「先生、これいじめじゃないですか?」
「ふーん、なるほどね。」
藤子ちゃんと同じまっすぐの眉毛をした佐竹先生はコーヒーを片手に椅子をくるりとさせて話を聞いている。
「で? 佐藤さんはどうして欲しいの?」
「どうして欲しいって、その悪口野郎をとっちめて欲しいに決まってるじゃん!」
佐竹先生の問いかけに藤子ちゃんが割って答えてしまう。ほっぺを膨らませて口をとがらせてブーブー言う姿はとても高校生には見えない。
「だから、その子どもっぽいしゃべり方はやめなさい。家じゃないんだぞ。」
そう。佐竹先生は藤子ちゃんのお父さんなのだ。普段は普通の高校生なのに佐竹先生の前では子どもっぽいお嬢さんになるのがどうも慣れない。
「どうだい、佐藤さん。」
「え、その…。」
私の隣でワーワーわめいている藤子ちゃんを置いて、佐竹先生は私の方をまっすぐ見つめている。
「『どうだい』って言われても困るよね。いいかい、『いじめ』というのは被害者の訴えがあって初めて『いじめ』になるんだ。藤子、いや佐竹さんのいう通りのことがあって、本人が『嫌な思いをしている』『困っている』という訴えがあれば、それは『いじめ』として対応しないといけないけれど、周りが騒いでいるだけでは『いじめ』とはならないんだよね。」
佐竹先生はいたって冷静に、コーヒー片手に数学の質問をした時と同じテンションで語りかけてくれる。「これはヤバいぞ」という雰囲気を出さないのがむしろ私を冷静にさせる。
「これ、ヤバいですよね。」
相変わらずワーワーと言い合いをしている2人を置いて、佐竹先生にスマホの画面を見せた。
「うん。ヤバいね。これで嫌な思いをしていたら、それはいじめだ。」
佐竹先生の机に広がっている数学の問題を見つめながら、先生の言葉を反復する。そして自分に問いかける。この気持ちは「嫌」というものなのだろうか。
「学校は勉強するところ。こういうことを書かれて、今の時代は『言われて』と言うのかな、嫌な思いをしたり困っていたり、それで勉強が手につかないのは困る。そう言う生徒には手を貸してやりたいのが『先生』っていうものだよ。もう一回聞くね、どうだい?」
「私、困っています。」
やっと答えが出せた。
「この画面を見た時から、自分じゃないって思おうとしても、やっぱり自分で。そんな覚えはないけど、私なんか悪いことしたのかなって。この人が言うように○ねばいいのかなとか、思ったり。勉強のことなんか考えられてないです。」
こんなに想いあふれていたとは。早口であふれる思いに言い合いをしていた藤子ちゃんと男子も静かに聞き入ってしまっていた。
「そうだったんだね。よくここまで頑張ったね。もう頑張らなくていいさ。」
佐竹先生はそう言って慰めてくれる。藤子ちゃんは私の肩を撫でてくれる。男子も見ているだけだけど、そこにはさっきまでの殺気はない。
「よし、じゃあここからは担任の先生の出番だな。藤子、担任は誰だっけ?」
「え? 担任なの? 赤…、米澤赤福先生…。」
「そうか、赤福ちゃんね。赤福ちゃん!」
藤子ちゃんはなんとか佐竹先生に対応してもらえるようダダをこねるが、佐竹先生はどうしても米澤赤福に引き継ぐことを譲らない。
「藤子、こう言うのは担任がやらないと。あとあと色々うるさいからね。何かあったら父さんも相談に乗るから。」
「相談に乗るって言ったって、米澤赤福先生だよ。お父さんもわかるでしょ!」
藤子ちゃんと佐竹先生が親子の会話をしている間に米澤赤福がやってきた。
「はい佐竹先生。御用でしょうか。」
「ちょっとこの子たち、いじめを訴えているんだけど、先生のクラスだよね? 話聞いてもらえない?」
「はい、かしこまりました。」
米澤赤福は無表情にこたえて、私たちの方を見て「ニッ」と口角をあげる。他の先生方への外面は作り上げたようにうまい。そして自分のクラスの生徒たちには不気味な笑いしか見せない。米澤赤福とはそう言うやつだ。
