「ただいま。」
家に帰る。
いつものように妹が足元に擦り寄ってくる。
いつものように弟はリビングにおもちゃを散らかしている。
お母さんにお土産のタルトを手渡し、タルトをしまうその目を盗んで弟のおもちゃを片付ける。
何もしていないかのように2階へあがり、自分の部屋の戸を閉める。
「さてと。」
東京へ出かけた私服のままベッドに横になろうか。左手はスマホを握っていて、ベッドに腰をおろすのと同時に顔認証で画面を開く。
最初に開くのはもちろん、もう日課になっているSNS。
◯ね。
ブス。
く◯い。
◯ろす。
生きる価値なし。
「え?」
私の顔写真、目元に黒のラインは入っているけど確かに私の顔写真に、そんな罵詈雑言が添えられている。思わずスマホをベッドに放り投げて物理的距離を取った。
あおたんから「有名になったらアンチも増える」とは聞いていたけど、こんな命の危機が差し迫って来るとは。深呼吸をして、飛び出しそうな心臓を胸に戻して、意を決してスマホに立ち向かう。
「ん? これ、リア垢?」
確認すると例の罵詈雑言と顔写真は、中学生の頃から使っているプライベートアカウントに届いたメッセージだった。
「え、え、え!?」
状況を理解するのにややしばらく時間がかかった。
SNSに載っている言葉たちは、私「佐藤さおり」に向けて発せらたもので、これが一応芸能人の「ベビーピンク」に向けたものならアンチコメント・誹謗中傷、ということになるけど、ただの高校生に発せられたものなら…。
「うーん、悪口?」
悪口と片付けるにはタチが悪すぎる。真正面から受け止めたらこのまま2階の窓から飛び降りたって不思議ではない。部屋の窓を開けて地面を覗き込む。まずい、私の部屋の下はゴミ捨て場になっている。そんなところに落ちたくはない。
そう考えると平静を取り戻し、冷静にスマホの画面を下に向けてベッドの上にそっと置いた。
「ねえ、お母さん。」
なんとなくお母さんに話さないといけない気がして、リビングへ向かった。
「どうしたの?」
お母さんはいつだって私を受け止めてくれる。私は頼れるお姉ちゃんなのだ。本当に大袈裟ではなく、私のことが自分の命より大切だと思っている。そんなお母さんに、この画面、見せられるわけがない。
「いや、なんでもない。」
なんでもない、なんでもない。何度言い聞かせてもあのスマホの画面が現れてしまう。
「本当に?」
母の勘とは恐ろしい。何か隠していることがお見通しだ。これは何か言わないと、疑念を払拭できない。
「あ、今日のタルト。割引になってたから早めに食べてね。私の分も食べていいから!」
足早にまた2階へ戻ることにした。せっかく食べたかったイチゴタルトだけれど、仕方ない。気分もそうだし、今日の分のベビーピンクの投稿もしないといけない。
自分の部屋に入り、戸を閉める。ベッドの上のスマホを睨み、すぐには手にとれないでいる。
誰だかわからない、匿名の悪口。
いや、悪口と片付けるには度がすぎる内容。
ベビーピンクではなく、一般人、佐藤さおりに向けられた誹謗中傷。
「ん?」
自分に向けられた、と考えるからこんな、スマホを睨むなんてことになるんじゃないだろうか。直接言われたわけじゃない。SNS上の「さお」に向けられた言葉であって、私じゃない。私じゃない。
「そんなスマホの中にしかない言葉に殺されてたまるか!」
そう思えば少しは気が楽になって、やっとスマホを手に取り、ベビーピンクの投稿をすることができた。
◯ね。
ブス。
く◯い。
◯ろす。
生きる価値なし。
ひと通り投稿を終えると、また悪口の画面にぶち当たる。いくら距離を取ろうと思ったって、そう思っている人間がこの世の中にいるというのは、実にキミが悪かった。
