*

 ーー夜空の輝く星々の写真。


【きみはひとりじゃないよ。仲間がいる】


 ーー道端の小さな花。


【一生懸命、強く生きているきみへ】


 ーー夕焼けに背を向けて、地面に描かれる影。


【がんばりすぎなくていいんだよ】


 なにげない短いコメントが、私の心に深く染み込んだ。


「今、山田くんどこにいるんだろう……」


 最新の投稿は日によって違うから、この前のようなチャンスはもう訪れない。


 ーー会いたい。

 会って、直接話をしてみたい。

 今までの私では考えられないくらいの感情だった。


 最新の投稿がなければ、自分がしてみればいいじゃん。そうしたらもしかしたら……

 そんな小さな可能性を胸に。


 ーーカシャっ

 図書室から見える灰色の空。窓には雨粒がついていた。


 それを一コマに収めて、


【どこへも行けない勇気のない私】


 そんなコメントと共に。


「……なに、どこへも行けないって。まるで私、ポエムでも読んでるみたい」


 下手くそな写真に、思わず笑った。

 写真を上手に撮るのって意外と難しいんだ。


 ーーピコンッ


「えっ、うそ……?」


 まさかまさかのコメントに、思わず二度見をしてしまう。

 何かの間違いとかじゃなくて、ほんとに? ほんとに私に話しかけてくれてる?


【分厚い雲からとうとう雨、降ってきたね。窓開けなくて正解】


 私のアカウントをフォローしてくれているのは、田中くんしかいなくて。

 たまたま偶然見てくれただけにしても、普通ならスルーしちゃうところなのに……


「うそ〜……嬉しすぎる……っ」


 足をジタバタさせて歓喜する。

 〝窓開けなくて正解〟って……

 もしかしてここがどこだか分かってる?


 ーーなんて、そんなはずないよね。

 山田くんが私を気にしてくれているなんて、きっとそんなことあるはずない。


 ***


 その日の放課後。

 お昼休みに降っていた雨は、やんだ。

 朝、持ってきた傘を片手に昇降口を出ると、スカートに入れていたスマホが振動する。

 立ち止まり、人の邪魔にならないように昇降口を出たドア付近でスマホを見る。