「ふーん、なるほどね。」
藤子ちゃんと同じまっすぐの眉毛をした佐竹先生はコーヒーを片手に椅子をくるりとさせて話を聞いている。
「で? 佐藤さんはどうして欲しいの?」
「どうして欲しいって、その悪口野郎をとっちめて欲しいに決まってるじゃん!」
佐竹先生の問いかけに藤子ちゃんが割って答えてしまう。ほっぺを膨らませて口をとがらせてブーブー言う姿はとても高校生には見えない。
「だから、その子どもっぽいしゃべり方はやめなさい。家じゃないんだぞ。」
そう。佐竹先生は藤子ちゃんのお父さんなのだ。普段は普通の高校生なのに佐竹先生の前では子どもっぽいお嬢さんになるのがどうも慣れない。
「どうだい、佐藤さん。」
「え、その…。」
私の隣でワーワーわめいている藤子ちゃんを置いて、佐竹先生は私の方をまっすぐ見つめている。
「『どうだい』って言われても困るよね。いいかい、『いじめ』というのは被害者の訴えがあって初めて『いじめ』になるんだ。藤子、いや佐竹さんのいう通りのことがあって、本人が『嫌な思いをしている』『困っている』という訴えがあれば、それは『いじめ』として対応しないといけないけれど、周りが騒いでいるだけでは『いじめ』とはならないんだよね。」
佐竹先生はいたって冷静に、コーヒー片手に数学の質問をした時と同じテンションで語りかけてくれる。「これはヤバいぞ」という雰囲気を出さないのがむしろ私を冷静にさせる。
「これ、ヤバいですよね。」
相変わらずワーワーと言い合いをしている2人を置いて、佐竹先生にスマホの画面を見せた。
「うん。ヤバいね。これで嫌な思いをしていたら、それはいじめだ。」
佐竹先生の机に広がっている数学の問題を見つめながら、先生の言葉を反復する。そして自分に問いかける。この気持ちは「嫌」というものなのだろうか。
「学校は勉強するところ。こういうことを書かれて、今の時代は『言われて』と言うのかな、嫌な思いをしたり困っていたり、それで勉強が手につかないのは困る。そう言う生徒には手を貸してやりたいのが『先生』っていうものだよ。もう一回聞くね、どうだい?」
「私、困っています。」
やっと答えが出せた。
「この画面を見た時から、自分じゃないって思おうとしても、やっぱり自分で。そんな覚えはないけど、私なんか悪いことしたのかなって。この人が言うように○ねばいいのかなとか、思ったり。勉強のことなんか考えられてないです。」
こんなに想いあふれていたとは。早口であふれる思いに言い合いをしていた藤子ちゃんと男子も静かに聞き入ってしまっていた。
「そうだったんだね。よくここまで頑張ったね。もう頑張らなくていいさ。」
佐竹先生はそう言って慰めてくれる。藤子ちゃんは私の肩を撫でてくれる。男子も見ているだけだけど、そこにはさっきまでの殺気はない。
「よし、じゃあここからは担任の先生の出番だな。藤子、担任は誰だっけ?」
「え? 担任なの? 赤…、米澤赤福先生…。」
「そうか、赤福ちゃんね。赤福ちゃん!」
藤子ちゃんはなんとか佐竹先生に対応してもらえるようダダをこねるが、佐竹先生はどうしても米澤赤福に引き継ぐことを譲らない。
「藤子、こう言うのは担任がやらないと。あとあと色々うるさいからね。何かあったら父さんも相談に乗るから。」
「相談に乗るって言ったって、米澤赤福先生だよ。お父さんもわかるでしょ!」
藤子ちゃんと佐竹先生が親子の会話をしている間に米澤赤福がやってきた。
「はい佐竹先生。御用でしょうか。」
「ちょっとこの子たち、いじめを訴えているんだけど、先生のクラスだよね? 話聞いてもらえない?」
「はい、かしこまりました。」
米澤赤福は無表情にこたえて、私たちの方を見て「ニッ」と口角をあげる。他の先生方への外面は作り上げたようにうまい。そして自分のクラスの生徒たちには不気味な笑いしか見せない。米澤赤福とはそう言うやつだ。