家に帰る。
いつものように妹が足元に擦り寄ってくる。
いつものように弟はリビングにおもちゃを散らかしている。
お母さんにお土産のタルトを手渡し、タルトをしまうその目を盗んで弟のおもちゃを片付ける。
何もしていないかのように2階へあがり、自分の部屋の戸を閉める。
「さてと。」
東京へ出かけた私服のままベッドに横になろうか。左手はスマホを握っていて、ベッドに腰をおろすのと同時に顔認証で画面を開く。
最初に開くのはもちろん、もう日課になっているSNS。
◯ね。
ブス。
く◯い。
◯ろす。
生きる価値なし。
「え?」
私の顔写真、目元に黒のラインは入っているけど確かに私の顔写真に、そんな罵詈雑言が添えられている。思わずスマホをベッドに放り投げて物理的距離を取った。
あおたんから「有名になったらアンチも増える」とは聞いていたけど、こんな命の危機が差し迫って来るとは。深呼吸をして、飛び出しそうな心臓を胸に戻して、意を決してスマホに立ち向かう。
「ん? これ、リア垢?」
確認すると例の罵詈雑言と顔写真は、中学生の頃から使っているプライベートアカウントに届いたメッセージだった。
「え、え、え!?」
状況を理解するのにややしばらく時間がかかった。
SNSに載っている言葉たちは、私「佐藤さおり」に向けて発せらたもので、これが一応芸能人の「ベビーピンク」に向けたものならアンチコメント・誹謗中傷、ということになるけど、ただの高校生に発せられたものなら…。
「うーん、悪口?」
悪口と片付けるにはタチが悪すぎる。真正面から受け止めたらこのまま2階の窓から飛び降りたって不思議ではない。部屋の窓を開けて地面を覗き込む。まずい、私の部屋の下はゴミ捨て場になっている。そんなところに落ちたくはない。
そう考えると平静を取り戻し、冷静にスマホの画面を下に向けてベッドの上にそっと置いた。
「ねえ、お母さん。」
なんとなくお母さんに話さないといけない気がして、リビングへ向かった。
「どうしたの?」
お母さんはいつだって私を受け止めてくれる。私は頼れるお姉ちゃんなのだ。本当に大袈裟ではなく、私のことが自分の命より大切だと思っている。そんなお母さんに、この画面、見せられるわけがない。
「いや、なんでもない。」
なんでもない、なんでもない。何度言い聞かせてもあのスマホの画面が現れてしまう。
「本当に?」
母の勘とは恐ろしい。何か隠していることがお見通しだ。これは何か言わないと、疑念を払拭できない。
「あ、今日のタルト。割引になってたから早めに食べてね。私の分も食べていいから!」
足早にまた2階へ戻ることにした。せっかく食べたかったイチゴタルトだけれど、仕方ない。気分もそうだし、今日の分のベビーピンクの投稿もしないといけない。
自分の部屋に入り、戸を閉める。ベッドの上のスマホを睨み、すぐには手にとれないでいる。
誰だかわからない、匿名の悪口。
いや、悪口と片付けるには度がすぎる内容。
ベビーピンクではなく、一般人、佐藤さおりに向けられた誹謗中傷。
「ん?」
自分に向けられた、と考えるからこんな、スマホを睨むなんてことになるんじゃないだろうか。直接言われたわけじゃない。SNS上の「さお」に向けられた言葉であって、私じゃない。私じゃない。
「そんなスマホの中にしかない言葉に殺されてたまるか!」
そう思えば少しは気が楽になって、やっとスマホを手に取り、ベビーピンクの投稿をすることができた。
◯ね。
ブス。
く◯い。
◯ろす。
生きる価値なし。
ひと通り投稿を終えると、また悪口の画面にぶち当たる。いくら距離を取ろうと思ったって、そう思っている人間がこの世の中にいるというのは、実にキミが悪かった。



