うそ、ほんとに? じゃあ私、隠れない方がよかったんじゃ……いやでも、会ってもなに話すか決まってないし、そもそも私のことなんて気づいてもらえないし。いきなり話しかけたら警戒されちゃうし。
「うあー……」
でも、ちょっと残念。
せっかくのチャンスが……と、キャスター付きの椅子に力なくへたり込む。
「自分のバカバカバカ……!」
しばらくぐるぐると椅子で回っていたら、目が回ってしまう。
そんなタイミング悪いときに、先生が帰って来て「どうしたの」と笑われるけど、なんでもないと誤魔化したのだった。