【田中くんと話していると、すごく心が穏やかになる。いつも幸せもらえる。こんなにも明日が待ち遠しいって思ったのは、はじめてかもしれない】
私の心が勝手に先走り、指先が自然と動く。
【幸せをお裾分けできてるならよかった】
ーーひとつ、そんなコメントが届き。
【でも、はじめてってことは、今までは楽しいって思えなかったってこと?】
ーーふたつ、はじめて私のプライベートに質問が送られる。
これは、予想していなかった出来事に。
「えっ、ど、どうしよう……」
全然言葉を考えていなかった。
いつかは聞かれてしまうかもしれないと思っていたけど、こうも早いとは。
【今のは言葉のあや! 今までも待ち遠しいって思ってたよ!】
ひとつ、言い訳をしたあと。
【それより田中くん、今日廊下でプリント落としませんでしたか?】
ふたつ、話を逸らすことにした。
どうしよう、山田くん。変に思ったかな?
絶対、思ったよね。
【プリント……ていうか、僕名前教えたっけ?】
あ、いや、ちょっと待って……私、まだこのアカウントで彼の名前を呼んだことない。
だって、山田くんかも曖昧だったし……
【ごめんなさい! 一度、図書室で山田くんのこと見かけたことがあって……話し方とか穏やかな雰囲気とか、もしかしたらこのアカウントが山田くんなのかなぁって思ってたらつい……】
すると、今回はすぐに返信が返ってこないから、不快にさせてしまったのかなと不安になっていると。
五分ほどして、返事が返ってくる。
【あー、バレちゃったか。でも、みんなにはこのアカウントが僕だって秘密にしてほしいな】
よ、よかった。返事返ってきた。
それに一応、山田くんで合ってたんだ。
【もちろん、ちゃんと秘密にするよ!】
あまりにも山田くんとのおしゃべりが楽しすぎて、プリントを拾ったと言い出すのを忘れてしまったんだ。